経営者よ 気概を持て(Vol.3)

世の中に役立つために、リストラされた中高年を活かした事業を始めたい。

Q 能力や実力がある先輩たちまでリストラされていくことが残念でなりません。一念発起して、リストラされた人たちを活用できるような新しい事業を立ち上げようと準備をしているところです。

何かいいアドバイスがありましたらお願いします。静岡県静岡市Y・Kさん(41歳)

A:人々に救いの手を差しのべたいというあなたのお気持ちは、大変素晴らしいことだと思います。

しかし、あなたがその理想を実現するためには、なによりも、まずご自身の足元をしっかり固めることが先決ではないでしょうか。

いくら素晴らしい理想を掲げても、ご自分の事業が成功していなければ、結局はその人材を抱えられなくなってしまうだけです。

世の中に役立ちたいという思いを実現するためには、なによりもまず、自分自身の基盤を固めることが先決です。順序立てて理想実現に向かっていくことが必要だと言えるでしょう。

ですから、はじめからリストラされた人たちを抱えて事業をスタートさせようとするのではなく、まずは、気落ちしていない運のいい人を集め、運のいい会社なり事業所と取引をすることです。運のいい優れた人を集めることが、会社を立ち上げるときには最も大事なことです。

そのためには、この厳しい状況のなかでも、リストラされずに会社に必要とされる人材、あるいは会社が手放そうとしない人材を、三顧の礼を尽くして来ていただくことです。

これが先決です。

そして、会社が安定して、ある程度の規模と人材が出来、売り上げや利益が安定してきたときに、初めてご自分の理想を実現させるのです。

そうすれば、真の意味で世の中に役立つことができるでしょう。決して焦らずに、六十代、七十代で社会に役立つんだ、というぐらいの長いスパンで考えることです。

楠木正成公が歴史というドラマにデビューしたのは、四十八歳のときでした。それから没するまでの数年間で、数々の素晴らしい偉業を達成したのです。

人は年月と費用と労力をかけて自分の器を大きくしていくと、その器に応じて使命が授かるものです。

楠木正成公はその天の時を得るために、自分を磨きつづけ、研鑽を重ねつづけて、自分の器を作っていったのです。

どれだけ時間がかかろうとも、関係ありません。自分を確立し、自分の器があらゆる面で出来上がってきたときに、初めてそれに相応しい使命と役割がいただけるものです。

例外はあるものの、社会とは原則的にそういうものです。長いスパンで研鑽して作った器というものは、他の誰も一朝一夕にはまねできないだけの、圧倒的な実力が備わっています。

それが備わっていたら、社会が放っておくはずがありません。自分から役に立とうとするのではなく、その志をグッと腹におさめ、社会からその器を必要とされ、そして使っていただくおのれを作るのです。そのとき真の意味で世の中に役立つことができるのです。

未熟なときというのは、とかく矜燥偏急になりがちなものです。素晴らしい理想を掲げて事業をはじめる。

しかし、実際にやってみれば、思うように行かないのがつねです。すると焦り始める。これは、どこかに驕りがあったためなのです。焦って物事をやれば何かに偏り、手順を飛ばして急いでしまう。

急いでやったものというのは、無理がたたったり、あるいは大きなものができなかったり、ゆがんだりしてしまいます。結果はおのずと知れているのです。

本当の叡智を持っている人というのは、焦らずにじっくりと本物の中身を蓄えていって、実践の中から着実にものを進める人のことを言うのです。

なるべく迷惑をかけず、なるべく誰ひとり不幸にさせることなく、目の前のことに没入しながら、次のステップへと向上していく。これが本当の叡智を持っている人が進むべき道です。

あなたが掲げた理想を実現させるために、ぜひともご自分の足元を固めることからお始めください。

ご奮闘をお祈りしております。
(二〇〇二年十月)

専門店化するためのマーケティングの方法をお教えください

Q 建材一般の卸業をしているのですが、生き残りのために、リフォーム用建材の専門店化を図ろうとしています。

今すぐ役に立つマーケティングの方法をお教えください。東京都多摩市 IUさん(43歳)

A:専門店化を図っていきたいというお考えは大いに結構なことだと思います。今、日本経済は、大企業と中小零細企業の二極分解がどんどん進んでいると言われています。

つまり、大会社は大きな資本と優秀な頭脳、またネットワークがあり、シェアを独占して、ますます寡占状態となります。一方、零細企業は小さいなりに繁盛するという、二重構造なのです。そして、その二極分解の度合いはますます増しているのです。

しかし、この二極構造だけかといえばそうではありません。たとえば、流通経済を見てもおわかりのように、この二極の中に実はもう一つ、特殊な分野があるのです。

それは専門店志向のお店です。「そこでしかやっていない」、「特殊なものがそこに行くとたくさん集まっている」という、マーケティングでいうところの専門店化志向なのですが、マーケット・セグメンテーション(市場細分化)であるとも言えます。ニュアンスは少し違いますが、すきま産業とも言えます。

流通経済ではない産業で言うならば、たとえば電気冷蔵庫です。冷蔵庫本体は、大手企業が互いに競争しながら製作していますが、巨大メーカーといえども、冷蔵庫すべての部品を自前でつくっているわけではありません。

自前で開発する必要性と、見込まれる利益を天秤にかけ、うまみがないと判断すれば、その部品は外注に出します。

とくに、製氷皿などのような細かな部品は、ほとんどが外注です。

ですから、製氷皿の製造に関しては世界一といった特許とノウハウをいくつも持ち、それが、ちょっとやそっとでは真似できない技術であれば、十分に優良企業としてやっていけるのです。

専門の特殊分野を小さく区切って、それをどこまでも深く追求していく。

そして、特許とノウハウをいくつも持って、そこにしかできないものをたくさん持っているというような企業は、中規模の企業でも零細企業でも、企業の差別化を大きく打ち出して、しっかり生き残っているわけです。

このように、専門化する志向で奥深くマーケット・セグメンテーションをして、誰も真似できないノウハウをいくつも確立していけば、必ず繁盛します。この方法が二極構造の中で、例外的に大成功して生き残っていく道なのです。

しかし、専門店化志向でいくためには、何度も述べたように、ちょっとやそっとで真似できないという、独自のノウハウと技術を徹底的に掘り下げていかなければなりません。

そうでなければ、成功がおぼつかないばかりか、倒産の憂き目に遭いかねません。小が小なりに発展し、淘汰されずに会社が存続していくためには、やはり、徹底した研究と他を圧する努力が必要なわけです。

さて、その努力の方向性はたくさんありますが、やはり何といっても、生きたマーケットの声を聞いて知らなければなりません。

つまり、何といっても「お客さま第一主義」に徹するということなのです。買ってくださるお客さまを無視した製品はあり得ません。

「どうすればお客さまが喜んでくださるだろうか」、「どうすればお客さまが感激して、またこれを使いたいと思ってくださるのだろうか」、「どのようにすれば、お客さまが納得して使ってくださるだろうか」というように、常にお客さまを第一に考える。そうすると、お客さまが喜び、感動し、納得し、満足するような具体的な知恵や工夫、またユニークなアイデアなどが一つ、また一つと湧いてくるようになります。

それをどんどん実現化していくのです。

これを徹底的に実行している会社やお店は、当然のことながら、雰囲気が生き生きとしてきます。常にお客さまを第一に考えているから、たとえば、こちらが求める前にお客さまや業者さんが、「こうすればもっとよくなりますよ」「こんなものがあれば助かりますよ」、「ここはこうした方がもっと売れますよ」などと、いいヒントや具体的なアイデア、知識、情報をたくさん持ってきてくれるようになります。

また、そういう具体的な方法を教えてくれる人との出会いも、次々とできてきます。心で強く関心を抱けば、機縁が生まれるものです。

しかし、これだけでは「お客さま第一主義」は完成していないのです。こういうアイデアや知識、情報を得ながらも、会社として売り上げや収益が上がりつづけ、財務もしっかりと黒字をつづけていけるための具体的な努力が絶対に必要なのです。

経営者には、会社を潰さずに収益を上げつづけていくという社会的責任があります。

ですから私が講演や著書で何度となく述べている「経営の五原則」を貫き、努力の結果が出るまで、行動の徹底を図っていかなければなりません。

以上、申し上げた努力をめげることなく積み重ね、具体的なアイデアやひらめきといったものが、何百種類、何千種類もあるというのが専門店たる所以であり、ノウハウであります。ぜひ頑張って成功してください。
(二〇〇二年十一月)

オリジナリティ溢れる商品企画をしたいのですが。

Q アパレル業界で商品開発をしているのですが、オリジナリティで勝負するためにはどうしたらいいのでしょうか?東京都港区 U・Sさん(35歳)

A:他にない独自なものを創作する仕事に携わっている方にとって、精神的なプレッシャーというのは相当なものだと思います。オリジナリティに富んだ優れた商品を創らなければいけないと思えば思うほど、それがプレッシャーとなって行き詰まってしまうのです。

