中小企業の経営者 かくあるべし 深見所長講演録10(Vol.4)

創意工夫と新しいものに対するチャレンジへ(平成六年) ボイスジャーナルVOL.15より

この不況の時期になりますと、会社経営もなかなか思いどおりにいきません。そのために、どこもかしこもリストラ一色で、とにかく経費を抑えることで、この難局を乗り越えようとする経営者が多いですね。

で、いつも言うんですよ。新聞を見るからいけないんだ、銀行の言うことを聞くからいけないんだ、証券会社の言うことを聞くからいけないんだ、と。

これはどういうことかといいますと、銀行や証券会社の人間の話を聞いたり、あるいは新聞を読んだりすると、リストラがどうのこうのという話が飛び込んできますよね。

でもそれは、一部上場、二部上場の大きな会社に当てはまることであって、中小企業はリストラもヘチマもありません。

そんな流行の言葉に絶対、騙されではダメですよ。

銀行なんかよく言います、「とかくリストラが大事だ」と。リストラクチャリング、再構築ということは必要ですけど、従業員が二十人か三十人か、まあ四十人、五十人の規模でも、リストラもヘチマもない。そんな言葉に踊らされてはいけません。

そこで皆さん、考えていただきたいんですが、従業員が三十人とか五十人という会社、まあ、どんな会社でもそうですけれども、売上が二割落ちたら、利益は必ず五十パーセント以下、半分以下になりますね。売上が三割落ちたら、必ず赤字です。

だから、売上が三割落ちたときに赤字になるのを防ぐには、経費を削減し、生産効率をより高めていかなければいけないわけです。

収益を確保するためには、売上全体、マーケット全体がいまみたいに冷え込んでいるときは、そうするしかないわけです。

もちろん、後ろ向きのリストラクチャリングではなく、より創造的なリストラクチャリング、つまり将来的に会社をよりよく発展させるために、いまリストラをやるんだ、と考えている企業も多いですし、そういうことが新聞とか雑誌に載っているし、銀行や証券会社の人間がテレビでよく言っていますよね。

しかし、中小企業がそんなことを考えたら絶対に潰れます。リストラクチャリングなんか考えたら絶対潰れます。まず赤字が一年、二年と続くと、もう、資産の持ちこたえができないと思いますね。

で、資産を持たなきゃいかん、ということもよく言われますよね。

不動産と有価証券を持て、と。いっとき前は不動産でしたけども。これもですね、いわゆる大企業でも中小企業でも、だいたい三年から四年、赤字が続きますと、資産を処分してつないだとしても必ず倒産します。

それから、大企業の場合でも、だいたい六年くらい赤字が続きますとその赤字幅にもよるんですけど、トントンからちょっと赤字というのなら話は別かもしれませんけれど、それでも、いわゆる一つの指標として、六年赤字が続くと、どんなに資産を持っている会社でも潰れます。

つまり、資産を持つということは、赤字が続いても二、三年の間を持ちこたえるために備蓄することにほかならないわけです。

それよりも大切なのは、いかに売上を上げ、利益を上げつづけるかという、創造的、発展的な努力であって、それを継続していかなければ、先が見えているわけです。

ところが、新聞を見たり雑誌を見たり、テレビで銀行や証券会社の人間の言うことを聞いていると、自分もリストラクチャリングしなければ、という気分になってしまう。

つまり、どうなるかというと、消極策をとるようになってしまうわけです。守りを固めるとか、それから備蓄するとか、控えるとかね。

じゃあ、中小企業の皆さんは、守りなんか固められるんですか。私から言わせれば、守りなんか固めたら必ず会社は潰れますよ。

会社というのはもう、攻撃あるのみです。とくに中小企業は、勝気で積極的に、いかにすれば売上を上げることができるか、いかにすれば顧客を広げられるか、いかにすれば利益率を上げることができるか、いかにすれば早く現金回収ができるか、これをつねに考えているようでなければいけません。とにかく、発展と攻撃と向上と創造しかないんです。

流動資金がない場合はどうしたらいいかというと、お金をかけずにいかにし売上を上げるのか。資金をあんまり投下しないで、どうしたら売上が上がるのか。

これを考えればいいんです。その売上のアップが先行し、利益率が先行し、攻撃が先行していて、そのうえで要らないところのお金を削減していこうというのなら、まだわかりますよ。

しかし、不況のときに消極策に出たら、会社は絶対に潰れます。

これは自然界の一つの掟です。神様が定期的に大不況をつくって、大自然に適合できないような弱い体質の会社を淘汰していくという、一つの掟ですね。

ライオンはシマウマか何かの群れを攻撃して食べてしまうわけですけども、あのライオンがいるおかげで、自然の生態系のバランスが保たれているんです。

あるとき、シマウマとか弱い動物がかわいそうだからということで、欧米人がライオンを捕獲して、か弱い動物を守ろうとしたことがあったらしいです。

その結果、さぞかし弱い動物たちが繁栄しているだろうと思って見てみたら、逆に森は荒廃し、どの種もみんな絶滅していた、と。

ライオンがいなくなってしまったものだから、シマウマなどがどんどんどんどん繁殖して、草原の草を食べ尽くしてしまったんです。

それまでは、ライオンに食べられることで弱い体質の種が間引きされていたのですが、あまりにも繁殖しすぎて草を食べ尽くし絶滅してしまったわけです。

ライオンに食べられることで弱いものが淘汰されていって、しかも、適度な緊張感をいつも持っていて、そして頑張っているものだから、種がずっと存続し、自然の生態系のバランスが見事に調整されておった。

ところが、か弱い動物がかわいそうだからと、人間が中途半端な慈悲の心を持ってライオン狩りをしたら、結局、みんな絶滅してしまった。

人間が余計なお世話をしたために、こうなってしまったわけです。

この不況というのはそういう感じですね。

どんなに不況であっても、攻撃力、創作力、発展力、そういうものを身につけている人は、やっぱり切り開いていく。弥栄えていく気迫のない経営をしている会社を淘汰していくという、一つの怖い、しかしまた考えてみれば、大慈大悲の、観音様のような大愛ですよ。

