本物の経営者はどこがちがうのか! 深見所長講演録14(Vol.5)

アルプスを越えたハンニバルとナポレオン

たとえば、ハンニバル将軍のアルプス越えなんか、まさに定石を超えています。第二次ポエニ戦争のときのカルタゴの英雄ハンニバル。彼は、騎兵隊の使い方が実にうまかったんです。

二万の歩兵隊と騎兵隊で敵を取り囲んで、八万か九万の敵を完全に完膚なきまで打ち負かしました。

それに象も使っています、三十頭ぐらいの象を。カルタゴというのはアフリカの北部ですので、アフリカ象を使う種族がいたんです。

その種族は馬に二人乗って、後ろに乗っているのが敵と戦ったり、あるいは馬にぶら下がったりしながら戦ったりするんです。そういう乗り方をする種族がいたんです。

それから象を調教するのがいて、象を戦略に使ったわけです。要するに、戦闘用の象です。その三十頭ぐらいの象で押し寄せていったら、敵はもう度肝を抜かれてすぐさま降参です。

しかも、アルプスを越えていったんですからね。ローマ軍のほうでは誰もアルプスを越えてくるなんて考えていません。

みんな、海から来るだろうと思っていたところ、そこを定石を超えて、誰も考えつかないようなアルプス越えという形で意表を突いていったわけです。

もちろん、アルプスを越えていくわけですから、途中で象が死んでしまった崖から落ちたりして十頭ほどを失い、馬もかなりの数を失っています。

だいたい三割ぐらいの戦力を失っています。歩兵部隊も騎馬部隊も象も、アルプスの山を越えていく途中で転げ落ちて死んでしまったんです。

それでも、アルプスを越えて大軍がやってくるなんて誰も思っていないから、ローマに入ったハンニバル将軍は連戦連勝です。五連勝、六連勝。次々と大きな戦いに勝っていきました。

そこまで徹底的に戦ったら、兵隊も根性がつきます。はるばるとアルプスを越えてきたんですからね。根性もつくし、筋力もつきます。アルプスを越えるだけのものすごい筋肉がつくでしょう。

だから、ハンニバル将軍が率いるカルタゴ軍は連戦連勝だったんです。

けれど、途中で周辺の都市国家があまり味方しなくなって、ローマのほうについたものだから苦戦し、本国へ戻されてしまったんです。

帰っていくときは船で帰ったんですけれどね。

まあ結局、カルタゴは第三次ポエニ戦争で負けて滅んでしまいます。ハンニバルも六十四歳で毒を飲んで自決せざるを得なくなってしまったんです。

けれど、ハンニバルはただ死んだわけではありません。ハンニバルが残した足跡を、実はナポレオンが学んで、オーストリアとの戦争のときにハンニバルの戦法をそのまま使ったんです。

ナポレオンは多分こう攻めてくるだろうと、オーストリア側は定石にしたがってナポレオンの行動を予測していたんですけれど、ナポレオンはハンニバル将軍の戦い方を勉強していたから、オーストリアが考えているような定石どおりの作戦を取るつもりはない。

ハンニバルもアルプスを越えたんだ、ということで、有名な「ナポレオンのアルプス越え」という作戦を取ったわけです。

それはもう、何万という兵隊が十日ぐらいかけてアルプスの山を越えていくというのですから大変です。

騎馬兵と歩兵隊、それから大砲隊がガラガラガラガラと大砲を引きながら、あの険しい山を越えていくんです。

ですから、途中で脱落する兵もたくさん出ました。それでも、まさかナポレオン軍がアルプスを越えて背後から攻め込んでくるとは誰も思っていないから、オーストリア軍はアッという間に崩壊です。アルプスを越えてきたというだけで恐れおののいたんです。

そうやって十日間かけて、はるばるアルプスを越えてきたんですから、それは兵隊も根性がつきますし、ものすごく士気が上がります。

ナポレオンの天才的な奇襲攻撃と言えば奇襲攻撃なんですけれども、ヒントはやはりハンニバル。ハンニバルのアルプス越えがあったから、ナポレオンもアルプス越えの作戦を取ったわけです。

神のお告げだったかどうかは分かりませんが、ハンニバルも多分、目に見えない世界から何か啓示を受けていたのでしょう。

でも、大きな犠牲を覚悟のうえでアルプスを越えていくんですからすごいことです。犠牲もあるけれども、敵の意表を突くから勝つ。それから、困難な状況を乗り越えていくから兵士の士気も上がり、筋力、パワーもつく。