とくに、クリエイティブなお仕事を長くつづけていると、今までの知識が邪魔をして、「これも既にある」とか、「あれもどこかがやっているはずだ」とか、「自分で過去に作った作品よりも、もっと優れたものを作らなければ・・・」などと、ますますプレッシャーが増えてしまいます。

私も絵画や書道、作曲などをやっているのですが、オリジナリティとかスタイルとかにこだわってしまうと、「これもダメ、あれもダメ」と行き詰まって、創作意欲が減退し、創作活動そのものがつづかなくなってしまいます。

このような状況を打破するためには、オリジナリティとかスタイルとかには一切こだわらずに、自分がいいなあと思うものを、「これが最高だ!」と思って自由奔放に、そして、わがまま放題に、どんどん形にしていくことがベストな方法です。

そうして、自由に発想して創ったものが、他から「これはオリジナリティがありますね」と評価されるのです。

そもそもオリジナリティというのは、自分がいいなと思うものを百も二百も片っぱしから創作していく中で、「これだ!」というものが自然に滲み出てくるものなのです。

なぜかと言えば、技とは、単なる技術やテクニックではなく、そこに心や魂や個性が宿ったものでなければならないからです。

それが、その人にしかないオリジナリティなのです。商品の企画でも陶芸でも、また絵画や音楽でも、それはすべて同じことが言えると思います。

そこで、商品開発に関してですが、グッチもシャネルもセリーヌも、フェンデイ、エトロ、ルイ・ヴィトンも、最近はどんどん今までのデザイナーを解雇し、若くて斬新な感覚のデザイナーに替えています。

そして、それが功を奏して売り上げが伸び、ブランドイメージやブランド価値が復活している場合が多いのです。ということは、今まで述べたオリジナリティの本質に合ったようなデザイナーを選び、オリジナリティが出せる商品開発をすればいいのです。

問題は、デザイナを選ぶ目です。良いデザイナーかどうかを選ぶ目とは、デザイナー以上にデザインに精通していることが肝心です。

そのためには、多くのいいデザイン作品を見て、また、ライバルを徹底的に研究し、みずから買って、自分で使ってみることです。最終的にいいデザインとは、芸術的に優れたものではなく、消費者が気に入って、買って愛してくれるものだからです。
(二〇〇二年十二月)

新店舗オープン時の広告戦略をお教えください。

Q クリーニング店舗をチェーン展開しているのですが、新店舗オープンで苦慮しています。

数年前まではきれいな店舗をつくり、チラシで割引セールを打てば必ず売り上げが上がったのですが、今はこれが通用しません。

できれば安売りをせずに売り上げを伸ばしたいのですが、どうしたらいいのでしょうか。東京都台東区U・Hさん(45歳)

A:過当競争になったときには三つの法則が働きます。まず、品質のいいところが残り、次に価格の安いところが残り、そしてサービスのいいところが残る、つまり、「品質が良く、価格が安くて、サービスがいい」この三拍子揃ったところが生き残り、そうでないところは淘汰されていくのです。

この三拍子揃っているのが企業の実力であり、企業体力なのです。

とくにクリーニング業界のように成熟したマーケットでは、この法則がきっちりと作用するといっていいでしょう。

ですから本来は、この三拍子を揃えても収益が上がるよう、徹底的にコストダウンを図って競争力と収益力を上げていくというのがベストな戦略です。これができれば、どんなライバルを向こうに回しても圧倒的に勝っていけます。

しかし、割引や安売りをしたくないというのであれば、高付加価値化を図って、独自の特色をしっかりと打ち出さなければ勝ち目はありません。

たとえばの話ですが、北海道から深海水を取り寄せ、その水を使ってクリーニングの仕上げをするというのがその店の大きな特色であるならば、それを上手にアピールする必要があります。

さて、広告宣伝の方法ですが、チラシは浅く、広く出すのでは効果はあまり期待できません。

経済学における広告論の中に、「広告の原則」というものがあります。

その中でも、チラシは三回以上出して、四回目ぐらいから少しずつ問い合わせがくる、というのがチラシ広告効果の原則としてあるのです。これは、私も何度となく実験しており、間違いない不滅の法則だと言えます。

だから、チラシは広い地域に一回だけ出すというのではなく、顧客がいるエリアを徹底的に絞りこんで、同じターゲットに五回も六回も七回も固め打ちで出すのが、有効なチラシ戦略なのです。

そうすると、そこに住んでいる人は、「五回も六回もチラシが来たから、ちょっと問い合わせしてみようか」と、問い合わせするようになるわけです。

しかも、チラシを同じ出すのでしたら、社会で成功している人たちが多く住んでいる地域に出すのがいいでしょう。

社会で成功していて、経済的に豊かで、ものの考え方が明るいお客さまがたくさん増えて、自分もその運気をいただき、きっと収入も上がるはずです。

チラシの内容は、同業他社の出しているチラシをつねにチェックして、一番いいなと思う文章やレイアウトをヒントにして、それよりももっと素晴らしいチラシを徹底的に研究し、プロにチラシを作成してもらうのがいいでしょう。

そのときも専門家に任せっきりにせず、いろいろと指定して納得できるチラシを作成することが大切です。

そしてチラシは、折り込みチラシが一番多い新聞に入れてもらうのがいいでしょう。

五大新聞でしたら、やはり朝日新聞です。主婦がなぜ朝日新聞をとるかといいますと、広告の数が一番多いからだと言われています。

そもそも広告というのは、事実に基づく主体的な拡大解釈が必要です。たとえば、北海道から取り寄せた深海水が水道水とどれだけ違うのか、科学的に立証され尽くされていなくても、深海水を使ってクリーニングした方が仕上がりがいいという事実があるならば、それを積極的にアピールするのです。

これがうまくアピールできれば、多少高めに価格を設定しても、お客さまは納得して来てくださるようになります。

それと同時に、チラシを見て来店してくださる住民が、すぐにわかるように、店頭にも、特色を効果的にアピールしたポスターを貼り出しておくことです。

そして、マン・ツー・マンの接客でも積極的に特色をアピールするのです。高付加価値商品を販売するとき、最も大切なのがこのマン・ツー・マンでのアピールなのです。

言うまでもなく、消費者は品質の中身に正直に反応します。せっかく高付加価値化を図ったのですから、チラシだけではなく、そのチラシの中身に追いつき、追い越すだけの不断の研究がなければ、お客さまは離れていきます。経営者自らも研究し、社員にもしっかりと教育する必要があります。

このようにして、新店舗の特色を打ち出して、高付加価値化を図っていきますと、チラシの効果は何十倍にも期待できるはずです。ぜひ頑張ってください。(二〇〇三年一月)

独立事業をするとき、ビジネスパートナー選びのポイントを教えてください。

Q 独立事業をするために、サラリーマンをしながら、今年一年間勉強してまいりました。ただし、一人ではできない仕事内容だと思いますので、今、ビジネスパートナーを探しています。

気の合う友人から声をかけようと思うのですが、ビジネスパートナーを選ぶときのポイントをぜひ教えてください。愛知県名古屋市 M・Tさん(35歳)

A:まず結論からはっきり申し上げますと、ビジネスパートナーがいなければできないと思っているような仕事は、絶対にやらないほうがいい、ということです。

たとえ地球が滅びようと、日本の国が沈もうとも、「自分一人で何が何でもやり遂げるんだ!」という、大いなる気概を持った人が独立したら、きっと成功するでしょう。

しかし、パートナーがいなければできないんだと思っているということは、はじめから経営者としては負けています。

なぜなら、独立してパートナと何かトラブルがあれば、それで事業は失敗だということなのです。独立して事業を興すのでしたら、自分ひとりで何でもやらなければ絶対にダメです。

考えてもみてください。会社を設立したら、何よりもまず、売り上げを上げなければなりません。

しかも、なるべく現金で入ってこなければ、月々のお家賃や水道代、電気代、光熱費などは払えませんし、月々の生活もできません。友達と一緒にやるといっても、友達と自分の給料が要るわけです。

ですから、売り上げがすぐに、しかも現金で入ってくるようなものでなければ、たちまちのうちに行き詰ってしまいます。

ふつう、会社をゼロから立ち上げた場合、最初の三年間は赤字を覚悟しなければなりません。その覚悟があるのかどうか、です。

それでも、どうしてもパートナーを見つけてやりたいとおっしゃるのでしたら、自分と同じだけの金額を出せるパートナーを探すべきでしょう。

両方が出資すれば、二人とも必死になりますから、うまくいくかもしれません。しかし、一般に向こうがより多くの資金を出したら、向こうが主導権を取りますし、自分があまりに多く出資すれば、向こうがおんぶにだっこになります。ですから、同じぐらい身銭を切ってやろうか、というパートナーを探すことです。

しかし、互いに身銭を切っただけでうまくいくとはかぎりません。先ほども申しましたように、会社を興しても、まず三年間は赤字続きなのですから、途中でパートナーの気力が萎えてしまうことも、十分に考えられるわけです。