やっぱり、天地の一つの大愛だと思うし、試練だと思うわけです。

それを超えていくだけの努力と資質とエネルギーを持ったらいいわけですよね。

中小企業の経営者が考えなければならないのは、売上をいかに上げるか、利益をいかに上げるかであって、もう攻撃あるのみです。

リストラクチャリングがどうのこうのという話を聞いたり、記事を読んだりして、中途半端な知識を持って消極策に出たら、会社なんかすぐ潰れてしまいますよ。

だから皆さん、この不況の時期、くれぐれも消極策などを考えることのないようにしていただきたい。私も、次々次々と新しいものを打ち出し、予備校も、今度は分校も出そうと考えています。

そういう仕事をしながら、ご神業もしているわけなんですけども、一生懸命に作戦を練っていかないと、すぐにやられますね。

それを考えるから、次々次々と、いまの自分たちの持っている人材とノウハウと資金力でやれる次のステップということで攻撃していくわけです。不況のときには不況のときの対処法がありますから。

私の場合、予備校にしても商社にしても、あらゆるものが不況のときにスタートしています。

不況のときからやり始めたから、不況なんかもうナチュラルな感じですけれど、不況のときに参入して頑張れば、好景気になったら、そのままうまくいきます。

景気のいいときにやり始めた事業は、当面うまくいくかもしれませんが、景気が悪くなったら売上がガターンと落ちて、どう対処していいかわからなくなります。

その点、不況のときに新しいものを始めたら、たくましさというか根性というか、上手な経営法が身につきますね。

しかしこれ、気をつけなきゃならないのは、不況のときにやり始めたら、のどから手が出るほど売上が欲しいものですから、つい無理をしてしまって、詐欺に引っかかったり、まゆつばものに手を出したりしやすいんです。

その点にはくれぐれも気をつけなければなりませんね。そのためには、自分の持っているノウハウと人材と資金力の枠内で、手堅くやっていく。

とにかく、一歩前進、二歩前進、三歩前進という形の新規参入に徹するべきです。

それから、いい人たちのお誘いと手堅いところの縁で結ばれたものは、これはまさに神仏の導きか、自分の運で開いたもので、「ああ、こちらの方向へ行けばいいんだな」ということがわかると思うんですが、それを何度も何度も確かめて確認していかないと、不況のときの参入というのは非常に難しいです。

しかし、大きな企業が直にやったのではとても採算が取れない分野があり、ここをどうにかならないかということで、出ていくチャンスが私にもありました。

時計が五割、六割、七割引なんか当たり前で、街の時計屋さんがバタバタと倒れたときに、ちっちゃなところでも「何とかお願いいたします」というこ

とで、シチズンの代理店になるチャンスをもらったわけですね。しかし市場はもう、ほとんど埋まっちゃっていましたから、あとから参入した者はやることがないわけですよ。

だからこそ、ちっちゃなところにも頼みに来るわけですね。そこで私が考えたのは、直接バーゲンで売るという、まあ、香具師か露天商みたいなものですよ。

「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ」の安売りです。それで大成功してから、シチズンさんからグーンと安い掛け率、長い支払条件納入してもらうことができ、その子会社のCBM(シチズン・ビジネス・マシーラ)、 QQと書いてある時計ですけども、二千社だったかな、CBMの取引会社のなかで、ベストテンに入りましたからね、そのバーゲンで。売上ベストテンの業者になりましたよ。

だからそれはもう、新規参入したときに考えましたよ。人がやったことのないことをしなければ勝てないですから、手間隙、労力を惜しまずに、とにかくバーゲン屋に徹して、安く売って数値を上げる、と。

そのチャンスにパッと上手に入り込んだから今日の成功があるわけです。

いまでは、すべてが神様の尊き試練だったと思って感謝していますけれども、不況の時代からのスタートだったからもう、何倍も工夫して、何倍も考えて、何倍も努力しました。そうやって乗り越えてきたから、不況になったらどこかワクワクしてくるんですよ。

そういうことで、新規参入には新規参入なりのチャンスがありますから、そういうときには、安心できるところなのか、ちゃんとしたところなのかを考えて、そのうえで、人の何倍もの努力をしていかなければならないわけです。

そういう但し書きがついて初めて、不況のときに始めた人は強く、好景気になったら大きく発展するということが言えるわけで、何でもかんでも不況のときに始めればいいというものではありません。

それでも、そういうチャンスが自然にやってきたときには、よく考えたうえで飛びついて、そして何倍も努力する。企業の成長の過程では、そういう時期でもあるわけですね。

それから、好景気のときには、消費者は相対的な安さを求めますが、不況期になりますと、絶対的なる安さを求めます。相対的な安さというのは、この商品でこのお値段なら、まあリーズナブルだな、理屈に合うな、これだけのものなら当然これくらいの値段はするだろうな、と。これがまあ、相対的な安さです。

ところが不況になったら、絶対的な安さが求められます。いいものも悪いものも、とにかくイチキュッパ(198)でしか買わないとか、ニッキュッパ(298)が売れるとか、絶対的な価格の安いものがウケるわけです。

お金を持っていても、買い控えるんですね。ボーナスが出るか出ないかわからないかということで、消費を控えるわけです。

そんな不況感がみなぎっているときには、絶対的なる価格の安さが求められますから、だいたい二十五パーセント以上、三割から四割、ガーンと安くして出すと、お客さんがワーッと来ます。

しかし、どんなにお客さんが来ても、赤字になっては意味がないわけで、利益は必ず出さなければいけない。

そのときに必要なのがリストラクチャリングで、三割、四割、絶対的なる価格を安く出しても利益が上がるような製品を仕入れたり、あるいはコスト・経費を削減し利益が出るようにしていく努力が要るわけです。

あくまでも、攻撃面、積極面、発展面を重視し、それをより充実させるための創意工夫、いま言った経費の削減などを含めた再構築、すなわちやり方を考え直す。そういうことを考えなければいけないと思いますね。

そういう形で、次々次々次々と五月雨的に新しい作戦を練ってやっていければ、そのうちにガーンとヒットが出てきます。

ここが、経営者の粘りと根性と資質と才能と熱意というものが試される点ですね。それが経営者の能力というものです。

そういうことを考えずに、ただ経費を抑えて当座をしのごうという無為無策でいたら、会社は潰れますよ。

ずっと続きますからね、不況が。そのなかで淘汰されずに生き残っていくには、もうその道しかないと思って、何倍もの気迫と根性とエネルギーと、そして創作性を発揮していかなきゃいけませんよ。

創作性が乏しいと思う人は、創作性のある友人からいっぱい聞いたらいいですね。こんなことをやってる、あんなことをやってる、というところを勉強しなければいけません、不況のいまは。

