黄道十二星座
天空に肉眼で見える星の数は約八千。
まったく規則性のない星の並びに、古代の人々は神や動物などさまざまな形を見いだし、物語を紡いだ。
中でも黄道帯の十二星ギリシャの神話文化、さらに占いと結びつき、今も広く親しまれている。
牡羊座

未知の分野にチャレンジする行動力と -ダーシップが備わる。
人生の勝利者になる要素を与えて る星座。 未来のビジョンがどんどん湧いてきて、圧倒的な元気が出てくる。
生け贄にされかけた兄妹を救った黄金の羊
テッサリアの王アタマスは雲のニンフ(妖精)のネペレと結婚し、二人の間にはプリクソスとヘレの兄妹が生まれた。
幸せに見えた一家だったが、やがて国王アタマステバイ王の娘イノに恋をした。彼はネペレを追い出し、イノを妃に迎え入れた。
最初のうちこそ、イノは先妻の子供たちを寵愛した。
しかし、自分の子供ができると態度は一変。先妻の子供たちの殺害を計画したのである。奸計をめぐらした彼女は、まず麦の種を密かに煎り、作物が実らないようにした。
これを悪い前兆であると判断した国王アタマスは、イノに勧められるままデルフォイの神託を仰ぐことにした。
つまり、デルフォイの神殿で神のお告げを聞くことにしたのである。事態を読んでいたイノは、デルフォイへ向かう使者を買収。使者はイノの言いつけ通り、偽りの託宣を国王に告げた。
「神々の怒りが国に飢饉をもたらすであろう。神々の怒りを鎮めたければ、プリクソスとヘレの二人をゼウスの生け贄に捧げよ」国王は悩んだ。
しかし、イノの陰謀で、この託宣はすでに国民の広く知るところとなっていた。つめかけた国民を前に、ついに国王は子供たちを生け贄に捧げることを決断せざるを得なかった。
イノの奸計を悟ったネペレは、ゼウスに子供たちを救ってくよう、懸命に乞うた。
兄妹が神殿の祭壇に引き出され、国王自らが王子ブリクソスの喉に刀を当てようとしたそのときである。
あたりは雲に覆われ、空から黄金の羊が現れた。羊は人間の言葉を話し、兄妹に自分の背中に飛び乗るように言った。羊は、ネベレの願いを聞き入れたゼウスが送ったものだった。
二人を乗せた羊は、呆然と立ちすくむ民衆を置いて、彼方へと消えた。そしてテッサリアの地へは二度と戻らなかった。
その後、他国の王の娘と結婚したプリクソスは、羊をゼウスに捧げた。羊はこの手柄を称えられ、星座に加えられたのである。
牡牛座

人々に愛される、
愛くるしい魅力が出てくる。
ほんとうに価値のあるものを見抜く
審美眼を授かる。
内外ともに豊かに暮らせるようになる。
優雅さが足される。
大切なものは何なのかが
分かるようになる。
白い牛にさらわれた娘とヨーロッパ大陸の由来
フェニキアの王女エウロペの美しさは際立ち、その噂は天上界にも届いていた。大神ゼウスもその魅力の虜になった一人だ。
ゼウスは、息子の中でも一番悪知恵が働くヘルメスに相談し、エウロペがよく散歩をする海辺に牛の群れを連れて行かせた。
そして自分自身も美しい白い牡牛に身を変じて、その中にまぎれこんだのである。
侍女たちと花を摘んでいたエウロベは、白い牛の存在に気づいた。あまりの美しさに目を瞠ったのである。しかも、その牛はおとなしかった。
近づき、頬ずりをしても逃げようともしない。むしろ嬉しそうな顔をしている。
エウロペと侍女たちは角を花で飾り、頭には花冠を乗せた牛に心を許したエウロペは侍女たちの忠告を無視し、牛の背に乗り、波打ち際まで行った。
「ほら、安心よ。こんなにおとなしいんですもの」
牛が突然、勢いをつけて海に入ったのは、それからまもなくのことだった。