その成功の定石を歴史の中に見出して、実行したことによって大成功を収めたのがナポレオンです。天才軍略家と言われたナポレオンのすごいところです。

ナポレオンのアルプス越え、ヒントはハンニバル。紀元前二〇〇年か三〇〇年ぐらいに起きた第二次ポエニ戦争のときのアルプス越え。それを約二千年ぶりに、ここ一番という戦いで使ったわけですね。

正で接して奇で勝つ

だから、囲碁の勝負も将棋の勝負も、まずは定石を勉強しなければいけないんですけれども、定石にとらわれると、相手に手の内を見られます。

「戦争論」を書いたクラウゼヴィッツという人は、戦争は政治の延長線なんだ、戦いをもってする政治なんだ、ということを言っています。

それから、もちろん孫子の兵法、六韜三略にも戦い方の原則が書かれています。そういうことをみんな勉強しています。

しかし、孫子の兵法にある戦い方はこっちも知っているし、向こうも知っている。

定石を基本にしているわけですから、では、どこで勝負がつくのか、ということです。定石の組み合わせ方も一つの決め手になるのかもしれませんが、大切なのはやはり、定石を超えた何かです。それによって勝負が決まるんです。

「正で接して奇で勝つ」と言います。この場合の奇というのは奇妙のではありません。「くしびなる」ということで、正攻法以外の何かで勝つ、ということです。

奇襲作戦とか目先の変わった作戦というのは大原則から外れるので、実践してもやはりうまくいきません。

ですから、まずは正攻法で立ち向かっていく。けれど、向こうも正攻法、こちらも正攻法だったら勝負がつかない。では、勝敗はどこでつくかと言うと、奇で勝つんだ、というのが「正で接して奇で勝つ」という言葉の意味です。

だから、まず正攻法、すなわち定石を学ばなければいけません。マーケティングをきちんと行うなど、ビジネスの定石を踏まえてやれば、だいたい勝てます。

商品やマーケットの成熟度合い、あるいは地域の特性などをきちんと把握したうえで戦っていけば、まず負けることはありません。

しかし、だんだんとマーケットが成熟して過当競争になってきたら、生き残りが難しくなってきます。するとどうなるかと言うと、値段が安くてサービスがよくて品質のいいものが勝ち残っていくわけです。

生き残り、勝ち残り作戦になったときは守りが堅いほうが勝つんですけれども、守るだけではじり貧ですから、どうするのかと考えたとき、そこに何かウルトラCが要るわけですね、ウルトラCが。

では、ウルトラCはどこにあるのかと言ったら、別の業界で成功しているパターンです。

たとえば、書店業界とか、自動車業界とか、おもちゃ業界とか、食肉業界とか、農業とか、漁業とか、航空機業界とか、どこか違う業界で成功している一つの定石があります。

その定石を持ってくると、その業界では初めてのことだから成功する場合が多いわけです。

ランチェスター戦略の一番店志向とは

有名なランチェスター戦略というのがあります。

第二次世界大戦のとき、アメリカ軍はこれを取り入れて、日本軍やドイツ軍と戦ったのですが、たとえば、日本の零戦一機に対して必ず三機で立ち向かう、という戦い方をやったわけです。零戦がどんなにすぐれた機能を持ち、かつまた、どれだけ優秀なパイロットが乗っていても、三対一なら絶対に三が勝つ。

二対一なら一が勝つ場合もありますけれど、戦闘機三機と一機だったら絶対に三機が勝つ。

そういう論理にしたがって、必ず三機で一チームを編成して零戦に対抗したんです、アメリカ軍は。

この戦のやり方は、弱いものからたたき落としていくというものですけれど一番と二番の差と、二番と三番の差は、両方ともたった一つしか違いません。

一つしか違わないんですけれど、圧倒的に一番と二番の差のほうが大きいんです。人々はやはり、一番いい商品・サービス、一番強い商品・サービス、一番評判のいい商品・サービスを手に入れようとするわけです。

業界で二番目のところや三番目のところより、何と言っても一番を選ぶんです。

だから、一番はますます繁栄し、二番は後塵を拝し、三番、四番はもう全然ダメになる。どんなに小さな業界であっても、一番にはそれだけの重さがある。ということから出てきたのが一番店志向です。

これはもう、全部ランチェスタ戦略の応用です。アメリカは軍隊にランチェスター戦略を応用しましたが、日本ではマーケティングに応用したんです。

イトーヨーカドーなどのスーパーやデパートがやっているのがそうです。たとえば、千葉市とか船橋市などにはデパートがいくつもありますけれど、どこもだいたい赤字だと言われています。人口が多いからというので、いくつもいくつも進出し、乱立状態になって過当競争に陥ったから、どのデパートさんも赤字状態で、あまり儲かっていません。