話は横道にそれましたが、そういうことで攻撃あるのみ、積極性あるのみ、創意工夫を生み出すのみ、と。そうしていかなければきっと潰れます。

だから、心を固め直さなきゃいけない。消極策に出ると、中小企業はもう潰れるしかない。

しかし、積極策といっても、何でも思いついたことを大胆にやれ、という意味ではありませんよ。

次々次々次々と売上を上げていく。お金をかけなくても売上を上げるコツはあるわけですから、同業他社およびライバル、および成功しているパターン、成功している会社、売上を上げている会社が実例としてあるわけですから、それを何らかの形で勉強しなければいけません。

流通なら日経流通新聞がありますし、メーカーなら日経産業新聞が参考になるでしょう。

それ以外の新聞にも出ておりますし、経済雑誌でも、成功し、売上を上げている企業のやり方が紹介されていますよ。

たとえば、船井総合研究所さんなんかは三千五百社ですか、船井総研さんに何らかの形でコンサルタント料を払った企業は五千社ぐらいあるらしいんですけども、だいたい三千社か三千五百社。

そのなかでも二百七十社ほどは、この大不況のさなかにありながらぐんぐん伸びて、ぐんぐん成長して、収益がおもしろいように上がっているらしいですね。

どんなときにも成功している会社、成功している人はいるわけです。そういうものを学んでいく、勉強していく。どういうところで成功しているのかという要素を研究していかなければダメだと思うわけです。

私も菱研の皆さんに、そういう実例やパターンなどを、資料にしてお送りしたいと思っております。

しかし、基本はそういうことです。くれぐれも、その姿勢を忘れないようにしてください。そうでなければ、どんなに神仏にお祈りしても、本当の意味でのご守護はいただけないと思います。

そういうことなんですけども、これをちょっと、戦争にたとえてお話ししてみますと、日露戦争で主力となって戦った人は、明治維新の刃の下をかいくぐってきた人たちですね。

その明治維新の志士たちが明治政府をつくって、それからわずか三十年の間に、日本は富国強兵策が功を奏して強くなった。

で、日清・日露戦争に勝ったわけです。なぜ勝ったか。勝因はいろいろあるでしょうけれど、一番大きいのは創意工夫ですよ。

まあ、戦争はけんかですからね、一生懸命に努力して、次々次々次々と、新しい戦い方を創意工夫しました。

大阪の講義でも触れましたが、たとえば秋山好古という人は、機関銃をフルに活用する戦法を考案しました。

ロシアと戦うとなると、世界最強と謳われるロシアのコサック兵と戦わなければならない。

それで調査した結果、向こうの軍馬はまさに戦闘用の大型馬で、日本のロバみたいな小さな馬で立ち向かったところで、どう考えても勝てっこない。じゃあ、戦争が起きた場合にどうするかということで、秋山好古は欧米に視察に行って、フランスで機関銃というものを発見した。「これだ!」と。

騎馬隊に騎馬隊で向かっていっても勝てっこないですからね。

そこで秋山好古は、日本の騎馬隊に機関銃を導入して、コサック兵との戦闘になったときには、サッと馬から下りて、ダッダッダッダッと機関銃掃射をしたわけですよ、馬をねらって。

この作戦が成功して、世界最強のコサック兵が日本のちっちゃーい馬のちっちゃーい兵隊に、もう完膚なきまでやられてしまった。

圧倒的な日本軍の勝利だったわけですが、その結果、コサック兵のよう騎馬兵が近代戦争のなかから姿を消して、その代わりに出てきたのが、あの戦車です。

近代戦争の歴史を塗りかえた一つの革命的な戦い方を、日露戦争のときに秋山好古という人が考え出したわけです。

これは多分、織田信長の長篠の合戦方式をヒントにしたと思うんですよ。

武田の騎馬武者たちに対して、三千丁の鉄砲を千丁ずつ三組に分けて連射を浴びせた。

そして、織田信長側の完全勝利で終わった長篠の合戦。あれが多分ヒントになったんだと思うんですよ、私は。実際のところはどうかわかりませんけれど、日露戦争のときに日本人はあらゆる工夫をしたわけです。

それから、日本海海戦でもそうですね。東郷平八郎元帥が丁字戦法・・・・・・丁字戦法というのは、軍艦の左右の大砲はぶれが多いけれども、距離は一定している、と。

だから、相手に勝つことを考えたら、日本の連合艦隊が横腹をビヨーと見せるわけですよ。撃つほうから見たら距離が一定しているし、向こうが縦から来たら必ず距離が横に並びますから、ドンドンドンドンと、全部当たるわけですね。

一方、防御面から考えたら、船は横幅が狭いから縦に進んでいったほうが当たりにくいわけですね。横腹を見せるということは、魚雷も当たりやすいし、大砲もねらいやすいわけですね。

ということはつまり、東郷元帥がとった作戦は相手を完膚なきまで叩きのめすという攻撃精神の表れなのであって、たとえ日本の海軍が全滅してもいい、と。

その代わり、バルチック艦隊も全滅させるんだ、刺し違えてでも全滅させるんだ、と。

そうしないと、中国大陸で戦っている陸軍の補給路がバルチック艦隊に封鎖されて全滅してしまうだろう。だから、自分たちは全滅してもいいから、バルチック艦隊を一般も残すことなく全部、海に沈めるんだ、と。

この気概に満ち満ちていたんです、東郷元帥は。で、東郷元帥は最初から最後まで甲板の前に立って、微動だにすることなく、指揮命令に当たったのですが、艦長室に敵の砲弾が命中して、なかにおった部下が爆死したんです。

もし、東郷元帥が艦長室にいたら同じように爆死したはずです。

しかし、東郷元帥は甲板の前に出て、「それーっ!」とやっていたから当たらなかったんですね。この攻撃精神に、やっぱり天の運が来ているわけです。

で、いざ戦いを始めたときには、向こうの艦長はケラケラケラケラ、バカな日本海軍だ、アホなやつだ、と。ところが、戦ってみたら完膚なきまでに日本海軍に打ちのめされて、戦艦も巡洋艦も駆逐艦も全部、日本海に沈んでしまった。