侍女は悲鳴をあげるだけで、どうすることもできない。エウロペは、落ちないように、ただ牛の首にしがみついているしかなかった。
振り返ると、海岸線に立っていた侍女たちの姿はもう見えない。牛のまわりにはニンフが舞い、イルカやたくさんの魚が集まってきた。
この白い牛がただ牛でないことに気づき始めたエウロベは、恐る恐る尋ねた。
「あなたは何者なのですか?」牛は威厳のある声で答えた。「神々の王ゼウスだ。おまえを愛するがゆえに牛に変身した。何も怖がることはない」
ゼウスはエーゲ海を泳ぎ渡り、大きな大陸へエウロペを運んだ。二人が結婚し、やがて生まれた一人がミノスである。後に彼はクレタ島の王として君臨し、大いに勇名を馳せた。
ゼウスは、彼女と暮らした大陸にエウロペ(ヨーロッパ)の名前を与え、自分が変身した牡牛の姿を夜空の星座とし、形にとどめたのだった。
双子座

知識を吸収し、知識を使いこなす能力を与えてくれる。
文筆の才、話術、
誰とでもすぐに仲良くなれる社交性、
流行を先取りするセンスが備わる。
互いを思う気持ちは永遠に夜空に輝く神の双子
神々の王ゼウスとスパルタ王妃レダの息子たちで「神の双子」と呼ばれたのが、カストルとポルックスだ。
それぞれ馬術とボクシングにオ能を発揮し、長じてイアソン隊長が黄金の羊を獲りに行ったアルゴ船の航海にも参加した。
途中、船は大嵐に遭い、水夫たちは恐れおののいた。このとき、竪琴を弾いて神に祈り、嵐をしずめたのがオルフェウスであり、乗っていたカストルとポルックスの頭上には、輝く二つの星が現れたという。
以来、彼らは航海の守護神として崇められるようになった。
二人にはイダスとリュンケウスの双子の従兄弟がおり、彼らと牛を捕りに行ったときに、思わぬ争いが起きた。
捕らえた牛の群れを前に、イダスが提案したのである。
「一頭の牛を四等分し、最初に食べ終えた者が牛の群れの半分を、次に食べ終えた者が残りの半分をもらうことにしよう」
しかし、この競争は公平ではなかった。イダスは自ら肉を切り分けながら、カストルとポルックスが食べ始める前にはほとんど自分の分を食べ終えていた。
イダスはリュンケウスが食べるのを手伝い、この勝負に勝ったとみるや、さっさと牛の群れを家に連れて帰ってしまったのである。
怒ったカストルとホル彼らの家に向かった。しかしユンケウスは並外れた視力の持ち主で、樫の木に隠れたカストルらはるか遠くから見つけた。
それを聞いた槍の名手イダスは、棺を投げてカストルを突き刺した。難を逃れたポルックスはリュンケウスを槍で刺したが、イダスは逃走。一部始終を見ていたゼウスは、イダスを雷で撃ち殺した。
カストルを失ったポルックスは自ら命を絶とうとしたが、父の血を強く受け継いでいる彼は不死の存在だった。
「父ゼウスよ、どうか私をカストルのもとへ行かせてください」ゼウスは彼らを夜空に上げ、永遠の双子にしたのだった。
蟹座

人を育成する器量を与えてくれる星座。
人情の機微を解し、繊細な感情のひだと
微妙なデリカシーを
傷つけることなく、
安らぎを与え、
人心掌握し、
相手のふところに
飛び込む能力が備わる。
英雄ヘラクレスに退治された巨大蟹の末路
ギリシャ神話最大の英雄がヘラクレスである。二メートルに近い巨躯。豪放磊落な性格で、勇気と忍耐力の持ち主。
そんなヘラクレスが、女神ヘラの呪いにより妻子を殺害するという大罪を犯し、テイリュンス王エウリュステウスから十二回にわたる危険な仕事を課せられた。いわゆる「ヘラクレスの十二の難業」である。
蟹座の誕生は、ヘラクレスが挑んだこれらの難業のうちの一つに理由がある。
