どうしても黒字になってしまう体質の会社にするには ~ボイスジャーナルVOL.30 (平成7年)~
流通のクッションを抜け
先月は「安全化思考」ということについてお話ししましたが、今月は「流通のクッションを抜く」というテーマでお話をしたいと思います。
このテーマはもちろん、「安全化思考を乗り越えていく」というテーマにも繋がるわけですが、「利は元にあり」ということを、皆さんはよく耳にすると思います。
それで、「利は元にあり」とはどういうことかというと、利益は元へ元へと行くほど大きくなる、と。
つまり、元締めにならなければいけないということです。
商社でも販売会社でも製造業でも、下請けに頼んだり、あるいは、モノ仕入れたりして売っているとします。
そうすると、粗利益がそれなりにはあるのでしょうが、それでは思うように利益が出ません。
家賃、人件費、広告費等を払いますと、利益が出ることは出ても、うんと出るとは限りません。
それでは、次にどうするかというと、並の人は、経費を削減していこうとし、ます。人件費や広告費、管理費等の経費を削減して利益を出していこうとするわけです。
もちろんそれは正しい努力だと思います。しかし、言ってみれば、それは普通の努力であり、誰でもするようなことです。誰でもすることを、誰でもするようなレベルで努力していたら、誰でもできるような、悪くもなく良くもなくという程度の会社にしかなりません。
しかし、大きく利益を上げていこうとするならば、「利は元にあり」ということで、流通のクッションを抜いていかなくてはダメなのです。
具体的にはどういうことかというと、たとえば、いままでは他から仕入れていたのを自分でつくるようにする、と。自分で下請け工場をつくるとか、あるいは、下請け工場と契約して直仕入れる、と。
そうすると、流通クッションが抜けます。次に、仕入れたモノをお店に卸していたのを、直お客様に売るようにする。
すると、直ユーザーですから、また、流通のクッションが一個抜けます。つまり、一個下へ潜った分と一個上へ上がった分だけ、流通のクッションが二段階抜けますから、その分だけ、粗利がガーンと上がるわけです。
「直末「端に」というのと「直製造に」ということで、流通のクッションが元へ帰っていく。これが「利は元にあり」ということです。
だから、工場と契約していく。そして、工場と契約したら、次にその工場を買い取る。それから、その工場が日本国内から資材を仕入れていたら、これを直輸入にする。
すると、今度は「利は元にあり」で流通がワンクッション抜ける。いまは特に円高(一九九五年当時)ですから、自分で足を運んで、外国か仕入れるようにすると、その分だけまた安くなります。
そのように、契約していた下請け工場を買い取ってもいいし、資本参加してもいいし、もちろん専属契約してもいいんですが、うーんと流通のクッションを抜いて安く素材を仕入れて、その分だけ安く自分のところに納入してください、と。
契約なら契約でそういう契約にしたらいい。自分の工場にしてしまったほうがいいと考えるなら、買い取るなり資本参加するなり、何らかの方法を取ればいいのです。
そういうことは簡単にできますが、いずれにしても、外国から材料を直輸入して仕入れると、うんと安くつくれます。
こういうふうにコストダウンしていく。もちろん、それに関する諸経費、工場の製造原価をうんと下げるためには、さらに元に潜っていく。
そうやって利益を出していく努力をすると、粗利率はさらに上がります。
今度は工場を、たとえばアフリカにもっていくとか、中国にもっていく、あるいは、オーストラリアにもっていく、と。
素材や資材を輸入するのではなくて、炭鉱を買収して自分で地面から掘って、安く入れていく。たとえば、住友金属とか住友グループあたりの企業はそうやっています。
そういうことで、自分で採掘して炭鉱をもつ。三井鉱山、住友林業あたりは自分で木を伐っています。
その伐り出した木材を売買して、もちろん利益も出るでしょうけれど、自分で穴を掘って資源や資材を入れると、「利は元にあり」で、利益が膨らみます。
そうやって資材を安く仕入れられるようになったら、今度はすぐそばへ工場をもってきて、現地の人を雇用する。そうすると、またうんと安くしていけま 5
す。それを直末端のユーザーに売りますと、流通過程をフォークッションもファイブクッションも抜くことができます。
ミキプルーン、成功の秘訣
たとえば、健康食品の訪問販売で有名なミキプルーンは、アイテムがそれほど多くはありません。
あまり多いと消費者が分からなくなってしまうということで、アイテムを何種類かに絞っています。
そのミキプルーンですが、やはりアメリカにプルーンの農園を持っています。
契約栽培の農園を持っていて、そここで栽培したプルーンを現地工場で製品化しています。農園のすぐそばの工場でつくっているのです。
そうやってアメリカでつくった商品を日本で販売しているわけです。
だから粗利は、九割ぐらいあるのではないでしょうか。
その分、訪販する人にマージンをあげる。
だいたい訪販の場合は、一個売ったらいくらというかたちでマージンを渡してあげないと、なかなか売ってくれません。
ポーラ化粧品は、化粧品を一個売りますと、五十パーセントがポーラ化粧品のセールスの人に入ってくるんだそうです。
それにもかかわらず、会社は会社で儲けがあるのですから、ポーラ化粧品の原価はおそらく一掛け以下でしょう。
三パーセントか五パーセントぐらいのものではないかと思うんですけれど、ポーラ化粧品はそうやって自分の工場で商品をつくっているわけです。