一隻か二隻、もう使用不可能なほどぼろぼろになって、命からがらロシアに帰ったらしい。だからもう、パーフェクト・ゲームです。

日本側は一艘も沈んでいない。三隻か四隻、魚雷艇が沈んだんだけど、「天気晴朗なれども波高し」の檄文どおり、波が高かったので沈んだもので、弾が当たって沈んだわけではありません。

こういうふうに、陸軍でも海軍でも新しい戦い方を次々次々と考えたから、日清戦争でも日露戦争でも圧倒的な勝利を収めることができたわけです。

ところが、太平洋戦争になったら、陸軍士官学校とか海軍士官学校、こういうふうなところを優秀な成績で卒業した人が年功序列で軍のトップを形成するようになったわけです。

つまり、学校頭、勉強頭の人がリーダーとなったのですから、新しい戦い方の工夫なんかほとんどないし、考えつくのはただ守りを固めることだけ。

こういうふうな戦い方をしていて勝てっこないですよ。

まあ、一番オリジナルだったのは特攻隊だけですけどね。体当たりして、そのまま死んでいく、と。これは誰も思いつかない。太平洋戦争で唯一オリジナルな戦い方と言ってもいいんじゃないんですかね。

しかし、本当に悲劇的な戦法、窮余の一策ですね。勝つチャンスはいくつもいくつもありましたけども、学校頭、勉強頭が先に立っているので、その都度ビビッてしまって、せっかくのチャンスをみんな逃してしまった。

やはり、戦い方の創意工夫がなかったんですよ。それに対して連合国、とくにアメリカは次々次々と新しい戦い方を考案しましたね。

原子爆弾ももちろんそうですが、火炎放射機だとか、それから焼夷弾、それから三対一の飛行機ね。アメリカの空軍は、どんなときでも三機。敵は一機。

だから、七面鳥を落とすみたいに勝つわけですよ。そりゃ、一対三じ勝てないですね。一対二なら勝つ場合もあるけれど、一対三じゃ、まあ勝てない、と。だから、三人チームでずっと戦うわけですよ。

そういう戦い方を次々次々考案していったアメリカ軍に対して日本軍は、日露戦争のときの栄光に酔いしれるばかりで、学校頭、勉強頭の、創意工夫のない人間がリーダーになっていたんですから、これはもう勝てるわけがありません。

要するに、私が言っているみたいに、新聞は読んでいるし、テレビを通し銀行の言うことも証券会社の言うことも聞いていて勉強はしているけども、積極的で攻撃的で発展的で、次々次々と新しい攻撃の仕方を編み出していくという創意工夫のない人間、実戦の経験もなく、秋山好古や東郷元帥のような気迫と根性もなく、ただ学校の勉強がよくできる学校頭、勉強頭の人間が上に立ったために、日本は結局、三百万人という大きな犠牲を払わなければならなくなったわけです。

戦争を起こすことの善し悪しを論じても意味がありません。当時は帝国主義の時代ですからね。戦争を起こした日本は間違っている云々というのは、これは左翼の思想でして、起こさざるを得ないように仕向けたのはアメリカですから。

その善し悪しは別として、戦い方、戦いぶりの違い、日露戦争のときとの違いを考えたら、大企業的な頭学校頭、勉強頭の人が中小企業の経営者になったら、まず勝てないでしょう。

学校も何も出てないかもしれないんだけども、裸一貫でやってきて、攻撃性と創意工夫でどこまでも粘り強く次々と編み出していく人間が、やっぱり勝つわけですね。

楠木正成公も諸葛孔明も、奇策百出して、鬼神も驚くばかりだ、と。

やっぱり、十個やったうち一個成功すればいいんですよ。あるいは百個やったうち一個成功したら、それがヒットなんです。

いろいろ考えて、ああかな、こうかなとやっているうちに、時間がどんどん過ぎていきますから、十個トライして一個成功したら、いいと思うべきです。

それを、一つか二つやっただけで、「なかなかうまくいかんな」と。これではダメですよね。

話が長くなりますが、たとえば英単語の暗記に関して私はいつも言うんですけれど、Aという人が、「英単語っていうのは覚えにくいですね。覚えたら、「すぐ忘れるし」と言ったら、Bという人が答えて言った。

「いや、本当に英単語というのは覚えにくい。覚えても覚えても忘れますね」と。

ところがAさんは、三十個覚えたうち、五分の一の六つしか覚えなかった。六つしか単語を覚えてないんですよ。

それに対して、「本当にそうですね」と言ったBさんは、三百個覚える努力をして、五分の一の六十個覚えている。六個覚えている人と六十個覚えている人とでは十倍の差ですから、実力が十倍違うわけでしょう。

「いや、本当に英単語というのは覚えにくいですね」と言っても、AとBでは実力が十倍違う。

そういうことなんです。ですから、十個トライして、「売上というのはなかなか伸びないものですね。売上を上げるのは難しいです」「いや、本当に難しいですね」とは言うんだけども、片や年商百億になってて、片や年商一千万。

わかりますか、皆さん。人は似たようなことを言うんだけれども、年商百億上げているところと年商一千万の違い。

それはやっぱり、十倍、百倍の創意工夫と、新しいものに対するチャレンジと攻撃的な精神を持っているかどうか、ですよ。

中小企業は勝気を失い、攻撃をやめたときには潰れるしかない。日露戦争のときのような、実戦向きでぶつかっていかないとダメだということを肝に銘じて、この不況の時期を雄々しく乗り越えていただきたいと思います。

私自身も、そういう言葉をつねに己に言って聞かせて、何とかこれを切り抜けて、頑張っております。私も皆さんと同じ立場で生きていますから、皆さんも大いに頑張っていただきたいと思います。

熱誠天意に通じ勝負に勝つ(平成六年) ボイスジャーナルVOL.2より

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますよね。

何でもかんでも神頼みするのではなく、人間としてやれるだけのことをやってから天のおほし召しとご加護を受けなさい、という意味ですが、人間やれるだけやったら、もうそれ以上はやりようがないから、あとは天が応援してくれようとくれまいと、どういうふうな結果になっても、その結果に従おう、と。

成功しようと失敗しようと、勝利しようと敗北しようと、人事を尽くしてやれるだけのことをやったんだから、どういう結果になっても後悔はない、と。そういう意味に取れますよね、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉は。