その難菜とは、九つの頭を持つ怪蛇ヒュドラを退治することだった。この怪物は強いばかりでなく、真ん中の頭が不死身だった。
ヘラクレスは、甥のイオラオスが操る戦車に乗り、ヒュドラが棲むという沼に来たが、その姿が見えない。
困っていると、その居場所を女神アテナが教えてくれた。アテナから聞いた洞窟にヘラクレスが火の矢を放つと、まもなく穴からヒュドラが姿を現した。ヘラクレスは、ヒュドラの頭を棍棒で次々に叩きつぶした。
しかし、ヒュドラの首からはすぐに新しい頭再生してくるではないか。
その上、ヒュドラが長い胴をへラクレスの体に巻き付けたところに、ヘラに命じられてやってきた巨大な蟹が加勢した。ハサミでへラクレスの足を挟んだのである。しかし、蟹は思ったほどに強くな
く、ヘラクレスの棍棒の一撃でF 羅が割れ、死んでしまった。やっかいなのはヒュドラの頭である。
名案を思いついたヘラクレスはイオラオスを呼び、近くの森に火を放った。燃えた木をヒュドラの首の切り口に押しあて、頭が再生するのを阻止したのである。
ヘラクレスは最後に残った不死身の頭を剣で切り落とすと、それ地中深くに埋め、山のような大きな岩を重しに置いた。
それからヒュドラの胴体を裂き、胆汁の毒をとって自分の矢の先に塗り、毒矢をつくったのだった。
強すぎるヘラクレスを憎んでいヘラは非常に悔しがったが、ヒュドラに加勢した蟹の功績を認め、星座にした。
獅子座

人々にアピールする力や、
大舞台に強い度胸が出てくる。
自らを演出し、
人生を演出する創造力が備わる。
自在性を与えてくれ、
高尚なものから大衆的なものまで
わかるようになる。
何となく華が出てくる。
勇者を苦しめたネメアの人食いライオン
ヘラクレスに課せられた「十二の難業」の多くは怪物との戦いであるが、ネメアの森に棲む人食いライオンとの戦いは、まさに死闘だったといえるだろう。
そのライオンは、通りかかる村人や旅人を襲っては空腹を満たしていた。これを退治するために勇んで向かった者も、誰一人として戻ってこなかった。
話を聞きつけたティリュンスの王エウリュステウスは、さっそくこの人食いライオンを退治すること、ヘラクレスに課す難業の一つとしたのである。
ネメアまで来たヘラクレスは、ライオンを探し、森をさまよい歩いたが、なかなか見つけ出すことはできなかった。
目当てのライオンの居場所を聞こうにも、近くの住民はみな逃げていないのである。
ようやくライオンを見つけた彼は、まず弓で射たが、弾き返されるばかりで、まるで効き目がなかった。次に剣で斬りかかったが、剣が曲がり、ライオンは何の痛みも感じないようだった。
実はこのライオンは、大地の女神ガイアがつくった最強の怪物テュフォンの子で、体は鉄より硬かったのである。
結局、ヘラクレスは最後の武器である棍棒を振り回し、ライオンを洞窟に追い詰め、素手で飛び掛かった。ライオンの首に手を回し彼はそのまま自慢の金剛力で首
を絞め続けた。少しでも力を緩めればライオンの反撃をくらっただろう。やがてライオンは息を閉じたが、それはヘラクレスが三日三首を絞め続けたからだった。
ヘラクレスは仕留めたライオンの皮を剥ぎ、それを着てエウリュステウス王のもとへと帰った。
しかし、エウリュステウス王は、ヘラクレスの並外れた強さに震え上がり、逆に二度と宮殿に入ってはならぬと命じたほどだった。
ところで、ヘラクレスの父は神々の王ゼウスである。
彼は自分のお気に入りの息子が手柄をたてたことを大いに喜んだ。ライオン星座に加えられたのは、ゼウスヘラクレスの武勇を称え、その証としたかったからである。
乙女座