これとまったく反対なのが、たとえば福生市だとか東京都北区の赤羽だとか、それから大田区蒲田とか、まあ、それはどこでもいいですけれど、ある程度の人口があるけれども、そんなに密集していないという所。

関東周辺でしたら群馬県の太田市とか千葉県の袖ヶ浦市とかは、千葉市や船橋市ほどたくさん人が住んでいないし、駅もそれほど大きくない所。

そういうちょっと辺鄙な所は、さほど人口が多くない。つまり、マーケットが小さいわけです。

そういう所の駅の真ん前にでかいお店・・・・・・これを一番店と言いますけれど、これを建てたらどうなるかと言うと、もう人口が少なくてマーケットも小さいのにあんなでっかいのを建てられたら、自分たちが新規参入しても到底成功できっこない、ということで、二番手、三番手が来ないわけです。

これが一番店志向というものです。

だから、わりと辺鄙な所に大きなスーパーがあったりするでしょう。東京都杉並区の西荻窪には西友がありますけども、ほかにはありません。西荻窪に西友と同規模のスーパーがもう一店舗あったら、両方が食い合いでダメになると、考えるから、ほかの業者は進出してこない。

だから、西友が繁盛するわけです。 1 ということは、人口が少なくてマーケットが小さい所にでかいのをガーンと建てたらば、もうそれ一つで全部カバーできる。

新規参入しても成功しないのははっきりしている。だから、二番手、三番手がやってこない。来ても、どうダメになるのは目に見えているし、一番手よりでかい店舗を建てたところで、両方がダメになるのは分かっているから、絶対に出てこないんです。

これが一番店志向です。大都会、あるいは地方の中心都市からはずれた小さなマーケットにでかいのを建てたら、もうそれで安定的な収入が確保できて繁盛する、と。

中途半端に大きいと、いろいろなのが進出してきて食い合いになってダメなので、とにかくでかいのをドーンと建てる、と。

そういう意味で、千葉なんかもう失敗ですね。横浜もそうです。まあ新宿と銀座あたりは、マーケットがものすごく大きいからいくつあっても大丈夫だどこも繁盛しているんですけれど、それほど大きくないんだけれど、そこそこ大きいという所にいくつも進出して乱立状態になったら、みんなダメになる。

ならば、どこに出店するのか、と。もちろん、人口があまり多くない所とか、もうほとんど人がいないような所に出店しても、それは意味がありません。

五、六人しかいない所にでかい店舗をつくったってダメに決まっています。それに一番店志向というのは、ある程度の商圏の駅の前、それを狙って作戦を立てていく。

これが定石です。

一番は二番に比べて圧倒的に有利なんだという一番店志向。このやり方でデパートあるいはスーパーなんかやっています。イトーヨカドーもやっているし、デパートもそういうやり方を真似するようになっています。

塾でも予備校でもやっています。東進スクールさんなんかも、それほど人口の多くない所に一番でっかいのをつくっています。

そうしたらもう、ほかの塾は参入してこないんです。国立学院予備校なんていうのも昔、そういうふうにやっていました。どこに分校をつくるのかとなったとき、流通業界のやり方を応用するわけです。

美容院が一番多いのは、西荻窪と荻窪らしいです。聞いた話では、日本一多いということです。

だいたい、西荻窪のあの周辺で三百軒ぐらいあるらしいですね。

そんなにあってもしようがないと思うんですけど、荻窪、西荻窪、それから吉祥寺あたりには、だいたい三百軒以上あって、全国で最も美容院が多い所だ、ということです。

だから、しょっちゅう潰れたり、新しい店ができたりしているんですが、このあたりだったらいいんじゃないだろうかと誰もが思うんでしょうね。

行き詰まったら、度胸と根性でトップへ行け

絶世の美女で、スタイルもよくて教養がある女性には、きっともう相手がいるんじゃないかと思って誰も誘わないのと同じです。

松坂慶子さんがああいう男性となぜ結婚したのか。

みんなが不思議に思っているらしいのですが、本人曰く、「私に初めてプロポーズした人だから」と。要するに、誰も松坂慶子さんにプロポーズしなかったんです。

映画監督と同棲していたといううわさもありましたが、真正面からプロポーズしたのは、いまの旦那さんが初めてだということです。

だから何かこう、そんなに美人じゃないんだけども、かわいくてどこかセクシーな女性だったら、もう男性が殺到しますね。モテモテ状態になります。

この人なら、ほかに男がいないだろうとみんなが思うからでしょうが、そこへ集中するんです。

ということは、モテようと思ったら、あえて少し不美人にして、あるいは普通の顔にして、どこかセクシーっぽくしたらいいのかもしれませんね。

そうしたら、うわーっと男性が寄って来ることも考えられます。

圧倒的に何拍子も揃った美人のところには男が近寄らないんです。よほどの冒険家か、よほど向こう見ずで、おのれをわきまえないような人間しか行かないんです(笑)。

それを考えたら、何拍子も揃った美女はかわいそうですね。いまこの話をお聞きになった皆さんは、絶世の美女がいたら、とりあえず誘わなきゃと思うんじゃないでしょうか(笑)。