そのとき、「情熱を持ってどんなことがあってもやるぞ!どんな困難も乗り越えていくぞ!」と、気持ちを一つにして、そのパートナーとやっていくことができるかどうか。

そのためには、よほどの信頼関係がなければなりません。しかも、自分もパートナーも奥さんや子どもがいたら、それも毎月養っていかなければならないのです。たちまちのうちに生活という重圧に潰されてしまいます。

三年間赤字続きで、あっちからもこっちからも借金しながらでも絶対にやるんだ、というパートナーでありつづけるかどうか。

これを考えなければなりません。私でしたら、ビジネスパートナーがいなければできないという仕事は、絶対にやりません。

自分一人でやります。それが独立企業をしていく人間の気骨であり、責任であります。

自分一人で稼いで、自分の力で集金して、経費を払って、残ったお金で自分の生活をまかなう。それだけの覚悟と気迫と根性がなければ、そもそも経営者にはなれません。

中小企業の経営者に一番大切なのは、労務管理や財務管理より、売り上げを上げ、お金を引っ張ってくる力ですから、人に頭を下げてお金を持ってくるのが苦手で、そちらをビジネスパートナーにやってもらおうとなると、パートナーの方が主になってしまいます。

そうなったらもう独立ではありません。独立する人をお助けするだけです。

ですから、営業は絶対に社長自らがやらなければなりません。「営業は苦手だから、パートナーに営業をお任せします」というのは、根本的に間違っています。こういうケースで手ひどい火傷を負った人を私は何人も知っています。

とにかく、営業、売上、入金、受注は全部、自分がしなければならないのです。これは絶対条件です。会社では、お金を持ってくる人間、売り上げをもってくる人間、入金してもらえる人間が、王者なのです。

ですから、それができないというのであれば、始めから独立は考えないほうがいいでしょう。

かなり厳しいことを申しましたが、以上のことを十分に踏まえて、よくよくお考えいただきたいと思います。
(二〇〇三年二月)

シルバー関連事業に進出したいのですが不安です。

Q 現在は病院の清掃を請け負う会社を経営していますが、高齢化社会の到来を見込んでシルバー関連事業にシフトしようと計画しています。まずはホームヘルパーの派遣事業からはじめようと思っているのですが、利益率を計算してみると不安です。
東京都府中市・Tさん(5歳)

A:まずはじめに申し上げたいのは、マスコミや証券会社のトレンド情報を当てにするより、ご自分の経験からにじみ出てくる直観力の方がはるかに有益だ、ということです。

確かに高齢化社会は確実に到来しますし、それにつれてシルバー関連事業のマーケットは拡大していきます。しかし、だからといって軽々にシルバー事業に進出するというのは、ちょっと疑問だと思うのです。

というのも、このマーケットには、ビジネスにとって最も大切な息吹と活力が欠けているからです。

息吹と活力のないマーケットに進出しても、よほどの研究と工夫がないかぎり、絶対に成功できません。

あなたの周りを見ても、エネルギーが満ち満ちて、財布離れも早く、消費力の高い若年層にターゲットを切り換え、成功したという実例はたくさんあるはずです。

ところが、シルバー事業に手を出し、成功したという実例はほとんどないのではないでしょうか。現に、私も聞いたことがありません。

以前にも釣りにたとえて話をしたことがありますが、シルバー事業というのは、釣りにたとえればシーラカンスを釣るようなものです。活きのいいアジとか、何でも食いついてくるハゼは釣りやすいのですが、海の底でジーッと動かずにいるシーラカンスを釣るのは、至難の技だと言えます。

シーラカンスは、海の底に居ることは居るのですが、動きが鈍いうえに食も細く、なかなかエサを食べません。

しかもたとえエサを食べたとしても、アジやハゼのようにバクッとは食いつかず、ほんの少し口にするだけです。まさに、深海魚中の深海魚なのです。こういう釣り場にいくら糸を垂れても、釣果は期待できません。

確かに、ホームヘルパーの派遣という仕事は、社会的には必要ですが、中小企業が新たに進出するビジネスとして考えたときには、安定した収益が出るまでには、相当な時間とエネルギーと工夫が必要なはずです。それまで、会社がもつかどうかが問題なのです。

それよりも、今あなたがしている、病院の清掃業を発展させる方向で動かれてはいかがでしょうか。と申しますのも、中小企業が生き残っていくためには、発展し、エネルギーと活力のある分野での5Kを狙っていくのが、最も成功率の高い道だからです。

「きつい、危険、汚い、苦労(知られていないので、売るのに苦労する)、暗い(派手でない)」・・・・・・それぞれローマ字で書くと頭文字がKになります。

この五つの要素が多ければ多いほど収益性は高くなり、安定した事業を持続的に経営していくことができます。

たとえば、格好いい仕事や、楽できれいな仕事は、誰でもやりたがりますから過当競争になり、おのずと利益率は低くなります。

また、誰もが知っている、聞いているという、いわゆるナショナルブランド(松下という意味ではない)や、みんなが欲しいもので売りやすいブランドは、マージンが少ないために当然、利益率は低くなります。

反対に、欲しがられているがあまり知られていないもの、これをナショナルブランドに対して開発商品と呼びますが、これは概して利益率が高いのです。

また、いわゆるKが多い業種は利益率がグーンと高くなります。つまり、利益が出やすいのはエネルギーと活気に満ちた産業における3K、5Kなのです。実に簡単な法則です。

ですから、中小企業で収益性を考えたときには、不格好でKが多いものをあつかうと必ず収益は上がります。格好いい仕事でもどこかにKが入っていたり、不格好なものが入っていたりすると、利益率が高くなるのです。

会社を創業して、揺るぎない利益の安定基盤を作ろうと思うのでしたら、とにかくKの多い業種、みんながやりたがらないところをまずやることです。安定基盤ができてから、少しずつ格好いいところもやっていくようにすればいいでしょう。これが中小企業で事業を進めていく、ひとつのものの考え方のヒントです。

あなたが今されている方向は間違っていません。まずは清掃業で安定基盤をお作りになることです。

シルバー産業へ進出されるのであれば、安定基盤ができた後で、少しずつチャレンジしていけばいいでしょう。ぜひとも頑張ってください。
(二〇〇三年三月)

経営の知識や情報は勉強しているのですが、なかなか結果が出ません。

Q 経営コンサルタントのセミナーに参加したり、経営に関する書籍を読んだりしながら、知識や情報を懸命に仕入れてはいるのですが、肝心の業績になかなか反映してきません。企業の実力をつけるためには、いったいどうすればいいのでしょうか。東京都中野区I・Hさん(4歳)

A:私は予備校を経営していますが、受験生のなかには、やたらと受験参考書とかの知識が旺盛な生徒がいます。

あの教材はどうだとか、この問題集の方がわかりやすいとか、勉強よりも参考書や問題集、予備校や先生等に関する情報にすこぶる詳しいのです。

私はこういう生徒のことを“受験参考書プロ”と呼んでいますが、こういう生徒にかぎって模擬テストの結果がよくありません。受験に関する情報はやたらと詳しいのですが、肝心の実力がついていないのです。

一方、過去の入試に出た標準典型問題を何回も何回も反復して、一つの問題集を覚えてしまうくらいに、地道に解きつづける努力をする受験生がいます。

こういう受験生はぐんぐん問題を解く実力がついていきますから、模試でも入試でもいい点数がとれて、必ず合格しているのです。参考書や予備校の情報には詳しくても、典型問題の地味な反復練習をおざなりにする受験生は、やはり受験に失敗するのです。

これは、経営者にも同じことが言えます。経営コンサルタントやジャーナリストなどから知識を仕入れて、世の中の動向とか経営論はよく勉強しているのですが、肝心の企業の実力がついていないという経営者が、決して少なくありません。

企業の実力というのは、大変地味で地道な努力の積み重ねによるものです。たとえば、前年度よりも売り上げやクライアントの数が増えたかどうか、粗利や純利益が上がったかどうか、在庫をどれだけ減らし、流動資産化できたかどうか。こうした地道な努力を積み重ねていくことで、はじめて企業の実力がついてくるのです。

受験生が標準典型問題を反復して実力をつけていくのと全く同じです。

新しい経営論やマーケット理論、またマーケットの動向分析などを、評論家的に勉強したり、語ったりするヒマがあるなら、現場に足を運び、その真っ只中で、まずどうしたら売り上げが上がるのか、どうすればクライアント数が二倍から三倍になるのか。次にどうすれば粗利が増え、次に利益が増えるのかを必死で考えるべきです。

企業の実力とは、最終的に利益を出しつづける能力とイコールです。

そのためには、このように現場に立って、まず売り上げ、粗利、利益の順で典型問題を設定し、自分の知恵で工夫しながら解決し、乗り越えてゆくべきなのです。

それから、より詳細な典型問題としては、労務管理、財務管理、資金調達、税金対策などがあり、重要問題をすべて自分の知恵でクリアすべきです。

ただし、この場合、大企業や中堅企業にあてはまる一般論ではなく、中小企業の、しかも自分の会社にあてはまる具体的事例に対する、税理士や弁護士などの専門家の意見に耳を傾け、それから自分独自の現場に則した判断をするべきです。