何事にも純粋に、
真剣に取り組む姿勢と
忠誠心が備わる。
若々しさと
環境を美しく整理整頓して、
物事を手際よくテキパキとこなす
実務能力が出てくる。
地上に冬をもたらした母の深い悲しみ
農業の神デメテルと神々の王ゼウスの間に生まれた一人娘がベルセポネである。
彼女を、冥界の王ハデスが見初めた。ハデスは結婚を申し入れたが、母デメテルは娘を冥界の住人にするのはあまりに不憫だったので、ペルセポネをシチリア島に送り、島のニンフたちに、絶対にハデスには会わせないように頼んだ。
しかし、その程度であきらめるハデスではなかった。
ペルセポネがニンフたちと森に出かけ、花を摘んでいた日のことである。彼女は木陰に一本の美しい水仙を見つけ、それを摘もうとした。その瞬間の出来事だった。
大地が大きく割れ、駿馬に引かせた戦車に乗っハデスが現れたのである。彼はあっという間にペルセポネをさらい、地下の冥界へと連れ去った。
娘がさらわれたことを知ったデメテルは、九日九夜、一滴の水も一切れのパンも口にせず探し歩いた。そして、ハデスの犯行と、そこにペルセポネの父であるゼウスが一枚噛んでいることを知った。
一部始終を見ていた太陽神ヘリオスの口から確認したのである。怒りに震え、半狂乱になったデメテルは、地上のいっさいの植物を枯らしてしまった。
デメテルの怒りを鎮めなければ地上の生物すべてが餓死しかねないと判断したゼウスは、やむなく調停に乗り出
した。その結果、ベルセポネが界の食べ物を食べていなければ地上へ帰還できることになった。それが冥界の掟だったからである。
しかし、ペルセポネは冥界のざくろの実を四粒だけ食べ、それを冥界の庭師が目撃していた。
ゼウスが下した裁定はこうだった。「食べたざくろの実一粒を一カ月とし、四粒で四カ月。
一年にこれだけの期間、ベルセポネは冥界ハデスと暮らすこととする」ベルセポネが冥界で過ごす四カ月は、地上の植物が芽吹くことはなかった。
こうして冬が生まれ、ベルセポネの里帰りとともに春が訪れた。春に見られる乙女座は、母のもとへ帰ってきた彼女の姿であるといわれている。
天秤座

美的バランス感覚、肉体のバランス感覚、
精神のバランス感覚、嗜好のバランス感覚、
栄養のバランス感覚、人間関係のバランス感覚、
社会のバランス感覚など、
すべてのバランス感覚の元をつかさどる星座。
この星座のパワーを受けると、
足りないバランス感覚が補われ、
均衡のとれた日々が過ごせるようになる。
バンドラの箱と女神アストレアの秤
天秤座の天秤は、正義の女神アストレアがこの世の善悪をはかるために使ったものである。では、なぜ善悪のが地上にではなく、こうして宇宙にあるのだろう。
はるか昔、人々は何の苦労も悩みもなく幸せだった。神も地上に降りて人と仲良く過ごした。アストレアがで善悪を計量する必要などなかったのである。
こんな地球上の黄金時代に災いをもたらしたのが、パンドラの箱だった。
パンドラは、ゼウスが泥からつくった女である。バンドラとは「あらゆる贈り物」という意味であり、それは、すべての神々が彼女に一つずつ贈り物をしたからだった。
パンドラは天上から地上の世界に下ってくるとき、一つの箱を持ってきた。中には神々から贈られたあらゆるものが入っていた。
ゼウスからは「決してこれを開けてはいけない」と釘をさされていた。にもかかわらず、彼女は好奇心に駆られ、ついに箱を開けてしまったのである。
箱の中からは、まさしくあらゆるものが飛び出してきた。良いものもあった。しかし、人々に災いをもたらすような悪しきもののほうが多かった。