ところが会社の経営者は、この「人事を尽くして天命を待つ」という気持ちに絶対になってはダメなんですよ。

経営者としての責任を考えたら、人事を尽くして何が何でも会社を存続させ、倒産させてはいけないわけです。

人事を尽くして、どんなことがあっても、とにかく黒字にする。

人事を尽くして、どんなことがあっても、必ずライバルには勝つ。

そういうふうに考えなければいけないのであって、どんなことがあっても絶対にそうするんだ、という意識がある間は、よほどのことがないかぎり会社は倒産しない。

会社が倒産するのも、業績が落ちるのも、結局は、経営者がそういう迫力というか気概というか、精神的な強さに欠けるときなのです。

どんなことがあっても絶対に諦めない、という気持ちが経営者につづいているかぎりは、会社は倒産しないものです。

たとえば、手形を切って、これは危ないと思ったら、切った相手の会社に行って、土下座してでも手形を回収してきたらいい。

持ち逃げされたものでとか、身内に不幸なことがありましてとか、何か理由をつけて、お金が要るようになったものですから、どうか手形を返してください、と言って手形を返してもらったらいいんです。

銀行に預けていたりなんかすると、落ちない場合には自動的に不渡りとなって、いわばまあ、倒産です。二度不渡りをくらったら、確実に倒産です。

それは、経営者なら誰でも知っています。だったらなぜ、命をかけてでも回収しようとしないのか。不渡りを出しそうになったら、そうやって追いかけていって回収したらいいんですよ。

ある人がそうだったんです。ライバルに追い越されて、昔からのお得意さんを取られてしまって、売上が半分になってしまったから、わが社は倒産するしかない、という相談を受けたことがありました。

私はその人に言いました。「売上が半分落ちたら支出も半分にしたらいいんだ」と。

会社というのは、利益が上がっていたらいいわけだから、売上が半分になったらば、支払を半分にしたら問題ありません。

それに、売上が半分に落ちて、支払が半分以下にできないから、人件費を削減しなければならないんだということで、普段から問題の多い社員を上手に気持ちよく辞めていただけばいい。

売上が下がったときというのは、そのための一つのチャンスでもあるわけですよ。そうやらざるを得ないんですからね。

まあ、そういうようなことを言ったわけですけれど、売上が半分落ちたら支私を半分にしたらいいし、この際、問題の多かった社員は辞めていただこう、と。

それから、月々の支払に事欠くようになったらば、光熱費、水道代、電気・ガス代、お家賃も保証金がある間、だいたい三ヶ月分ぐらいは待ってくれます。

それ以上になりますと、これはもう大家も必死ですから厳しいですけれど、それでも私は粘りに粘って、それをもう二ヵ月ぐらい延ばしてもらったことがあります。

まあ、お家賃は、どんなビルでもそれぐらいは引き延ばせますよ。

だから、売上が落ちようと、同業他社が素晴らしいものを出して追い抜こうと、赤字になるとはかぎらないわけです。

経営者が、何が何でも黒字にするんだ、何が何でもこの会社を存続させるんだ、という意欲がある間は、いま言ったように、たとえ売上が半分になっても、たとえ人件費がオーバーになったとしてみても、絶対に潰れませんよ。

ライバルにお客さまを取られたら、逆に取り返したらいいわけですからね。会社というのはそう簡単に潰れるものではありません。

経営者が、「ああ、もうダメだ、もう倒産してもしようがないや、倒産してもいいや」という気分になって、「何が何でもやるぞ!」という気持ちがなくなったら、人を説得させる言霊の力もなくなるし、人をそうだなという気持ちにさせる説得力も表現力も、声の力もなくなるわけですよ。

会社の経営者にはその気力が最も大事であって、どんなことがあっても会社を守るんだ、何が何でもやるんだ、という気持ちが持続できているかぎり、絶対に会社は潰れない。その気持ちが消え失せて、もういいやとか、もうダメなんじゃないか、という諦めや不安、恐怖。

そういう心になったら、蛇ににらまれた蛙のように倒産していくしかない。

まあ、そういうようなものだと思います。繰り返しになりますが、何が何でもやるんだ!という気力を持っているかぎり、会社は潰れません。

その意味で、そういうメンタリティを絶えず持つ努力をすることこそが、経営者の責任ではないかと思います。

たとえば、ライバル会社が自分のところの顧客に対して、うんと安い条件を提示するということはよくあります。

それは、こっちを潰さんがための底値のかいくぐり、つまり、採算を度外視した安いお値段で取引することで、こっちのパイプをまず切り崩したうえで、自分の得意なジャンルの商品をそのなかに混入させていって儲けようというもので、よくあるケースなんです。

私は時計を扱っていますけども、時計を納めさせていただくために、顧客が欲しがるピンクテープとか生のビデオテープほとんど儲かりませんでしたけれども、顧客が欲しているからということで納入しました。

それは、ライバルが入ってこないようにするための一つの方策でもあったのですが、それでも最後は逃げ腰になって、私たちが危うくなった。そのときには、膝を七重八重に折って、「そこを何とか・・・・・・」と、ひたすらお願いするしかない。

そうやって、どこまでも粘り強く交渉していけば潰れない。よほどの場合は潰れるでしょうけれども、そういうことは考えないほうがいい。

そのように、資本力のあるライバルが赤字を覚悟で値段を引き下げ、中小を潰そうとする場合は、言われたまんま引き下がってはいけない。負けてはダメなんですよ。負けグセがつくから。

たとえば、プロゴルファーでも、日本国内の大会では優勝はするけども、メジャーでは勝てない、という選手がいますよね。

もう実力は十分あるんだけども、なぜメジャーでは勝てないのか。周りの人たちを思いやる心があるものだから、精神的に影響されてしまうわけです。

ひと言でいえば意志力が弱いんですよ。だから、ライバルとの競争に勝とうと思うなら、もうちょっと人が悪いぐらいにならなければいけませんね。

どのスポーツの世界でもそうですよ。日の丸を背負おうと何も関係ない、自分は自分のためにこのスポーツをやるんだ、という選手と、それに対して、日本の代表として行くということは大変光栄でどうのこうのと言っている選手もいます。

そういうふうな周囲をおもんぱかる優しい心を持った人と、自分のことしか考えない、マイペースでコミュニケーションの悪い人間が戦ったら、まずコミュニケーションの悪い人が勝ちます。