本を読むのは一般論の吸収で、税理士の具体的なアドバイスは、個別の具体論の吸収です。そこから、経営者が経験に基づく独自な判断を下す時に、論から実行に移ることになります。

ところで、売り上げを上げる商品企画や販売戦略の立て方ですが、これも机上の論理や書物、コンサルタントの情報では全くだめです。

いろいろな業種の生きているマーケットの動向というのは、経営コンサルタントの講義を聞いても、新聞や本をいくら読んでも、それだけで見えてくるものではありません。

なぜなら、それらはおおむね大企業や中堅企業の業績の結果を分析して、もっともらしく理由を説明したものにすぎないからです。今と未来に対する成功の個別提言ではないのです。

たとえば、ユニクロやマクドナルドが業績の上がっている時は、多くの人がそれを分析し、話題にし、その成功の秘密を情報として流しますが、落ち目になっユニクロやマクドナルドを、どうすれば再建し、以前にもまして繁栄させるかの、具体的な情報や再建プランを出せる新聞や本、また経営コンサルタントがいるはずがありません。いれば、その人が社長になればいいのです。

あの日産を再建したカルロス・ゴーンは、すべて課長レベルの現場の声を聞き、自分独自な再建プランを立て、成功したのです。

新聞や本やコンサルタントのセミナーで情報を得て、成功したわけではないのです。

このように、末端のユーザーと絶えず会って、さまざまな悩みや相談、需要やクレームを聞いているなかで、はじめてマーケットのニーズや変化をキャッチすることができるのです。

マーケットから、直接生の声、生きた声、生きた情報をつかんでいく努力を怠らず、つねに末端のユーザーの声に耳を傾けている経営者は、社会の状況がどんなに変化しようとも、マーケットの動向をしっかりと掌握し、必ず成功しています。

こうした基本的で地道な努力を、情熱と熱意をもってつづけていけるかどうか。これが、会社の実力をつける唯一無二の方法です。そして、これがしっかりと持続できていれば、必ずプラスの業績にはね返ってきます。

会社の経営者は、世の中の状況がどうであれ、従業員を幸せにし、従業員の生活を守っていくという責任があります。

会社の業績が上がり、収益が上がりつづけてこその労務管理です。ぜひとも現場を大切にする経営のプロになって、地味ではあるものの、業績だけは抜群という経営者になっていただきたいと思います。ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年四月)

不況を乗り切る自信がグラつき始めました。

Q 印刷会社を経営しているのですが、出版不況がつづくなか、このまま経営をつづけていくべきかどうか迷っています。自信をもって取り組んでいかなければと思うのですが、不安でたまりません。
東京都文京区 U・Iさん(4歳)

A:会社経営を成功させていくためには、「販売管理」、「労務管理」、「財務管理」、「資金調達」、「税金対策」という経営の五本柱を、バランスよく、しかも、すべてやり抜いていかなければなりません。

これは基本中の基本です。

しかし、企業を経営していく上で、何よりも大切なのは、何と言っても経営者のです。ものごとが成功するかどうかの一番のポイントは、志にあるのです。

特に印刷会社の経営は、一に営業開拓、二に営業開拓、三、四がなくて五に営業開拓と言っても過言ではありません。

だから、この志を立てるのです。つまり「営業開拓力日本一の会社になろう!」というものです。

どんなに性格が明るくて勉強熱心でも、志のない人間は何も動かすことができません。

少しぐらい資金や人材、知恵が不足しても、「将来必ず○○○になる!だから、これぐらい必ずなんとかなる。何が何でもやり抜くんだ!」という強い志と精神力があれば、「一念、岩をも通す」のごとく、必ず道を切り開いていくことができます。

あらゆるものが、その強い志に吸い寄せられるように、どんどん整っていくのです。すると、経営に取り組む姿勢も決然としたものとなり、いっさい心がグラつかなくなります。

もし反対に、志が萎えてしまっているとするならば、経営者としては失格ですから、早々に現役を退かなければなりません。

志とは「心が方向性を持ってどちらかの方向を「さす」こと」だから、志を内包する意を、意志とも言うのです。

意志の意は”意識”であり、意志の志は〝志”です。

つまり、意志とは〝意識と志”なのです。「こうありたい!」という意識〟と、「将来こうするんだ!」という具体的な志”があってはじめて意志となり、あらゆるものの原動力となります。

もちろん、成功するためにはいろいろな要素が必要ですが、何が一番大事かと言えば、圧倒的に意志の力です。

会社を経営していれば、悪運や不運、病魔、さらには力不足の部下や従業員、あるいは鉄面皮の金融機関など、さまざまな鬼神がやってきます。

しかし、「断じて行えば鬼神もこれを避く」にもあるとおり、強い意志のある人には、鬼神もこれを避けていくのです。特に、中小企業の経営者にとっては、これが経営力のポイントだと言えます。

経営者にそれだけの志があるかぎり、会社は大丈夫です。今のような不況のときでも、潰れそうで潰れにくいものです。

反対に経営者が、「志これを行なえど、心こころにあらず」という状況では、たちまちのうちに放漫経営となり、会社を倒産に追い込んでしまいます。

会社倒産の最大の原因は、放漫経営であります。これは今まで私が何度も申し上げている、商工リサーチの統計です。

断固として行わないから、善人も鬼神に変わる。断固として行わないから、放経営となる。逆に、断固とした志で、これ以上やりようがない、という努力の上にも、さらに一粘り二粘り、三粘り四粘りして、目いっぱいやっていけば、どんな不況でも、どんな状況に追い込まれていようとも、絶対に倒産しません。

王陽明は、「山中の賊を征するは易く、心中の賊を征するは難し」という有名な言葉を残しています。

山の中にいる山賊を討伐するのは簡単だけど、自分の心にある賊、つまり煩悩や欲望、安念妄想とかを制するのは、大変に難しいという意味です。

経営者が心中の賊を制圧できずに、あれこれと迷っていたのでは、絶対に会社は立ち行きません。

経営者は断固とした志を持って、心中の賊を制圧しつづけなければならないのです。

経営は決断の連続ですが、会社経営に百点満点の決断はあり得ません。五十パーセントの意見を聞こうと思えば、あとの五十パーセントの意見を無視するしかないのです。

最大多数の最大幸福のために、どこを取ってどこを捨てるか。それを決断するのが経営者の責任です。

八十点くらいの決断でも、それをタイミング良く断固とした志をもって行う。そうして目いっぱいに頑張っていけば、八十点の決断であったとしても、鬼神があちこちに飛び散ってしまい、その結果、何年後かには、それがベストの決断だった、ということにもなるのです。

経営に自信が持てなくなってきたということですが、今のあなたに一番必要なのは、周囲の動揺に揺らぐことなく、断固とした志を持ちつづけ、目の前の課題に脇目もふらずに邁進していくことだと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年五月)

行列ができる店づくりのノウハウを教えてください。

Q 勤めてきた会社をやめて、ラーメン・ショップを始めることにしました。店舗を構えるにあたって、行列のできる店づくりのノウハウがありましたら、ぜひ教えてください。広島県広島市 IEさん(43歳)

A:それはなんと言っても、地元で繁盛している美味しいラーメン屋を食べ歩き、さらに全国で繁栄している有名店のすべてを、徹底的に食べ歩くことです。

そしその結果、全国レベルで大変美味しく、かつ個性のあるラーメンを開発することです。

そうすれば、必ず行列のできるラーメン・ショップができます。

しかし、業種にかかわらず、店舗だけに絞って話をすると、以下のことが原則として言えるのです。

私は定期的に講演をしていますが、会場の広さと講演というのは、とても大きく関連します。たとえば、広いスペースなのに人がパラパラとしかいないと、講演する本人も聴衆もなかなか盛り上がりません。

そういうときは真ん中に詰めて、すき間を開けないようにしたり、パーティションなどで狭い空間を作ったりすると、密集感覚があり、聞くほうも講演するほうも一体感が出て、講演がとてもうまくいくものです。

これはお店の経営も同じで、狭いところに人があふれ返るぐらいのときには、「あっ、いっぱいだな。大盛況なんだな」と盛り上がっていくのですが、お客がいっぱい来るからといって店を増築したら、同じ数の客が来てもガランとしているので、お客さんも店側もなんとなく盛り上がらなくなってしまい、その結果、だんだん客足が遠のいていってしまうのです。こういう話は皆様もよく耳にするはずです。

ですから、つねに密集感覚を演出し、人がいっぱいで明るく繁盛している雰囲気や、環境をつくっていくことが大切です。

実際、私は今も店舗づくりに携わっていますが、この密集感覚を必ず演出するようにしています。今まで何度も実験しましたが、間違いなく、たくさんお客さまが来てくださるようになります。