人はまず裸でいることが恥ずかしくなった。他人を差別し、疑うことを覚えた。他人より優れた存在でいたい、他人より美しくありたいという欲望が生まれた。
こと、学ぶことがいやになったもいた。他人に暴力をふるう人もいた。他にも、悲しみ、憎しみ、苦悩、狭量、嫉妬、怨嗟など様々な感情が世界に渦巻くようになり、争いが絶えなくなった。
アストレアは善悪の秤を持って飛び回り、正しい裁きをしては人間に反省を求めた。しかし、人間たちが変わる様子はなかった。
やがて人間は武器をつくり、貨幣をつくった。欲望はますます肥大化し、争いの規模も大きくなるばかりだった。
忍耐強いアストレアもさすがにあきれ、天上に帰ってしまった。宇宙に輝くのは、彼女が人間に愛想をつかし、放り投げてしまった天秤である。
蠍座

物事の真諦をつかさどる星座。
善悪の結果が出る前の原因の元を見抜く洞察力が出てくる。
戦わずして勝つ知恵を授かる。
人々の視線を集める磁力のような、
惹きつける力が出てくる。
美丈夫オリオンを倒した蠍の一刺し
ギリシャ神話に登場する神々の中にあって、一番美しいのは誰か。諸説あるが、美女の代表が愛の女神アフロディーテだとするなら、美男の最右翼はオリオンだろう。
オリオンの父は海洋の神ポセイド母は女人国アマゾンの女王エウリュアレである。彼は狩猟の才能に長け、海底に立つと頭と肩が水面に出るほどの大男だった。
またオリオンは、恋多き男としても知られる。その死も、月の女神アルテミスへの恋慕が原因だった。アルテミスは処女のシンボルとも言うべき女神である。彼の評判を心配しアルテミスの双子の弟アポロンの
計略にかかり、結局、アルテミスの矢に射られて命を落とすことになったのである。
しかし、オリオンの死については別の説もある。
もともと彼は父に似て粗暴なふるまいが多く、しばしば大言壮語を吐いた。とくに酒が入ると、つい調子に乗って、神々の逆鱗に触れるような発言をした。
「俺様より強く、俺様より狩りがうまい者は、神々の中にもまずいないだろう。もし、俺様に挑戦するほどの勇気がある奴がいるなら、いつでも相手になってやる」
増長する一方のオリオンに対して、神々は相談し、彼をこらしめることで意見は一致した。彼の相手として候補に挙がったのは鮮蜘蛛といった小さな生物だった。
この程度の連中に負けるようなら、さすがのオリオンの高慢な鼻も折れるだろうというわけだ。選ばれたのは一番の嫌われもの、蠍だった。
蠍はふんぞりかえって酒を飲むオリオンの背後に忍び寄り、その猛毒の針を足に刺した。やがて全身に毒がまわったオリオンは、あっけなく逝ってしまった。
蠍は神々にこの功績を認められ、星座に昇格した。オリオンも星座になったが、星座になってからも蠍は大の苦手だった。
だから今もオリオンは、蠍が東の空に昇ってくると、こそこそ西の空に沈み、蠍が東の空に沈むのを待って東の空に昇ってくるのである。
射手座

日常の中で、
どんなことからでも悟りを得る探求心が備わる星座。
目指す分野で、
最高に完成されたものを実現させてくれる力。
何事にもとらわれない視野の広さが出てくる。
歓喜に満ちた日々を与えてくれる。
多くの文人・武人を育てた賢者ケイロンの勇姿
ギリシャ神話には、しばしばケンタウロスと呼ばれる半人半馬の種族が登場する。野蛮で好色な彼らは、邪悪な怪物として扱われることが多いが、ケイロンだけは別格の存在である。
もともとケイロンは、時の神クロノスとニンフのフィリアの間に生まれた子供であり、クロノスが正妻レアの目をごまかすために馬に身を変じ、その姿でフィリアと交わったために半人半馬の彼が生まれたのである。