ということで、一流の店とか一流の企業にはもうすでに業者さんが入っているに違いない、こんな一流のトップ企業に自分たちのような小さな会社が行ってもダメじゃないか、誰しもそう思うんですけれど、私の経験上、ナンバーワンは無風状態です。

それぞれ業界のトップと言われるところには全部、営業に行きました。すると皆さん、「いやあ、実はこういうのが欲しかったんです」と言ってくれるんです。

三菱商事さんとも本当に仲よしですけれど、やはり一流どころの皆さんはみな余裕があります。

一人当たりの売り上げというノルマがあるから、一定の利益が見込めるもの以外は儲かると分かっていても触らないんです。

費用効率を考えますから、一定以上の利益のスケールがないものは最初から取り扱わないんです。

そうすると、儲かるけれどもスケールのないものは扱わない分だけ、こぼれ落ちるわけです。それを頂戴しに行っていたんです。

医療器械の中近東への輸出なんていう仕事がありまして、私のところに「こんなのやりませんか」という話が来たんです。

三菱商事第三資材部はビーバーエアコンをやっているものだから、「ウチはそういう話を持ってこられてもやりません。

お宅でお願いできませんか。お願いしますよ」「ありがとうございます」と。

三菱商事さんにとって小さい会社は重宝だから、いくらでも小さくていい話がこぼれ落ちてくるんです。

「いや、ウチも助かりますよ」と言って、コバンザメみたいに仕事をもらってきたわけです。

ナンバーワンは本当に余裕があります。しかし、ナンバースリーとかナンバーフォーとなると、もう目が血走っています。

一位は無風状態。だから、行くんならば、とにかく一番でかいところから行くべきです。行けば案外、歓迎してくれるものです。

ただし、関東系の企業は、「あっ、ウチは要らない」とあっさり断ってきます。

それに対して、名古屋とか伊勢、それから、関西系、四国系、広島系の企業は、それなりにやりにくい面もありますが、「とりあえずやってみようかな」と柔軟に対応してくれます。とりあえず新しいものをやってみようと思うんです。

関東の場合は、要る要らないがはっきりしていて、「ウチはこれ要らない」「これは欲しい」と実に明確です。

だから関西系にやられてしまうとも言えます。見たことも聞いたこともないようなものでも、ひょっとしたらいいものかもしれないから、とりあえずやってみればいいのに、関東系の企業はやろうとしません。

本社が関西にある一流どころは、われわれ中小企業が攻め込んで行っても話を聞いてくれます。

うまみがないなと思ったらパッと捨てられますけども、とりあえず噛んでみよう、と。

噛んでみておいしくなかったら外してきます。関東系は、パッと見て不味そうなら要らない、うまそうなら要る、と。

関西は、うまそうでも不味そうでもとりあえず噛んでみる。おいしくないなと思ったらサッと手を引くけれども、とりあえず噛みつくんです。その噛んでいる間に栄養分とか甘さを入れると、「うーん」と言って飲み込んでくれる。それで釣れるわけですね。

ですから、トップ企業にはとりあえず行くべきなんです。というより、絶対に行くべきです。トップは案外無風なんです。ライバルはどこも来ません。

ですから、度胸と根性で飛び込んでいけば、「いやあ、こんなのがないかなと思って探していたところなんだよ」と歓迎してくれます。

どの業者さんもトップにはなかなか行かないものです。トップと聞いただけで腰が引けて、行こうとしません。

トップ以外のほどほどの会社なら行きやすいので、有象無象がうわっと殺到するんです。

昔から「行き詰まったらトップへ行け」と言います。トップは無風状態です。

「待ってました」とばかりに歓迎してくれます。人もいいし、余裕を持っているから、小さいところであればあるほどかわいがってくれます。

そうやってトップを落としたら、トップと仕事をしたという実績ができるから、その実績を携えて、業界の二位、三位、四位、五位のところへ行けば、あとは簡単です。実績があるから、二位、三位、四位、五位へは簡単に行けるんです。