それからもう一つ、店づくりで大切なのは店の入口です。「あっ、この店はい「い感じだな」と思わず入ってしまうお店は、たいてい入口が東南に配置してあります。

いい発展の気が籠もるとか、その気が流れるとかいいますが、お店づくりもやはり入口の方角が大事です。

東南の入口は「千客万来」といって、大変いい家相なのです。お店の場合、不思議なくらい発展の気に恵まれた店となります。

信じない人もいるかもしれませんが、私は多くの体験から確信しています。やはり、何千年と続く五行の気の学問は、絶対ではないものの、無視できない法則なのです。

また方位だけではなく、香港などでは地形も大切にし、同じ広さや便利さでも、吉相の土地は倍ぐらいの値段がする場合もあります。

ところで、家相についてですが、東南入口に加え、東北とか西南のところには、トイレとか水回りを置かないように配置すると、お店の気が明るく盛り上がり、気がどんどんめぐっていくのです。

反対に、東北とか西南にトイレやドアがあると、なんとなく重い雰囲気になってきます。

どんなに店構えをよくしたりインテリアに凝っても、そういうお店はなかなか流行りません。トラブルも良く起きる店となります。

このように、気の流れというのは非常に大切で、家も家相だけを考えるのではなく、家具とかベッドの位置も絶えず変えて、模様替えをしていると、いい気の流れができてきます。

すると、いい気はいいヒラメキを生み、プラスの気がどんどん流れますから、客足も途絶えません。同じ努力をするにしても、いい気の流れを作るのと作らないのとでは、結果がまるで違うのです。

デパートでも数年に一度は必ず改装しますが、改装するとまたお客さんが来るようになるといいます。お客さまだけではなく、従業員の気持ちも変わります。

お店が流行る流行らない、会社がうまく行く行かない、人気がある人気がない、成功する成功しないというのも、こういうちょっとした秘訣の積み重ねの結果なのです。

先ほどから、いい気の流れを作るという話をしていますが、そもそも、気の根源とは、その人の日々の思いです。

日々何を考え、何を思い、何を想像し、どうしようと思っている、という想いの奥に意識があるわけです。

ですから、その意識の赴くまにまに気が出るのです。プラスの意識を保っていればプラスの気を呼び、ものごとがプラスに運んでいく。逆に、マイナスの意識でいるとマイナスの気を呼び、ものごとをマイナスへと向かわせる。

この世の中で成功している人は、ほぼ百パーセント勉強好きです。何ごともプラスへプラスへと考えて、最悪の場合を覚悟して最善を尽くす。

いいことをイメージしながら、つねに勉強しています。そして、ものごとを素直に見て反省する要素もあります。

ですから、そういう人には自然に人脈も増えていきます。つまり、人がいっぱい寄ってくるのです。人がいっぱい寄ってくるからお金も情報も寄ってくる。

人脈がいっそう広がり、商品もやってくる。人の助けも得られますから、これで成功しないわけがありません。

これからお店をスタートするということですが、以上申し上げたことを参考に、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年六月)

これから日本の経済はどうなっていくのでしょうか?

Q OA関係の小さな会社を経営しているのですが、世の中、暗い経済予測ばかりで不安が先に立ってしまいます。これから日本の経済はどうなっていくのでしょうか?千葉県千葉市 T・Oさん(36歳)

A:私は定期的に講演会を開催していますが、その講演会でも時々、これと似た質問を承ることがあります。そのときに私は決まって、「本当にこのようなことを考えているのですか。だとしたら、あなたはよほどヒマだということです」と、はっきり答えるようにしています。

もちろん、ジャーナリストとか学者であるならば、こういうことも考えるでしょうが、経営者が本気でこのようなことを考えているとしたなら、その経営者は絶対に成功しない、と断言できるでしょう。

本当の優秀なビジネスマン、中小企業のオーナー、あるいは起業家、会社を興して成功に導いていこうという人は、たとえ世の中が不景気になろうと、外資系が来ようと何系が来ようと、日本が借金大国になろうと、とにかく、今月の売り上げをどう上げていくのか、粗利をどう稼いでいけばいいのか、経費をいかに削除していけばいいのか、いかにすれば一軒でも二軒でもクライアントを増やすことができるのか、ということを、朝から晩まで考えつづけているのです。そういう思念の集中と、実際に現場に立って率先垂範をつづけるのが経営者というものです。

さらに経営者は、「時代が変化して世間の先行きが不安に思っているときには、必ずビジネスチャンスが来るんだ。いや、こういうときこそ、ビジネスチャンスがやって来るんだ。

世の中、いよいよ面白くなってきたぞ!」と、積極的に発展的に、前向きにクリエイティブに考えるものです。

そういう発想をしていれば、どんな状況にあっても、必ずビジネスチャンスを見出していくことができるのです。

たとえば、外資系企業がどんどん増えてきたならば、経営者は、「こういう状況なら、きっと英会話の需要が増えていくはずだ。しかも、単なる英会話ではなく、ビジネスに必要な、英検一級やTOEIC高得点の資格を取ろうとする人が、どんどん増えていくに違いない。

ならば、資格取得のための予備校を作ろう」というふうに考えるはずです。あるいは、大手企業の総務課ないし人事課に、「今の時代、御社のなかにも英語を勉強したいとか、資格を取りたいという人がいらっしゃることと思います。

私どもは社員教育の一環として、御社の社員の方たちが、よりよき資格を取っていくお手伝いをしております」というように、売り込みをかけるかもしれません。

または、企業の課長代理までの名前、住所、電話番号が書かれている本をあたって、DMを送ったりもするでしょう。

また、「外国人専門の高級マンションや外国人専門の不動産屋も必要になるはず。ならば、五カ国語のできる友人と一緒に外国人専門の不動産屋をやろう」などなど。

とにかく、「すべてがビジネスチャンスなんだ。すべてが売り上げを上げ、顧客を増やし、ビジネスを発展させていくヒントなんだ!」としか考えない。

これが経営者であり、優秀なビジネスマンであり、創業者というものです。

証券会社のセールスでもない限り、景気や株価のことをどうこう言ったところで、意味はありません。

不況のときには何が流行するのか、どういうビジネスが成功するのか。逆に景気のいいときには、どんなものが流行するのか。こういうことがつねに頭に浮かばないようでは、経営者として失格です。

つねに一歩先の需要を見て、ビジネスチャンスをつかんでいき、「これをやれ「ばもうかる!」というような、新しい売り上げに結びつくヒントを発見しつづける。

そして、他社に先駆けて、新しい売り上げをどんどんつくっていく。

逆に、自分の会社が危なくなりそうだ、という兆候があるときには、いち早く対処して、絶対に会社が潰れないように切り抜けていく。

この、プラスのヒントとマイナスのヒントに、二十四時間アンテナをはりつづけるのが、成功するビジネスマンなのです。会社の経営者の生きる道は、これしかないのです。

とにかく、ジャーナリスト的な発想をしても、何ひとつビジネスにプラスにはなりません。日本経済の予測は専門家にお任せし、経営者として、目前の課題に全神経を集中させていくべきです。

以上、申し上げたような発想と行動力を持ちつづけて、ぜひ事業を成功に導いていただきたいと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年七月)

経営者になりたい私は、どんな勉強をすればいいのでしょうか?

Q 私は今、商社に勤めているのですが、将来は経営者になりたいと思っています。いったいどんな勉強をすればいいのでしょうか。埼玉県さいたま市 Y・Tさん(24歳)

A:まず初めに、「何でも独学でできる!」ということを、はっきりとお話し申し上げたいと思います。

世の中で、功成り名を遂げているすべての人が、立派な学校に行き、素晴らしい先生についているかと言えば、決してそうではありません。

特に経営者は、それこそ裸一貫で立ち上げて、独学で成功している人のほうが圧倒的に多いのです。

いや、そういう人こそ、成功していると言えるでしょう。

確かに、勉強の仕方としては、誰か知っている人に聞くとか、その道のプロといわれる先生につくとか、専門の学校に行くとか、本を読むとか、いろいろな方法もあるのでしょう。

しかし、やはり「どんなことでも独学で習得してみせる!」と思って、腹をくくって取り組む人でなければ、どんなことでも最高位まで習得できるものではありません。

だから、答えとしては、今から手当たり次第に本を読み、人に聞き、小さいことからいろいろと実務でやってみるべきです。経営とは、独学でやる試行錯誤の連続なのですから。

この例えとして、ここでちょっと絵の話をしましょう。

私は今まで、書や絵を何千枚、何万枚と描いてきましたが、日本画については、色の使い方、形、筆の技法、構図の取り方などの原則を、日本画の先生から一年教えていただきました。

しかし、二年目からは先生の教えをベースにして、自分から機会を見つけて、あらゆる場所でどんどん自分流に描いていきました。

決して教えられたままにせず、自分としてやれる精一杯の努力をした上にも、さらに努力をして、しかる後に先生に見ていただきますから、自分で努力をした以上のものをアドバイスしていただくと、そのアドバイスが、頭にも体にもバシッと入るのです。

つまり、初めから口をあんぐりと開けて、ゼロからすべてを教えてもらうのではなく、まずは自分が取り組んで、それから教えを請うことが、何よりも大切なのです。だから、その教えを受ける時は、バシンと深く身に入るのです。