聡明で温厚篤実なケイロンは、多くの神々から愛された。とくに芸術の神アポロンと、月と狩猟の神アルテミスには目をかけられ、アポロンからは音楽と医術を、アルテミスからは狩猟と弓術の才能を与えられた。
その上、様々な学術や武術をマスターした彼は、多くの人々を助け、名声は広く国中に知れ渡るところとなった。
彼が暮らすべリオン山の洞窟には、いくつもの国の王や有力者の子供が集まってきた。彼は有能な教師でもあったのだ。
その中には、たとえば後にアルゴ探検隊を指揮した、イオルコス王のイアソンがいた。ケイロンは叔父にその命を狙われた幼い彼をかくまい、文武のあらゆる学問をしこんだのである。
さらに、医聖アスクレピオス、勇将アキレウスも彼の教え子だった。
山羊座

現状に満足することのない向上心と
忍耐力を与えてくれる星座。
危機管理能力、
現実界で成功するために必要な用意周到さ、
義理堅さと、
人から絶大な信頼感を得る要素が出てくる。
シュリンクスの笛は恋の思い出
牧畜の神パンの父はヘルメスである。しかし、母については諸説あり、定かではない。
ただ、生まれたときの姿があまりに醜かったために、母は一目見て仰天し、そのまま置き去りにしてしまったという。
彼は山羊の脚をし、頭には角が生えていたのである。子供なのに、顎には髭も生えていた。逃げた母親に代わってパンを育てたのはニンフたちだ。甘やかされたせいか、彼は怠け者だった。
昼寝が何より好きで、これを邪魔されると怒り狂い、周囲にいる者に当たり散らした。怒鳴りつけられた人々はわけがわからず、恐慌に陥った。パニック(恐慌)という言葉はこれに由来する。
パンは好色なことでも知られ、ニンフたちをよく追いかけ回しては口説いた。しかし、彼の誘惑にまったく乗らなかったのがシュリンクスである。
ある日、パンはシュリンクスを執拗に追い、ラドン川まで来た。するとシュリンクスは葦に姿を変え、川岸の葦原の中に身を隠してしまった。
パンが見渡す限りの葦原の中から、彼女を判別するのはもはや不可能だった。
やむなく、彼は思い出に一本の葦を折り、それで笛をつくった。葦の笛をシュリンクスと呼ぶようになったのはこのためである。パンは生涯、この笛を手放さなかった。
怠け者のパンだったが、音楽や舞踊の才能には恵まれていた。お気に入りのシュリンクスの笛を持っては神々の宴席に出向き、陽気に演奏し、踊った。
事件は、ナイル川ほとりの祝宴中に起きた。いつものようにパンが笛を吹き、場を盛り上げていると、そこへ怪物テュフォンが乱入してきたのである。
テュフォンは大地の女神ガイアが創造した最強の怪物だ。
神々は我先にと逃げ、バンも川に飛び込み、魚に変身して逃げようとしたが、あわてふためいた彼は下半身こそ魚になったものの、水から出ている上半身は山羊の姿だった。
その姿があまりにおかしいというので、神々は星座に加えることにしたのである。
水瓶座

衆知を集めることのできる公明正大さや
新しく時代を先取る独創性を与えてくれる星座。
スケールの大きな、
常識にとらわれない自由な思考を持つようになる。
心温まる友情の精神と、
さわやかな魅力が出てくる。
神にさらわれたトロイアの美少年
神々はギリシャ北東部の高峰オリュンポスの頂に暮らしていた。しばしば祝宴を催したが、その際に酌をするのは青春の女神ヘーベの役目だった。
彼女は大神ゼウスと后ヘラの娘である。やがて彼女が結婚し、代役が必要となった。
そんなとき、ゼウスが地上を見下ろしていて、すっかり心を奪われてしまったのがトロイアの王子ガニュメデスだった。