ところが、会社が小さいと、とかく根性と度胸まで小さくなりがちなんです。

だから、トップを敬遠してほどほどのところに行きたくなるんですけれど、それは戦略として間違っています。

「カニは甲羅に似せて穴を掘る」とか言いますでしょう。ヤドカリも自分に合ったような家を探すんですけれども、それではビジネスマンとか会社の経営者はダメですね。

とてつもないような希有壮大なロマンを持って、堂々と割り込んでいかなければいけません。

すると、相手が勝手に、「すごい会社なんじゃないか」と思ってくれるんです。

営業力でチャンスをつかめ

中小企業はやはり、トップを攻め落とす営業力でチャンスをつかんでいくんです。自分の会社は小さいんだから、せめて大手さんの胸を借りなかったら、永遠に小さいままで終わってしまいます。

自分は小さいんだから、大きいところの胸を借りて、その胸が大きい分だけ、AカップからBカップ、BカップからCカップへと大きくしていただく(笑)。

分かりやすいたとえで言うならば、そういうことです。

大きな胸を借りるには、やはり度胸です。その度胸はどこから湧いてくるかというと、私たちの後ろについている神様は宇宙の神様だからです。

銀河系で一番の神様がついているのに、臆して二番、三番、四番ばかりに行っていたら、御魂の格に合わないでしょう。

御魂の格に合うところに行かないと神様に申しわけない、ということで、トップばかりを攻めていくんです。

いつも私が先頭を切って営業に行って、手本を示してきました。特に、会社を立ち上げた当初の社員には、手取り足取り教えてきました。

「こういうふうに話を持っていくと、必ずうまくいくから」

「あっ、そうですか」

「そういうもんだよ、行ってごらん」

「はい、分かりました」

そして営業に出て行き、帰ってきたら、

「どうだった?」

「はい、おっしゃったとおりになりました」

「そうだろ。そういうもんなんだよ。だから、次からもこういうふうにやるんだよ」

と。そうやって次々次々と攻め落としていくと、必ずうまくいくんです。

研でもそうですね。ハンチントンさんでも、アルビン・トフラーさんでも、マーガレット・サッチャーさんでも誰でも、菱研でシンポジウムを開催するのにお呼びしたのは、みんな世界のトップばかりです。

そういうトップレベルの人を呼ぶにはどうしたらいいのか。それにはまず、ノーベル平和賞を受賞した人からお呼びしよう、と。

そこで、キッシンジャーさんを呼び、次にゴルバチョフさんを呼びました。

それから、世界の三大社会学者もお呼びしました。アルビン・トフラーさん、それからP・F・ドラッカーさん、そしてダニエル・ベルさん。その中で一番仲よくなったのはダニエル・ベルさんです。

この三人は、手紙一つで何もないところからお呼びしました。それを聞いた人は皆さん驚かれますが、そんなのは私にとって、どうってことありません。

何もないところから真正面からぶつかっていって、トップを攻め落とすんだ、と。

トップは無風状態です。余裕があって、性格のいい方が多いんです。

だから、喜んで来てくださいます。サッチャーさんなんかは、三回も来てくださいました。トップを攻め落とせるかどうかは、結局、度胸と根性の差だけなんです。

そういうふうにやるんだよと、スタッフには常に教えているのですけれど、やり方さえ覚えれば、誰にだってできるんです。

ああ、こうやればいいんだ、と。自分は小さいんだから、大きいところの胸を借りる。トップは無風状態で、人間としてもいい方が多い。意外に誰も行っていないんです。

トップを攻め落とす原則を会得せよ

一度トップを落とす手法を会得した人は、次から次へとその手法でやっていけるわけです。

私も一回目はドキドキしましたけれども、それを会得してからは、次々と会社を落としていきました。

大学卒業後に入社した建築会社のときにそれが分かったから、自分が会社をつくったときにも全部、トップを狙い撃ちです。そうやって仕入れた玉がよかったら、次からはどこへでも入っていけます。

何もないゼロから会社を立ち上げて成功するにはやはり、そういう智恵が必要ですし、戦略が要ります。定石は定石であるんですけれど、定石を超えたこのウルトラCの法則、これを身につけなければ成功はおほつきません。

ハンニバルがアルプス越えをしたときには敵も驚くし、こちらの兵隊も筋力が養われるし、「俺はアルプスを越えたんだ」という自信があるから圧倒的に強くなる。これをナポレオンが応用しているわけです。

ですから、われわれ経営者は別の業界で成功しているパターンを学べばいいんです。一番店志向のランチェスター戦略。

アメリカ軍の戦争のやり方をデバート、スーパーの流通業界が応用し、さらにまた塾が応用し、これをまた今度、書店でも応用しています。

一番店志向で、駅前に一番でかい書店がガーンと建ったら、あとはもう書店が来ない。書店さんもランチェスター戦略。悪魔の法とも言われておりますけれど、この法則性を知っていれば他の業種に応用できます。