しかし、私が絵画を始めたそのルーツと言えば、絵の先生も何もいないときに、日本画とか水墨画とかの基本的な描き方の書籍が、たとえば日貿出版社から、「四君子蘭・竹・梅・松)」という技法書をはじめとして、たくさん出版されていますから、それらの本をかたっぱしから買ってきて、一つずつ構図等を、仕事が終わってから明け方近くまで、毎日毎日、自分の手で描いて覚えたのです。

とにかく、その本に書いてある構図の取り方などを、一つずつ色紙や画用紙に描いてみて、すべて自分で覚えたのです。

つまり、基本となるものは、全部独学で、自分で描いて覚えたのです。

ですから勉強というのは、教わらなければできないものでは決してなく、何でも独学でできる、ということをぜひ知っていただきたいと思います。

そういう姿勢のある人が、いったん先生についたら、めきめきと上達するのです。

まさに、「一を聞いて十を知る」になるのです。何でも独学で習得するという姿勢が身についている人は、たとえ、月に一回でも年に一回でも、先生にチェックしてもらうだけで、どんなことでもあっという間に上達していくのです。

ただし、独学には壁があるのもまた事実です。ですが、その壁に行き着くまで、とことん自分で勉強し、さらに、ありとあらゆる本を読み、ぎりぎりまで自分でやってみて、それでも、「どこがいけないのかわからない」というときに、先生から教えてもらうと、「なるほど、そうだったのか。こうすればよかったんだ!」ということが体得できるのです。

だからといって、先生頼り、先生任せにしてはいけません。何度でも自分から再び取り組んでいくのです。

そしてまた、行き詰まったときには、その行き詰まったところを先生からアドバイスを受ける。だから、また体得できる。この繰り返しの姿勢がある人は、先生の持っているエッセンスを、短期間のうちにどんどん吸収し、やがてその先生を越える成功者の道を歩むことになるのです。

このように、「何でも独学でできるのだ!」ということを、一生涯のうちのどこかで学び体得した人は、どんなことでもできる人になれます。

以上申し上げたように、「どんなことでも独学で習得できる」ということを、ぜひ優れた経営者となる勉強の基本だと考えて、どんなことからでも結構ですから、まずは自分で第一歩を踏み始めていただきたいと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年八月)

私は、一流のプロになりたいと思っています。

Q 私はインテリアデザインの仕事をしたいので、将来に向けて勉強しているのですが、仕事をするからには、一流のプロになりたいと思っています。プロをめざす人はどんなことをしているのでしょうか。
兵庫県神戸市K・Hさん(2歳)

A:前項では、「何でも独学でできる!」ということをお話し申し上げましたが、今回は、「プロとアマチュアの違い」について述べたいと思います。

私が経営する予備校では、毎回、新入社員に対して、「世の中にはプロもいればアマチュアもいる。

さて、この予備校業界で、プロと呼ばれる人とアマチュアと呼ばれる人の違いはいったいどこにあると思いますか」と、質問することにしています。

この問いに答えられる人は、なかなかいません。しかし、答えは至って簡単なのです。それは、「受験専門誌を全冊、毎月毎月、欠かさずに読みつづけること。

そうすれば、必ずこの道のプロになれる!」… これが答えであり、私が、新入社員も含めた全社員に、何回も何回も檄を飛ばしつづけていることなのです。

受験業界において、十数年前までは、旺文社の『蛍雪時代」、学研の「Vコース」、そして、ライオン社の『私大進学」が、大学受験三大専門雑誌でした。今なおつづいているのは「蛍雪時代」だけとなり、受験専門誌の現状もずいぶんと変化してきている昨今ですが、たとえば、こういった専門誌三冊を、毎月毎月、隅々まで読めば、一年間で三十六冊分を読むことになりますから、そこから得られる知識と情報は、ちょっとしたアマチュアではとても太刀打ちできないだけの、圧倒的な量と質になるのです。

そうすれば、どんな受験生や保護者の質問に対しても、すべて自信をもって答えられるようになります。

しかし、こういう努力をしている人は、意外に少ないものです。一冊か二冊、適当に買ってきて、関係しているところとか、自分に興味のある部分だけを読んでいるのみで、全冊を買ってきて、隅から隅まで目を通している人はなかなかいないのです。

これでは、アマチュアの域を出るものではありません。プロとしての自覚があるのならば、今私が申し上げたような努力をすることが最も大切であり、この努力を一年間、真剣につづければ、それは立派なプロと言えるのです。

これは、どの業界や業種についても全く同じことが言えます。確かに例外もあるでしょうが、とにかく、アマチュアではなくプロになろうと思うのなら、「業界誌や専門誌は、一冊とか二冊だけ読むのではなく、全冊読むものである!」という心構えと努力が必要なのです。

インテリアデザインの仕事で、あなたが一流のプロをめざすのでしたら、インテリアデザインで有名なお店を全部、実際に足を運んで、徹底的に研究することはもちろんのこと、インテリア関係の専門誌や業界誌を、一冊や二冊だけではなく、全冊買ってきて、全部に目を通すことです。さらに、朝日、読売、毎日、産経、日経の五大新聞を始めとして、日経流通新聞、日刊工業新聞、日刊産業新聞の全紙を取るのです。

特に、日経流通新聞、日刊工業新聞、日刊産業新聞には、流通関係の素晴らしい情報がいっぱい入っていますから、これだけの努力をするだけで、どれだけ多くのビジネスヒントが得られることでしょうか。

ここでもう一つ、私がよく社員に注意するたとえ話をいたしましょう。たとえば、「マナーのことについて本を読んで勉強しなさい」といった場合、書店へ行って、よさそうだなあと思う本を一冊か二冊買ってきて勉強する、というのはあくまでもアマチュアです。

しかし、プロは違います。書店の店員さんに、「あの、すみませんが、マナーに関する本を全部ください」と言って、全冊買って勉強する。全冊を買ってきて、たとえ全部を読まなくても、目次などに目を通し、必要なものをチェックして、全冊分のことが頭に入っている。

そして、必要な時にはすぐに取り出して詳しく読める態勢を調えているのです。これがプロというものです。

また、そういう本を実際に書けるプロというのは、必ず専門書を読破しているものです。専門書をたくさん読破して得た専門知識を、やさしく解説したり、書いたりするのが講演料を頂くプロであり、印税を頂く著者なのです。

ですから、プロは蔵書をたくさん持っているのです。「アマチュアではなく、プロをめざしなさい」といって、こういう注意をするのです。

無論、人並みはずれた体験や経験から来る知識や技術だけで、経営を成功させている人もいます。

しかし、それだけでは決して一流と言われる経営者にはなっていないはずです。一流の経営者には、何千冊、何万冊の蔵書をお持ちの方が多いのは、そういうことなのです。

とにかく、業界で超一流のプロと言われる人は、圧倒的な読書量と読書力があるものです。

ですから、一般に経営者には読書力や読解力のある人が多いのですが、「読書力のない人は、二流以上の経営者にはなれない」ということに関しては、また別の機会にお話しできればと思っております。

以上、申し上げたように、人並みはずれた実践、体験に加え、専門誌や業界誌を全冊買って勉強する姿勢を身につけることによって、一流のプロを、ぜひめざしていただきたいと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年九月)

「とにかく、経営者はたくさんの本を読め」というのは、いったいどういうことなのでしょうか?

Q 最近、経営者仲間から、何か機会があるたびに、「とにかく、かたっぱしから本を読めそうじゃないと、立派な経営者にはなれないぞ」と言われます。言いたいことはなんとなくわかるのですが、いったいどういうことなのでしょうか。また、どんな本を読んでいけばいいのでしょうか。東京都武蔵野市K・Tさん(33歳)

A:前項でも少しふれましたが、今回は、「読書力のない人は、絶対に二流以上の経営者にはなれない!」ということを、明確にお話し申し上げたいと思います。たとえば、元経団連会長の平岩外四氏。

周りのみんなから、「平岩氏ができないんだったら、ほかの誰がやってもできないだろう」と言わしめるだけの、圧倒的な実力者だったわけですが、彼はそれだけの人物だったわけではありません。

ほかの誰よりも謙虚で、みんなに頭を下げながらも、言うべきことは明確に述べ、それでいて、相手を納得せしめる、深い知恵と幅広い知識、説得力のある豊かな表現力が、平岩氏には十二分に備わっていたのです。だからこそ、圧倒的な実力者だったのです。

では、いったい彼はどうやってそれらを身につけたのか。それはズバリ、「彼の読書力にある!」と言えるのです。平岩氏は蔵書が三万冊に迫るほどの、財界の一、二を争う読書家としてつとに有名ですが、とにかく時間を見つけては、ありとあらゆる本を読んでいるのだそうです。

その中でも、特に古典に精通しているそうですが、古今東西にわたる日本や中国、さらにヨーロッパの古典を読破し、そこから学び、叡智を吸収しつづけているのです。

人類が残した叡智の結晶とも言うべき古今東西の古典を読破し、さらに、豊富な人生経験を積んでいくことによって、誰もが納得するだけの、圧倒的な説得力と文章力、表現力等がより深く、より確実に体得され、それに比例して、人間に対する洞察力もますます研ぎ澄まされていくのです。