黒く澄んだ瞳、ピンクに輝く唇、栗色の髪の毛…….。
ガニュメデスの存在は近隣諸国でも評判であり、その美しさは女性が嫉妬し、男性さえも魅了されるほどだった。
ゼウスはこの美少年をヘーベの代役にと考えた。
いや、この際、自分の従者にしてしまうつもりでいた。欲しいものはどんなことをしてでも手に入れなければ気がすまないゼウスは、さっそく行動に出た。
自ら一羽の大鷲に変身したのである。そして勢いよくトロイアの国に舞い降りていった。
羊の群れを追っていたガニュメデスを襲い、大きな爪の両足で彼を捕らえると、あっと言う間に連れ去ってしまった。
恐怖に震えるガニュメデスは大声で叫び、下界の人間に助けを求めたが、巨大な鷲の前ではまったく無力だった。
オリュンポスの山に帰ってきたゼウスは元の姿に戻り、その真意ガニュメデスに告げた。
「私は神々の王ゼウスである。おまえが私の傍らにいて酒を注いでくれるなら、永遠の若さと美貌を与えることにしよう」
ゼウスはさらに伝令の神ヘルメスをガニュメデスの両親、トロイアの国王夫妻のところに遣わした。ヘルメスに事情を説明させるとともに、不死の牝馬二頭と、鍛治の神ヘファイトスがつくった黄金の葡萄の木を贈った。
ゼウスの心遣いはそれだけではなかった。ガニュメデスが水瓶を抱える姿を夜空に輝く星座とし、いつでも会えるようにはからったのである。
また、水瓶座の近くに位置する「鷲座は、ガニュメデスをさらった鷲である。
魚座

報恩の情と無私の愛、
いざという時に捨て身になれる潔さが備わる
人々に夢と希望と勇気を与える力が湧いてくる。
人の痛みを我がこととして、
これを和らげる力が出てくる。
怪物に襲われた美の女神とエロス
大地の女神ガイアは、神々の王ゼウスの祖母にあたる。しかしゼウスは、宇宙を支配するために、ガイアの子供たちである巨神族を倒さなければならなかった。
ゼウスの軍門に下ってからも、巨神族はしばしば反乱を起こし、その都度鎮圧されては殺された。ゼウスたちの本拠であるオリュンボスの山を見下ろせるほど高い山をつくろうとして、やはりゼウスに殺された巨神族もいた。
怒りが収まらなかったのはガイアである。宇宙の秩序を乱したとはいえ、自分の子供が次々に殺されるのは我慢ならなかったのだろ
う。ゼウスに復讐するために、史上最も忌まわしい怪物テュフォンを産み落としたのである。テュフォンは、蛇と龍をつなぎ合わせたような体をし、頭は百個。
そのすべての目から火を吹き出した。黒い舌を持つ口は、獅子や犬の声を出したかと思えば、神々の声を真似することさえできた。オリュンボスの神々もさすがにこの怪物を恐れ、見ればすぐに退散した。
ゼウスもガイアに遠慮し、あえて戦おうとはしなかった。
ある日、美の女神アフロディーテが息子のエロスと川岸を散歩していたときのことだ。突然、テュフォンが目の前に現れたのである。二人は川に飛び込み、魚に姿を変えて難を逃れた。はぐれてはいけ
ないというので、体を紐で結び付けたのが魚座の姿である。二人の姿がユニークで面白いというので、ゼウスが星座にしたのだ。
しかし、ゼウスは面白がっているばかりではなかった。いよいよテュフォンの制圧を決意した。両者の戦いは壮絶を極めたが、ゼウスは雷を浴びせ、テュフォンを現在のイタリア沖まで追い詰めると、海から島を一つ拾って投げつけた。
その下敷きになったテュフォンに、もはや反撃の力はなかった。しかし、不死身のテュフォンは、まだ生き続けているとも言われる。
彼が下敷きになった島こそシチリア島であり、今も島のエトナ山はときどき噴火する。もちろん、テュフォンの仕業である。