ですから、先ほど言った「正で接して奇で勝つ」の奇とは奇襲ではないのです。

あくまでも定石に則りながら正攻法で攻めていって、最後の決め手が奇、すなわちウルトラCなんだ、と。そのウルトラCを生み出すにはひらめきも必要ですけれど、どこかの別の業界で成功しているパターンを応用する。そうしたら、その業界では初めてのことだから勝つわけです。

とにかくトップ企業と取り引きを

中小企業はとにかく、定石をベースにしながら正攻法で攻めていって、ウルトラCで勝つ。トップは意外に無風なんです。

その無風状態にあるトップを攻め落とすと、次々と攻め落とせる。業界トップの企業を落とせば、それ以下は全部オーケーになるんです。

では、どうやったら一発目にトップを落とすことができるのか。これが問題ですけれど、それにはもう度胸と根性だけなんです。

思い切りだけなんですよ。度胸と根性で当たったら、意外にうまくいくものなんです。そこをうまくやると実績ができるから、二位、三位はバタバタバタッと落とせます。

まあ一つのヒントです。ぜひ皆さんもやってみてください。そのチャレンジを思い切ってやってみると、大きな飛躍のチャンスがつかめます。

取引金額は少なくてもいいんです。しかし、たとえ金額が少なくても、そこと取り引きしているということが二番目、三番目、四番目のところを攻撃していくときの武器になる。これを考えなければいけません。

こっちではツバメの尻尾しか切れなくても、返す刀でスズメを落とせばいい。トップは尻尾をかするだけでもいいんです。

取り引きは取り引きですからね。そうやってトップと取り引きを開始すると、二位、三位、四位、五位は楽々と落とせるんです。

ですから、たとえ金額は小さくても、とにもかくにも業界のトップ企業と取り引きを開始する。これが非常に大事なのです。

そうやって、中小企業は何もないゼロからのし上がっていくのです。私もそうでした。時計の業界でもおもちゃの業界でもまったく初めてでしたけれども、トップに入り込むことで業績を伸ばしていきました。

予備校のほうは二十六歳からやっていますけれど、そういうふうにしてあらゆるところに攻め込んでいったわけです。

もちろん、まずは正攻法ですから、しっかりと定石を勉強します。しかし、定石だけでは勝てません。やはりウルトラCが要るわけです。

そのウルトラC はどうするのか。私だったら、他の業種でやっているノウハウを応用します。それを皆さん、一つのヒントにしていただきたいと思います。

田中角栄に学べ

ところで皆さん、私の手を見てください。手が汚れているでしょう。実は今日、鹿嶋神業の◎の神降臨祭で「私が作ったひまわり銀河」という絵をパステルで描いてきまして、それで手が汚れているわけです。さらに、この講義の前に、水墨画で田中角栄さんにそっくりの「角栄達摩」という絵を描きました。

皆さんのお手元にお配りしたのはそのコピーです。

田中角栄さんはいっぱい劫を積んで、新潟の地震の元をつくったんですが、何もないゼロから成功したそのバイタリティーと粘りを、この達摩さんで表現しているわけです。

田中角栄さんにそっくりの「角栄達摩」。本当はもう一つ、「地獄を恐れず生き貫け」という言葉が書いてあるんですけれど、コピーだと字が入らないもんだから、もう一回、コピー用に書き直しました。

田中角栄さんのように、何もないところからのし上がって首相になっていくには、度胸と根性とバイタリティーがあって、さらに図々しくなければいけません。

そうでなければ、政界のトップには昇り詰められません。

ところが角栄さんは、それだけではなく、人情の機微をよく理解していて、知り合いのお葬式があったら一番大きなしきみや花輪をおくり、必ず葬儀に行っていました。

行くだけでなく、弔辞を読み、葬儀委員長をし、火葬場まで行って骨も拾ってあげたと言われております。だから、みんな角栄さんのファンだったんです。

結婚式でも積極的に参列し、出たら必ず気の利いたスピーチをする。それくらい、冠婚葬祭を大事にしたんです。だから選挙に強かった。

その選挙に強い伝統というか、体質を引いているから、田中真紀子さんも選挙に強いわけです。それはやはり、人情の機微を理解していたからです。

田中角栄さんは吃音だったんです。それで、吃音を直すために一生懸命、浪曲を習い、さらにどこかの専門学校の夜間部に通って勉強して、あれだけの会社をつくっていったんです。