周囲へ気を配るよりも自分のことだけ考えている分、勝負に徹せられますからね。

とにかく、どのスポーツの世界でも、勝っている人はみんな勝ち気で、みんなわがままで、傲慢で、自分のことしか考えない。

で、性格が円満で素晴らしい人は、勝負には勝てないんですね。だからまあ、ビジネス戦線の最先端にいるわれわれも、絶対に負けるもんか、というくらいに気が強くて、ちょっと優しさが足りないくらいがちょうどいいのかもしれません。

いずれにしましても、勝負となったら、絶対に負け犬になってはいけないということです。

ライバルがより安いお値段できたら、こっちももっと安いお値段でいくか、あるいは、ひどいやり方で多大なる損害を被ったということで損害賠償を請求するとか、戦う方法はいろいろあるでしょうけれど、とにかく、絶対に負けるか、負けてたまるか、という強い気持ちで戦いつづけなければいけません。

相手の言うままに唯々諾々として、「はいはい」なんて言っていたら、負けてしまいます。「人事を尽くして天命を待つ」というのは、それは唯々諾々として潔いかもしれないけども、会社の経営者、とくに中小企業の経営者はそれでは絶対にダメです。ライバルに負けて仕事を取られたままにしていますと、

次に取られて、さらにまた取られるんじゃないかという気分になって、精神的にじり貧状態になっていきます。

だからライバルに関しては、神様であろうと何であろうと関係ない。自分自身の内なる神、神なる部分が毘沙門天だと考えて、絶対にライバルには負けない。

競争となったら絶対に勝つ。負かした相手がその後どうなるとか、そんなの関係ない。ビジネス戦線も商売も厳しいもんなんだ、と。

負けたくなければ立派ないい商品や素晴らしいサービスを安く提供する。あるいはまた、政治的なおもんぱかりで勝ってやるということで、癒着の構造も、系列の構造も、資金の構造も、もうあらゆることをやってみる。

負けたまんまにしちゃダメなんです。中小企業の経営者は絶えず勝ち気で、絶えず勝負強くて、ここ一番というときには必ず勝つ。どんな戦いでも絶対に勝つんだと思って、あした不渡りか、あさって不渡りかというときも、超然として立ち向かっていくときに、天が応援してくれるわけです。

最悪の場合でも、何とかしてあげましょうという応援者が出てくる。

そのギリギリのところで、まあ、いいや、もう潰れるなら潰れるでしようがないか、と弱音を吐いたらダメです。

とくに、会社を一回、倒産させたことのある人の場合には、過去の経験が蘇ってきて、まあ一応、売上金が少しあるから、これをもらってどこかにトンズラするかとか、ご迷惑かけて申しわけないけど、もうこれ以上やっていけません、という気持ちになりやすい。

やはり、倒産グセ、負け犬グセが身についていると、ギリギリのところで出てくるんですよ。

だから中小企業の経営者は、ライバルとの競争に絶対負けてはいけない。唯々諾々として負けたら、自分の心のなかに負けグセがついてしまいます。

「何言ってんだ。ライバルに負けるぐらいなら自爆して会社を潰すんだ」というくらいの気概を持たなければいけません。相手を蹴落とすのではない。より高い内容、より強い粘り、アプローチ。

この熱誠が天に通じたら、絶対に商売は勝てます。これがつづくかぎり、会社は永遠に繁栄していくんです。

ところが、不安だとか、あるいは心配だとか懸念だとかが先に立つと、ライバルに負けてしまう。

そして、次々と負けて、負けてもそのまんまにしていて、知らず知らずのうちに負けグセがついてしまう。

同じ負けるにしても、次に勝つための何らかの教訓なりノウハウをつかんだうえで負けるのならまだいいんですけれども、それもないまま純粋に敗北し、唯々諾々としている。そんなことでは己をダメにするだけですよ。

だから、どういうふうなことがあろうと、親しい友達であろうと、心を許してはいけないとは言わないけれども、自分自身のスタンス、自分自身の視座、自分はこうなんだ、というものをカチッと持っておかないといけません。

逆に持っていたら、自信になります。たとえば、一時的に損をすることがあっても、次には絶対にやり返せるとかね。

その意味でも、質と中身と活動・運営において負けてないという自分をつくらなければいけないと思います。

会社というのは倒産しにくいものなんだと思っていいんです。

ライバルとの競争に負けたとき、「ああ、これはしようがないな、前にも倒産したし、今回も倒産するのかな」とか、「もう体力が弱っているから、過当競争を勝ち抜くのは無理かな」などと、経営者が弱気を吐かないかぎり大丈夫です。もし万が一の場合でも、次へのステップとして何らかのプラスアルファをつかみ取る。

どうしても会社を潰さなければならない場合でも、これは発展的解消なんだと宣り直す。

一つの組織から離れていくときには、「立つ鳥跡を濁さず」で、さっときれいに辞めるのではなく、より発展的な解消のためにやめるんだと思って、次回には必ずこうするんだ、ということをやっぱり、何か一札もらわないといけませんよね。

そういうことで、会社は倒産しにくい、と。そういう気持ちが萎えた瞬間に潰れる、と。その気持ちが萎えなかったら絶対潰れませんよ。

法律上の問題なら、弁護士さんにも相談すればよろしいわけですから。あの問題は、この問題はなんて、あんまりうじゃうじゃ考えすぎないことです。考えている人は、みんな行き詰まりますから。

というわけで、会社というものは倒産しにくい。売上が半分になったら、支出も半分にしたらいいし、従業員を食わしていけなかったら、固定給を下げればいい。

その際、問題の多い社員は辞めていただく。ライバルに負けたら、絶対負けたままにしておかないで勝ち返す。

値段の下げ合いでも何でもいいから、裸で、情熱でぶつかっていったら、必ずまた新しい仕事が出てくるし、新しい道はそこから必ず開きます。

ですから、勝ち気勝ち気勝ち気、積極積極積極、前向き前向き前向きでないと、中小企業の経営は絶対に成功しません。

ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

じり貧の公式に落ちないために(平成六年) ボイスジャーナルVOL.23より

Sゴルフクラブというのがあります。そこで盲人ゴルフをやっているんですけれど、ここはまあ、なかなか古いゴルフ場で、ブルドーザーでガガガッと造成したのではなく、すべて手掘りで造られております。

フェアウェイにアンジュレーションがあったり、デコボコしたりしているんですけども、まあ、会員権も安いですから。百万か幾らで、平日なんかは百万もしないかもしれません。