人間への愛情や信頼というものを、どう咀嚼し、どう表現していくのか。「なるほど、あなたのおっしゃるとおりですね」と、人間の心情に訴えかけるだけの、文学性、哲学性、宗教性、論理性、普遍性は、やはり、何千冊、何万冊の読書量と読書力によってしか、身に備わらないのです。これらのものが身に備わっている人はみな、誰からも尊敬される立派な指導者となっています。

特に中国の古典は、為政者のために書かれたものですから、組織の上に立つ人が読むべきものです。

逆に言えば、淘汰されずに残ってきた人類の叡智とも言うべき古典の読破が足りないということは、普通の人が普通に考える程度の知恵しかない、ということでもあります。

以前、私の著書にも書いたことですが、イギリス銀行協会の調査で、「イギリスで銀行の頭取になっている人には、いったいどんな人物が多いのか」という調査を行ったところ、「シェークスピアをこよなく愛している人が一番多かった」という調査結果が出たそうです。これは大変に興味深いお話です。

シェークスピアの作品は、人間のいい面も悪い面も、両方すべてがわかったうえで、人間を肯定的に見ています。

ですから、シェークスピアをこよなく愛する人は、人間のいいところも悪いところも両方がわかって、さらに人間をどこまでも肯定的に見ていく目がある。だからこそ、魅力あふれるリーダーとなるのです。

数量経済やマクロ、ミクロの経済理論等もすべて把握したうえで、人間の心に訴えかけていく文学性のある人が頭取になっている。

シェークスピアを鑑賞し、読解し、愛するだけの中身と咀嚼力のある人でなければ、イギリスでは頭取になれない、というこの調査結果は、じつに大きな示唆を与えていると言えるでしょう。

それからもう一つ、たしか読売新聞だったと記憶していますが、一部上場企業の経営者や管理職の国語力をテストしたという記事を読んだことがあります。

古文・漢文・現代文の論旨要約や空欄補充等の試験を、管理職や経営者が受けたところ、非常に面白い結果が出たそうです。

役職別の平均点を出してみたら、実に見事なまでに、役職による国語力の差が明らかになったそうです。すなわち、係長クラスが六十五点、課長クラスが七十点、部長クラス八十点、取締役クラス八十五点、常務、専務九十点、そして、社長、会長九十五点、というものだったのです。

つまり、役職や地位の差は、まさに国語力、読書力、読解力の差だったのです。

超一流の経営者や管理職は、会社のことも家庭のことも、ありとあらゆることを立派にこなす実力が備わっているのですが、やはりそれは、国語力、読書力、読解力があるからこそ可能なのです。逆に言えば、それがなければ、二流以上の経営者には絶対になれないということでもあります。

以上述べたように、経営者としての、圧倒的な実力を磨きながらも、純文学や古典、哲学書、宗教書等を読破しつづけ、それによって、豊かな説得力や文章力、表現力等を備えていくことが、超一流の経営者になる道であることをご理解いただき、ぜひ超一流の立派な経営者をめざしていただきたいと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇三年十月)

会社を黒字にするには、どうすればいいのでしょうか?

Q ビジネス用ソフトの販売会社を経営しているのですが、このところの不況続きで業績は悪化する一方です。あの手この手と八方手を尽くしているのですが、なかなか思うように黒字に転じてくれません。会社を黒字にしていくためには、いったいどうしたらいいのでしょうか。東京都多摩市 I・Sさん(4歳)

A:「会社を黒字にする方法は?」と聞かれて、「はい、それはですねえ」と、あたかも数学の方程式を解くかのように、どんなケースでもスラスラと答えられる人はまずいないでしょう。

また、アドバイスどおりにやれば必ず黒字になる、というようなウマい話があるわけもありません。

もし、そんないい話があるならば、誰も苦労はしませんし、今ごろはすべての人が億万長者になっていることでしょう。

しかし、現実はそんなに甘いものではありません。それはあなた自身が一番よく知っているはずです。

さて、私自身も三十年近く会社経営をしながら、今まで何百、何千という会社経営者とお会いしてきましたが、「この人がやると必ず会社がうまくいくし、黒「字になる」という人もいれば、逆に、「この人はどんな会社を起こしても、結局は会社をダメにして赤字にしてしまう」という人もいるのです。これは厳然たる事実です。

では、この両者の違いとはいったい何なのか。

第一に挙げられることは、何と言っても、精神力、志、想いの差です。「何が何でも、必ず会社を黒字にしてみせるぞ!」「会社の収益も、損益計算書、貸借対照表もすべて、絶対に黒字にするまで私は貫き通してみせるぞ!」という、黒字となる要因のすべてを吸い寄せてしまうほどの強烈な想いと、これを怠りなく実践していく圧倒的な精神力、というよりも粘着気質を、四六時中持ちつづけ会社経営に取り組む姿勢があるかないかの差です。

いままで何度となく、精神力と志の大切さを述べてきましたが、これがまずダントツに第一です。これのない経営者が成功するはずがありません。

次に、どれだけ経営者が細かい事を骨惜しみせず、永続的に物事を徹底させる努力をしているかの差があります。

汗水を流して、自分の筋骨、骨肉、頭のありとあらゆるものを極限までつかって、経営の重要項目を徹底させる実行力が大切なのです。

特に中小企業では、経営者自らが現場に立って、率先垂範していかなければなりません。

たとえば、内にあっては、仕事場の掃除を先頭に立ってやったり、倉庫に入れば在庫の分類チェックを徹底的に行ったり。

そして、従業員ひとりひとりとつねにコミュニケーションをとるようにして、マーケット情報を得たり、どこまでも人材の育成を図ったりする。そして、ひとたび外に出れば、販売先をグルグル回って、実際に仕事や注文をもぎ取ってくる。

私は、創業の中でその大切さを誰よりもよく知りましたから、今でも社員といっしょに汗を流しつづけていますし、社員の何倍も徹底的に働く努力をしています。

反対に、小手先の中途半端な考えや理屈でものごとを処理しようとしたり、何でも面倒くさがって十分な検討もせずに、「あとはキミに任せたから」と、自分は汗をかかずに、すぐに従業員任せにしてしまうような、不精な人間が社長になったら、その会社は、収入はもうかっているはずなのに、必ず赤字になっていたりするものです。これは天地の法則とも言えるでしょう。

確かに、社長の運気や才覚も大切です。特に、社員が三十人までの中小企業は、社長の商売の才覚が、社業の九十パーセントまでを占めると言われています。

しかし、やはり必要にして不可欠なのは、「必ず黒字にしてみせるぞ!」という思念の持続と、会社を経営していくための経営理論の研究、そして、社長自らがどこまでも汗をかくことを厭わない、という精神と現場で率先垂範していく実行力であります。

「努力に追いつく貧乏はなし」という格言がありますが、このことを肌身で知っている経営者は、何をやっても黒字にできる人だと言えます。

人間誰しも、「もっと楽をしたい」、「もっと遊びたい」、「もっとサボりたい」という心を持っているものです。

しかし、そうした遊惰安逸に流れる心は、あっという間に、怠りと慢心、愚痴と不満、そして、油断をもたらします。これが放漫経営の始まりです。何度となくお話し申し上げているとおり、統計的に、会社が倒産する最大の原因は放漫経営にあると言われているのです。

遊惰安逸に流されそうになる自分をグッと戒め、黒字にしてみせるという精神力を持ちつづけて、ギリギリまで骨肉を痛めつけて精進努力する経営者には、貧乏は絶対に追いつけません。

ですから、こういう人は何をやっても必ず黒字になります。

以上申し上げた原理原則に立ちかえり、もう一度、ご自身の会社再建に全身全霊で取り組んでいただきたいと思います。そうすれば、必ずや会社が黒字に転じる日がやってくることでしょう。

ご健闘をご祈念申し上げます。
(二〇〇三年十一月)

社員に、報・連・相〈報告・連絡・相談〉を徹底させる秘訣はないでしょうか?