田中角栄さんが会社を創設したのは二十六歳のときです。そして二十八歳の若さで初当選を果たしました。最年少の衆議院議員です。

やはりひと味もふた味も違うし、人に負けていない。もちろん、天才的な頭脳の持ち主ではありますけれども、苦労の中から身を起こした人だから、人の苦労を知っています。

大変な苦労をすると、苦労に負けて卑屈になる人が多いんですけれど、田中角栄さんは苦労に負けることなく乗り越えていく度胸があったんです。

だから、コンピューター付きのブルドーザーと呼ばれたりしたわけです。

国政を預かる立場から言えば、国全体のために政治を行わなければいけないんですけれど、新潟の選挙民のために高速道路をつくったり、新幹線を通したりして、まあ、功罪相半ばするところがあります。けれども、会社の経営者だったら、それぐらいでなければいけません。

政治家は公的な立場ですから、いろいろと制約がありますが、ビジネスマンは最低限のルールと商道徳を守りながらも、ライバル同士、互いに激しく競争をしていかなければなりません。

ですから、田中角栄さんのように度胸と根性で次々とチャレンジしていって、結果的に従業員に喜んでもらい、取引先にも納得してもらえば、それでいいんです。

田中角栄というと、見習うべきでないとか、いや見習うべきだとか、いろいろ議論が分かれるところですが、それは政治家の考えることであって、ビジネスマンにとっては、教科書にすべきような人ですね。

本当は、鯉を飼っていた自宅の池を埋めなければよかったんです。金龍神が住んでいましたから。

それにしても、人間的に温かく、魅力に溢れていました。そういう人間としての温かさを感じたから、地元の人たちも議員たちもついていったのであって、おなかの奥はどうだったか分かりませんけれど、温かみを感じさせた人でした。

中小企業の社長も田中角栄さんのようでなければなりません。そのためには、言葉や態度に人間の温かさ、社長の温かさというものを従業員が感じるようなパフォーマンスが要ります。

あるいは、従業員一人ひとりの結婚記念日や誕生日、卒業した学校のこと、奥さんのこと、子どものことなどを全部覚えていて、何かあったら声をかけたりプレゼントしてあげたりすると、温かみを感じますね、従業員は。

田中角栄さんも、みんな記憶していたと言われています。

奥さんとの間で何か問題があったり、子どものことで問題が起きたりしたら、必ず「どうなん「だ?」と声をかけたということです。家庭の事情から実家の親の事情から子どものことまで全部覚えていてくれて、ちょっとしたことでもすぐに声をかけてくれる。

そういう気配り。そこに従業員とか周りの人が温かさを感じるわけですね。

だから、従業員の結婚記念日や誕生日、それから出身地、家庭の事情等をよく聞いておいて、言葉の端々に思いやりと温かみが感じられるようにしなければいけません。

何とかしてあげよう、一肌も二肌も脱いであげようという面倒見のよさ。従業員はそこに温かさを感じるから、一生懸命ついてきて会社のために尽くしてくれるわけです。

この細やかさがないと、中小企業では人が居ついてくれません。

角栄さんはその温かさがあった人だったから、何もないところから建築会社をつくっても成功し、政治家になってもトップまで昇り詰めることができたんです。

いろいろな苦労を乗り越えて、周りのみんなが温かさを感じさせるパフォーマンスができるようになったことを考えたら、会社の経営者、とくに中小企業の経営者は、人情の機微に通じ、従業員に温かみを感じさせるような人柄であることが絶対条件になります。

私も、何もないゼロからつくってきた人間ですから、人のプロフィールを聞くと、一発で覚えます。

いまでも名前を聞けば、どこの大学の何学部を出ていて、大学時代には何をしていたかとか、高校は何高校で、高校時代にはどういうことがあったとか、お父さんやお母さんがどうかということをすぐに思い出します。だいたい、一回聞くと覚えています。

ものすごい記憶力だと言われますが、人の話を聞いて、その人のプロフィールを耳にすると、もうほぼ完璧に覚えます。

でも、覚えない人もいるんです。何回聞いても、顔は覚えるけどもプロフィールはなかなか覚えられない。

そういう人もいます。英単語でも全部覚えられるわけではないし、イタリア語でもフランス語でも何でも覚えられるわけではありません。

それだけ、言葉というものは覚えにくいものなのですけれど、だいたい一回聞けば、その人のプロフィールは頭に入ります。

それというのも、二十五歳からそうやって従業員の面倒を見てきたからで、新しく従業員を雇うときはどんな子なんだろうか、と。それだけの好奇心と興味と関心を持って聞くし、履歴書を見るから「ああ、そうか」と、一発で頭に入るわけです。