一番値段が高かったときでも三百万か四百万ぐらいのところです。アップダウンが結構ありますけども、富士山が見えるし、寝観音も見えます。

古しいところですので、非常に気が凝結していて、私の好きなゴルフ場の一つです。

今日は、そのSゴルフクラブと、サービスのいいゴルフ場との違い、これについて少しお話ししてみたいと思います。

この不況の時代、どこを経費削減して、どこにお金をかけなきゃならないかというところで、いつも私たちは考えているわけですが、悪い循環というのがありましてね、このSゴルフ場を見ておりますと、ゴルフ場は好きだけども、悪い循環の典型的なケースじゃないかと思うんですよ。

たとえば、安物のゴルフ場というのはだいたい、ランチの値段が高いですね。いいゴルフ場に行くとランチが安い。

要するに、安物のゴルフ場だからプレイフィー、グリーンフィーが高く取れないので、食事代で利益を稼ごうとするんですかね。

いいゴルフ場は収益が上がっていますので、食事代で稼ぐ必要がない。そんなところで利益を取ろうとしないわけです。

悪い循環とは何かといいますと、ゴルフ場の会員権の価値も安いし、ゴルフ場の格もあまり大したことがないんで、それほどいい質のお客さんが来るわけではない。アップダウンもきついですからね。

で、どうなるかというと、不況になってきたらモロにお客さんが少なくなってしまうので、売上が落ちる。売上が落ちると利益が落ちる。

そこで不況対策としてどうしたかというと、経費の削減をするわけですね。これは誰でも考えることです。売上が落ちてきて利益が落ちてきたら、当然、経費を削減するわけですが、何でもかんでも経費を削減すればいいというものではありません。削減しなければならないのは、無駄な経費なんです。

ところが、Sゴルフクラブさんは、絶対的な経費を削減しようと考えたらしく、キャディーさんの数、それからコースのところどころにある休憩所の係員といった人たちの人件費を減らしたわけですよ。

その代わりに導入したのが機械による自動化です。ジュースの自動販売機はもちろん、何でも機械化し、カードをサッと通すと出てくるというシステムに変えたんですよ。

たとえば、ゴルフのバッグを運ぶのもキャディーさんの代わりに電動式カートになりましてね、それがまたおかしいのが、「ピンポーン、ピンポーン、次は第三ホールです。前の方のプレイを確認してから、気をつけてお進みください。ピンポーン、ピンポーン。次は第六ホールで、休憩所があります。

汗をおかきの方は飲み物をお飲みください。おトイレも用意されております。

それでは。ピンポーン、ピンポーン」と、電動カートに設置されているコンピュータの音声・・・・・・お姉さんの声なんですが、同じことを毎回言うんですよ。

コーナーを回るごとに、ピンポーン、ピンポーン、と。料金所じゃないって言うんですよ。高速道路の料金所のなかには、「料金は三千八百円です」というところがありますよね。

でも、高速道路に乗るときはしようがない。どこかの駐車場でも、「精算券とともに料金をお入れください。料金は三百円です」という形でやっていて、料金を入れるとバーッとゲートが上がっていく。

そういうのは、しょうがないから諦めていますよ。それで人件費を削減しようというのは誰でも納得できます。

しかしゴルフというのは、都会の雑踏を離れて大自然の空気を吸い、緑を見、芝生を歩き、そして、湖だとか鳥のさえずりだとか池だとかいう美しい自然環境の中でプレイすることに意義があるのであって、だからこそストレスが解消されて、英気が養われるわけですよ。

ところが、コーナーを回るごとに「次は第六ホール。前の方のプレイを確認して・・・・・・」と、毎回のように電子音のお姉さんが言う。

「わかった、わかった。言われなくてもわかっているよ。次は七ホール。前の方のプレイを確認して…」と言いたいんだろうと言ったら、「そのとおりです」とは言いませんよ、電動式ですから。一回言えばわかりますよ。

一回聞けばわかりますよ。でも、その電動カートの電子音のお姉さんは、毎回同じことを言うわけですよ。

あたかも高速道路の料金を精算するみたいな、あるいはビルの雑踏のなかで駐車料金を払うみたいな感じで、素晴らしい自然のところまで行って、なぜ電子音のお姉ちゃんの声を何回も何回も聞かなきゃならないのかと思うじゃありませんか。

だから、もうあそこには行きたくないといって、お客が行かなくなるわけです。サービスが低下しているから、お客さんが行かないんですよ。

だからまた売上が落ちる。売上が落ちるから利益も落ちる。利益が落ちるからまたまた経費を削減しなきゃいけないって、さらにサービスが落ちる。

サービスが落ちるから人が行かない。人が行かないから、また売上が落ちて利益も落ちる・・・・・・というような悪循環。こんなことを繰り返しているんですから、じり貧状態になるのは当然です。

それに対して、地理的条件とゴルフコースのよさ、クラブハウスの素晴らしさをアピールし、若いキャディーさんを使って、食事代も高くしないという方針でやっているゴルフクラブは繁盛しています。

最初から会員権を高く設定し、会員数をあんまり増やさなくても、人気があります。厚木かどこかのゴルフ場はそうでしたね。

清川ゴルフ場かな。キャディーさんの平均年齢はたしか二十七歳。ゴルフ場によっては、平均年齢二十三歳というところもあります。

そしてホールアウトしたら、これはたしか六甲ゴルフクラブでしたでしょうか、ホールアウトしましたら、キャディーさんがおしぼりをさっと持ってきて、「どうぞ」と。それから靴磨きを持ってきて、サッサッサッサッと靴を磨いてくださる。

それから、キャディーさんが二人ついてくれるゴルフ場もあります。

四人でプレイするとき、普通は一人なんですけども、必ず二人ついてくる。たしか川奈ゴルフ場ですね。キャディーさんが二人ついて、平均年齢が若い。しかも熟達したキャディーさんで、大変おもしろくて、そして、おしぼりは出てくるわ、靴磨きはしてくれるわ、バッグはさっと持ってくれるわで、そういう素晴らしいサービスをしてくれる。

会員権は高く、プレイフィーもSゴルフ場よりも二倍とか三倍高いんですけれど、それは納得しますね。

不況になってきたら、売上を下げるか、よくて頭打ちというところが多いんですけれど、トップクラスのゴルフ場となると、普通より二倍、三倍と料金が高くても、みんな納得して行く。