Q「報告・連絡・相談」いわゆる「報・連・相」が大事だ、ということですが、なかなか思うように社員に徹底できません。報・連・相を徹底させる秘訣はないものでしょうか。千葉県船橋市 K・Nさん(4歳)

A:私も会社を創業して以来、多くの社員を教育してきた中で、この報・連・相の大切さを誰よりも痛感していますから、今でも社員には報・連・相を徹底させていますし、これを通してしっかりと社員教育をしています。

さて、報・連・相の中で、何が最も大切かと言えば、それはもちろん報告です。

つづいて連絡、そして相談、という順です。昔から言われてきた言葉ですが、先人たちも、この順番でその大切さを知っていたのだと思います。

では社員にとって、報告とはいったい何なのでしょうか。それはズバリ、「義務」なのです。だから、上司や経営者は、報告を怠る社員に、絶対に甘い顔を見せてはいけないのです。

たとえば、少人数でがんばっている部署から、「今回のプロジェクトは、会社の存亡に関わる最重要事項ですので、全員、フル活動で頑張っておりますが、完成するのに、あと三ヶ月はかかると思います」というような報告書が上がっていたとしましょう。

すると、その報告書を読んだ上司や社長は、「このプロジェクトは、あと一ヶ月が勝負なのだ。キミたちが頑張っているのは十分承知しているから、期間限定で、他の部署から五人応援を回そう。だから、ぜひとも一カ月で完成させてくれたまえ。期待しているぞ!」ということになるでしょう。

また、「今回の新商品は大変人気があり、先月比一・五倍の売れ行きです」という報告が上がっていたならば、「よし、今が勝負だから、テレビ宣伝の予算を三倍に増やそう」ということになるかもしれません。

つまり、部下から報告がきちんとなされていれば、上司や社長は、会社にとってプラスになることについては、即刻、人・物・金を結集させることができるし、逆に、マイナスになることについては、いち早く解決するように、こちらにも人・物・金が動かせるわけです。

それだけの権限を社長は持ち、上司はそれに準ずるものを持っているのです。また、いいものはより早く、大きく進め、悪い事はより速やかに、最小限の損害で済むように、上司は経験と知識と情報量と判断力を持っているのです。

このように見ていきますと、部下がきちんと報告しないということは、あってはならないことです。

ましてや、自分が大事だと思う事項は上司に報告するけれど、そうではないと判断する内容については報告しない、という社員は大いに考えものです。というのは、「この内容は大したことがないなあ」と思うことが、実は会社にとっては非常に重要な事項であったりすることが、往々にしてあるからです。

しかし、もっと問題なのは、自分で勝手に判断して、上司に報告する内容を取捨選択しているということは、上司よりも自分のほうが賢いと思っているという心驕りが、その部下にはあるということです。これは絶対に許してはいけません。

ですから、いいのも悪いのも、両方を報告させるようにしなければなりません。

しかし、なかには、いい報告しかしない、という部下もいるのです。その部下の報告書を読んでいると、問題が解決されていく内容しか載っていない。

「本当かなあ?」と思って、別の人間に確認したら、実は問題点が残ったままだった、ということもあるのです。経営者は、問題点や苦情、そしてクレームがあったら、それをいち早く知り、次の打開策、改善策を次々と出していかなくてはなりません。

つまり、問題点、苦情、クレームは経営者にとって宝物なのです。いい報告しか上げない社員には、上司に叱られることを恐れずに、その問題点はどうしたら改善できるのか、という自分なりのアイデアも、必ず提出するように教育していく必要があります。

また逆に、問題点ばかりを指摘してくる社員もいます。そういう社員には、少でも前向きで、発展的で、明るくて、しかも具体的な改善アイデアを出すよう、教育する必要があります。

問題点が発生した原因は何で、それに対する代替案や改善策を報告するように習慣づけていくのです。

評論家のように、事なかれ主義で批判的な目でみていくクセを改めさせる、絶好のいい機会でもあります。

そして、報告書は必ず日切りをして、たとえば「明日の午後五時までに必ず報告書を提出しなさい」というように日切りをするのです。

いわゆる「ケツカッチン」です。

今回は紙面の都合で、なぜケツカッチンが必要なのか、ということや、報告の次の「連絡」、そして「相談」がいかに重要なことかを、詳しくお話しできませんでしたが、また次の機会に、ぜひ述べたいと思います。

以上、申し上げたとおり、すべては社員教育であり、訓練です。報告書の大切さを何度も言って聞かせて、必ず報告書を提出させる。そして、部下が提出した報告書には必ず目を通し、その都度アドバイスをしてあげることです。

部下の報告書がきちんとできていたら励ましてあげて、できていないようなら、厳しくしつけ、報告書の書き方や意義をしっかりと教育することです。

この繰り返しと、経営者の社員に対する根気と情熱の持続が大切なのです。ぜひ頑張っていただきたいと思います。
(二〇〇三年十二月)

連絡のつかない社員が多くて困っています。

Q いったん営業に出てしまうと、一日中連絡が取れなくなってしまう社員が多くて、大変困っています。注意をすると、しばらくは連絡が取れるようになるのですが、ほどなくすると、再び連絡が取くなってしまいます。

いったいどうすればいいのでしょうか。神奈川県川崎市 YTさん(38歳)

A:「報・連・相・・・・・・報告・連絡・相談」の大切さのなかでも、「報告」がいかに会社にとって重要であるか、また報告書を徹底させることが、いかに大切な社員教育であるかなどを詳述いたしました。

今回は「報告」の次の「連絡」、そして「相談」の重要性についてお話ししたいと思います。

中小企業で、連絡の取れない社員を抱えて困っている経営者は、意外と多いのかもしれません。「報告は社員にとっての義務である」と申しましたが、連絡もやはり、社員にとっての義務だと言えます。会社にとって報告の次に大事なのは、何といっても正確で敏速な連絡です。それくらい、連絡する能力は社員にとって重要な能力なのです。

もちろん、ひとりの人間としても、連絡する能力が大切であることは言うまでもありません。

会社を経営していく上で、経営者や上司は、絶えず的確な指示を部下に出しつづけなければなりません。ですから、部下は絶対に連絡が取れるようにしておく必要があります。そうでなければ、会社はうまく回っていきません。

上司が十回連絡をすれば、正確に敏速に、たとえ深夜であっても、十回必ず連絡が取れるようにしておく。

たとえすぐ電話に出られないときでも、上司が部下に留守電やメールを入れておけば、連絡の取れる状況になり次第、十回なら十回、百回なら百回、すぐ部下が返事をする。

これは、全く当たり前のことなのですが、案外徹底できない人があり、必ず実行させる必要があります。

もし、商談等の理由で、連絡の取れないことが事前にわかっているのなら、「本日の午後一時から三時までは商談が入っていますので、その間は連絡が取れないと思います」というように、前もって上司に連絡するようにしておけばいいわけです。

そして、商談が終わったらすぐに、留守電やメールが入っていないかどうかを確認させたり、上司に電話を一本入れさせたり、という当たり前のことの実行訓練を部下に徹底させれば、いついかなるときでも、上司は部下と連絡が取れるようになります。

もし、それができていない社員がいるとすると、必ずボーナスや職能給から減俸し、毎回ボーナス支給の時にそれを言及して手渡すべきです。

今申し上げたことは、当たり前といえば当たり前ですが、連絡が確実に取れる、ということは、社員として、あるいは仕事の相手先として、良識を持って一緒に仕事を進める最低限の約束事でもあります。

逆に言えば、連絡が取れない、とか、なしのつぶてになってしまう人とは、一緒に仕事ができないことになります。

だから、永続的に仕事が依頼できなくなりますから、当然、信用も失うし、チャンスも大きく逃すことになります。

このように見ていきますと、「すぐ連絡が取れる」ということは、社員としても、ひとりの人間としても、いかに重要なことであるかがおわかりいただけると思います。

ですから私は、愛情をもって、報告と同様、連絡も徹底させて、しっかりと社員教育を図っているのです。

さて、「報・連・相」の最後の「相談」ですが、今まで申し上げてきたとおり、ふだんから、部下に「報告」と「連絡」さえきちんとさせていれば、相談すべき事態が大きくなってしまう前に、ほとんどの問題は解決できます。

また、改善も素早くすることができます。

いや、そうしなければならないのです。相談が特にない場合でも、報告と連絡の内容を見て、経営者や上司のほうから、「これはどうなんだ?」という形で、部下に話もできるわけです。

逆に、報告も連絡もないのに、いきなり「実は社長、今回お任せいただきましプロジェクトですが、もう、にっちもさっちもいかない状況に陥ってしまいました。何とかなりませんでしょうか」と、突然部下が相談にやってきても、社長としては、「なんでこんな事態になってしまう前に、もっと早く報告や連絡をしてこなかったんだ!」となってしまいます。

「申し訳ありません、社長はとてもお忙しそうなので、なかなか申し上げるタイミングがありませんでした……」というように、もう、どうしようもない状態になってから来られても、これはもう、莫大な時間とエネルギー、労力、費用等が失われてしまうわけですから、会社にとっての大損失です。そうなってからでは遅いのです。

このように見ていきますと、全社員に報告と連絡を徹底して義務づけることが、会社の存続にとっていかに重要であるかがおわかりいただけると思います。

相談の前に連絡、連絡よりも報告、つまり、一番大切なのは報告、その次に大切なのは連絡だ、と言うことです。「報・連・相」とは、実にうまく表現しているものだと思います。

以上、「報告・連絡・相談」の重要性を述べてまいりましたが、とにかく、大切な社員に「報告・連絡・相談」を徹底させて、しっかり社員教育をしていくことは、経営者としての、社員に対する大きな愛情であり、責任であり、義務であり、使命だと思ってください。ぜひ、しっかりと頑張っていただきたいと思います。

ご健闘をお祈りしております。
(二〇〇四年一月)