そして、問題があったときには直接電話をして、解決するように努力してあげる。

だから、温かみのあるように見える。というより、本当に温かい人間なんですけれどね、私は。

温かい人間なんだけども、温かさが感じられるような言葉とか、細々としたことに対する面倒見のよさがないと、冷たく受け取られることも、もちろんあるわけです。

皆さんもきっと温かい人だと思いますけれど、どのようにしたら温かさを感じさせることができるのか。

それを考えないと、人はなかなかついてきません。田中角栄さんという人は、そういうところが際立っていたんです。

ですから、前にも講義しましたけど、従業員の冠婚葬祭は絶対に出なければいけません。

とくに、結婚式よりも葬儀です。自分の身内が亡くなったときの身を切るような寂しさ、孤独感を味わっているときに見舞ってくれる人は、どんな人であろうとありがたいものです。

だから、従業員の身内に不幸があったときには、「ああ、そう」じゃなくて、最大限のことをやってあげることです。人が悲しいとき、苦しいとき、一番つらいときに親身になってあげることです。

人は誰でもそこに一番の温かさを感じるわけです。田中角栄さんも冠婚葬祭は欠かさず出席したそうですが、とくに葬儀のほうを大事にしたと言われております。

人が悲しんでいるとき、苦しんでいるときには力になってあげなければいけないし、支えになってあげないといけません。

離婚したあと、振られたあとに力になってあげると、温かさを感じるわけです。

温かさを感じる人には本音を言うし、本音を言ってくれたら真心からの対応をしてあげることもできます。

だから、心がすっきりして一生懸命に働いてくれるし、経営者にもついてきてくれます。

そういうことをもう二十八年もやっています。いまでは従業員が四百四十人ぐらいになりましたけれども、だいたいみんなのプロフィールは頭に入っています。

もちろん、社員だけではありません。エンゼル会の皆さんでも、この人はどんな人なんだろうかと興味を持って話を聞くから、一度聞いたら、プロフィールはほぼ頭に入ります。

前にも言いましたけれども、理髪店とか美容院の人は、お客さんとよく話をしますね。

そうやって話をしているうちに、だいたい三百人ぐらいのプロフィールを覚えるらしいです。

私としては、静かに髪を切って欲しい、話しかけないでくれ、と言いたいんですけれど、

「お客さん、これからどこへ行くの?」

(どこへ行こうと勝手じゃないか)

「旅行、どこへ行くんですか」

(普通の人が行かない所に行くんだよ)(笑)

「何の仕事をしてらっしゃるの?」

(そんなこと、ひと言やふた言で言えるか)(笑)

「でも、藤岡弘さんなんでしょう」

「いや、違いますけど」

「えっ、藤岡弘、さんじゃないんですか」

「藤岡弘、じゃないですけども」

「てっきり藤岡弘さんが来たんだと、みんな思っていたんですよ」

「いや、違いますよ。深見東州と言います」

「えっ」

と。

そんなに藤岡弘、さんに似てるのかなあと思うんですけれど、美容院ではそう言われました。

結局、そういうふうに話をすることで覚えているんですね。だいたい一人が三百人ぐらい覚えているらしいです。ということは、従業員が十人いると三千人分、頭に入っていることになります。

皆さん、三百人も社員がいますか。美容院では一人が三百人覚えるというんですから、少なくとも社員のことは全部、頭に入れておかなければいけませんね。

それから、お客さんが三百人ぐらいいたら、その三百人すべてのお客さんのプロフィールを頭に入れておいて話をすると心の交流ができます。

三百人ぐらいならどうってことありません。神人合一の道を目指す私たちは三万人ぐらい覚えなければダメですね。

そう思って人の話をじっくりと聞いて、その人のプロフィールを覚える努力をしていると、いつの間にか一回聞くと覚えるようになります。私がそうやって覚えてきたのですから、間違いありません。

そういうことで、この「角栄達摩」というのは、政治家としてはすごいんだけれども、劫を積んでます、公私混同して。

でも、ビジネスマンは私的立場だからそれでいいわけです。見習うべきところはたくさんありますね。

この「角栄達摩」の絵が、「まあ、物価まだまだ上がりますよ。ああ皆さん、あの橋はわしがつくったんじゃ。この電車は私が引いたんじゃ」と言っていますね。

二次会では、同じ声で真紀子さんをやってみます。

そして、二次会に参加する人には、さらに次の絵があります。藤山寛美さんの絵を二次会の席でお渡しいたします。

ということで、一次会はこのへんにいたしましょう。

まあ、そういうことで皆さん、省エネで大変失礼いたしました。どうもありがとうございました。(拍手)