だから、売上は上がるし、粗利率が高くて利益が出る。利益率が高いので、また人を雇っても大丈夫。

人を雇って細やかなサービスをするから、あそこはよく行き届いて感じのいいところだからということで、みんなが行く。

みんなが行くから売上が上がる。普通より高くても、みんな納得して行くから、利益も上がる。

売上も上がる。そして、それを使って一層、細やかなサービスをする。すると、また人が行く。人が行くから売上が上がる、利益が上がる……という、いい循環になっているわけですね。

だから、経費を削減するときには、売上が落ちないような状況を確認したうえで削減しなければいけない。

人件費を含めた経費を下げることによって、あるいは経費を削減することによって、売上が落ちたというのであったら、絶対にその経費を下げることはマイナスなわけです。

やはり、企業にとって一番大事なのは売上なんです。

とくに中小企業は、売上売上売上。そして、粗利益をいかに増やしていくか。毎回のタメカンセミナーで私が言いつづけていることなんですけども、売上が上がり粗利益が取れるようにしていってこそ、会社は成功し存続するわけであって、いかに不況だからとか、いかにお客さんがちょっと来なくなったからといっても、売上が落ち、粗利益が下がっていくような方向になる可能性がある経費の削減というのは、絶対にしてはならないんです。

つまり、営業、開拓、宣伝広告、販売促進、新製品の開発、こういうものに関する経費は絶対にケチってはいけないし、惜しんではいけないし、削減してはいけないんです。

トップに立つ人間は、自ら余計な出費を抑える努力をしなければいけません。

しかし、不況のときに、あるいは売上が落ちたときに、売上が落ち、粗利が落ちるようなところの経費の削減をしたり、経費の削減ばっかりをトップが考えておりますと、会社の生命力というかエネルギーまでが削がれていってしまいます。

資金繰りが企業経営で一番大事である、というようなことを言う人がいます。

しかし、資金繰りというのは、売上が上がっていて初めてできるものであって、売上が上がらず粗利も取れないのに資金繰りをするということは、じり貧状態、言うなれば、自転車操業の悪しき資金繰りです。

だから、資金繰りに企業の経営のポイントがあるわけでは決してない。売上を上げ、粗利益を取ってくる営業力、販売力、宣伝力にやっぱり積極的にお金を使う。

利益を上げるという攻撃面に力を出しておかないと、企業は絶対に存続しないし、潰れていくわけです。

それを防ぐために、会社は資産を持たなければいけない、というふうなことが言われております。

流動資産だけでなく、不動産とか有価証券を持っておかないとしのぎ切れないから、会社の資産というものをつくらなきゃいけません。

その会社の資産の分だけが簿価になるわけで、簿価が高くなるために会社の資産を増やしていかなければならないんですけれども、赤字がだいたい四年続くと、備蓄した資産も全部なくなって、会社が潰れる、と。

どんなに大きなところでも、六年間赤字が続きますと、その資産も全部なくなってしまうというのが、コンサルティングの原則のようでして、四年連続、会社の業績、すなわち営業利益が赤字になっている会社というのは、備蓄した資産も全部なくなって潰れます。

ですから、四年以内に、やっぱり営業収益が黒字になるように……まあ、余計な経費は削減しなければなりませんけれど営業利益、粗利益が取れて利益が出ているような会社の体質をつくらないと、資産をどんなに備蓄しましても、結局は潰れるわけです。

二、三年、何かあったときにしのぐために、資産を残すというのはよろしいでしょう。あるいはまた、資産を残して会社を潰すというならまた別で、資産づくりだけというのなら成功するかもしれませんが企業はゴーイング・コンサーンです。

三十年、四十年と存続させていかなければなりません。にもかかわらず、資産づくりとか備蓄だけを考えて、時代とマーケットの状況を見て、営業利益、会社の利益を出していく、売上を上げていくという営業面、販売面が、宣伝広告も含めて成功してなければ、常識的に考えて、会社が存続し得るはずなどありません。

だから経営者は、朝から晩まで売上と粗利益を上げていくことを考えつづけて、工夫しつづけて、やりつづけなければなりません。

中小企業の場合はとくにそうです。それがあって、資産づくり、それから資金繰りのうまい下手を考えなければいけませんね。それを第一優先にすべきだと思います。

であるにもかかわらず、不況だからと言って、売上が少し落ちたからと言って、販売面、営業面の経費を削減するなんて、どう考えてもおかしい。

もちろん、無駄な経費は削減しなければなりませんが、利益を生み出す根幹の部分を削ったら、結局、じり貧状態に陥りますよ。経営者はすべからく、じり貧の公式に落ちないようにしなければなりませんよね。

だから経費の削減は、売上と利益率を落とさないようにするという前提のうえに余計な出費をなくすという経費の削減でなければならない。

何でもかんでも経費を削減しなきゃいけないということで、攻撃面、販売面売上、利益また上げていくという攻撃面の経費をケチったら、その会社は伸びる力を失って潰れますね。

どんなに不況でも、どんなに売上が落ちても、横波を食らったときは、ますます積極的に売っていって、ますます積極的に利益を上げていくという攻撃策を、経営者は考えなきゃいけないわけで、経費を削減していくという守りのほうに気持ちがずっと向かっていったら、社員の気持ちも冷えてきますし、一丸となっていく力も冷えてきますから、結局は潰れますね。

資産があっても二、三年持ちこたえるだけで、それ以上はやっぱり売上を上げて、粗利を取って、営業面、販売面を開拓していかなければ、会社が成り立つはずなどありません。

ですから、くれぐれもSゴルフクラブのような、マイナスからマイナスへ行くようなことのないように、経費の削減によってじり貧状態を招くことのないようにしていただきたいと思います。

不況であってもきちっとしたものを取り、プラスの方向に行くようにするためにはどうしたらいいんだろうか、ということ創意工夫して研究しなきゃいけませんよね。

不況だからといって、そこの部分だけは絶対に見誤ってはいけないと思います。

中小企業は、積極的に売上と粗利を取っていくという攻撃精神がなくなったら潰れます。資産づくりのほうに走ってしまうとつづきませんから、くれぐれも経営者が、上に立つ人間がそのことをよくわきまえて、精神とビジョン、やる気というものを奮い立たせていただきたい。

社員に対しては、気持ちが後ろ向きになったり暗くなったり消極策に絶対にならないように、鼓舞しつづけていくという工夫をしていただきたいと思います。