ミキプルーンの販売員はいま七万人ぐらいいるらしいのですが、そのなかでも特によく頑張っている人は六千人から七千人いるそうです。
サッチャーさんを囲む会のときに、ミキプルーンの営業部長とお友達になりまして、それ以降、何回か一緒にゴルフをしましたが、その営業部長がそう言っていました。
アメリカに農園と工場を持って、そこでつくっているんだそうです。
パースから直輸入しているステーキハウス「あさくま」
同じようなやり方をしている会社として、名古屋に「あさくま」というステーキハウスがあります。東京・世田谷の砧にもありました。
そこは最近退いたらしいのですが、あさくまのお店は全国にありまして、名古屋では有名なステーキハウスです。
そこの社長さんとは、パースのゴルフコンペがあったときにご一緒しました。
ハイネケンクラシックのとき、プロアマで私が呼ばれて行ったことがあるんですが、私はそのときにグラハム・マーシュと一緒にコースを回りました。
グラハム・マーシュは無料でブラインドゴルフのアドバイザーになってくれていましたので、グラハム・マーシュと私はお友達です。
そのグラハム・マーシュが参加するんだったら私も出るからということで出たのですが、そこのマネージャーがグラマム・マーシュと私を知っていた人なので、同じ組で回ることになったわけです。
そしてゴルフのあと、グラハム・マーシュが借りている家に呼ばれて、一緒にビールを飲んで楽しい一時を過ごしましたが、そのときに、仙人とまではいかないけれど、風貌のちょっと変わった人がいて、名刺交換をしたら、ステーキハウス「あさくま」の社長さんだったんです。
そのあさくまは、横浜・鶴見にもお店があったので、その店に入ったら、安くて量が多くておいしかったんです。
名古屋で有名なお店ですから、当然、競争が激しいんでしょう。安くて量が多くておいしくて、さらにセットメニューでおまけが付いていないと名古屋では生き残れません(笑)。
そういう名古屋からチェーン店をつくっていって、大成功しているんです。
直末端ユーザーで自分が使っているんだけど、その値段で買って、安くて量が多くておいしくて、おまけのセットが付いてということですから、研究したんでしょう。全国に三十店舗ほどお店があるはずです。
その人とその人の奥さんと一緒になってお話を聞いたんです。そうしたらご主人は、「また明日はバリ島へ仕事に参ります」と。
「えっ、ゴルフじゃないんですか」と聞くと、「いや、仕事です」と言うんです。
ところで、「中納言」というお店があります。最初から最後まで全部伊勢エビ、というお店です。
「もう結構…」というぐらい、全部伊勢エビなんです。なぜ中納言というかというと、そこのオーナーが堤さんという人なんです。
兵庫の西宮が本社で、そこの若社長が同志社大学を中退してニューヨークに行ったらしいんですが、同志社出身ということで一緒にお話ししたことがありますし、ゴルフも一緒にしたことがあります。
それで、なぜ中納言というのかというと、オーナーの家が堤さんで、堤といえば、平安時代の後期以降に成立した短篇物語集に『堤中納言物語』というのがあって、「堤といえば堤中納言だから、中納言という名前ができたんです」と言うんです。
その中納言がやはり伊勢エビをパースで仕入れているんです。パースの伊勢エビを捕るライセンスは七社しか持っていない。
その中の一社を買い取って、そこで伊勢エビを買って日本へ送っているんだ、と。日本の伊勢エビの自給率は一割か二割ぐらいしかないらしいですから、ほとんどが輸入ものです。
もちろん伊勢エビは、日本のほうがおいしいんですが、いま申しましたように、自給率が低くて少ししかありません。
パースの伊勢エビは甘くておいしくて、それでいて大きすぎない。シドニーあたりに行くとバカでかい伊勢エビがありますが、味が雑なんです。
結局、パースというところは、それだけ海のものが多くて、漁船も来るから、そこで伊勢エビを仕入れているんだ、と。
あさくまさんもそこから買っているのかもしれませんが、要するにバースに来て、お店で使う魚類、エビ、それからお肉などを、パースから直、自分の会社に輸入することで、流通をツークッションもスリークッションも抜いているわけです。
魚河岸とかで買ってやっていたら、あれだけ安くおいしいものは手に入りません。だから、流通クッションを抜くために、魚河岸からではなくて自分で直輸入する。
ビーフも直輸入。エビも魚も、そして、ドレッシングなどにしましても、全部自分で足を運んで、そして直輸入しているのです。
その分だけ、流通がツークッション、スリークッションと抜けます。自分で買い付けして、直輸入してやっているわけですから、十分に利益が出ます。そうすることでお客さんに安く提供できるから、他のお店と比べて、値段で勝って、量で勝って、味でも勝つ。
だから「あさくま」さんは、お店がどんどん成功してチェーン化していくわけです。
「中納言」さんもそうです。伊勢エビをたっぷり食べても、他の店ほど高くない。
安いとまではいかないけれど、エビがたっぷり入っていて、そんなに高くない。
中納言では、ライセンスのある会社を買い取って、自分で仕入れて自分の会社に輸出しているんです。もちろん別会社にしてです。
伊勢エビで有名な中納言も、ステーキハウスで有名なあさくまもみんな、いま私が申し上げたように、「利は元にあり」という原則にしたがって、ワンクッション、ツークッション、スリークッションと流通を抜く努力をしているわけです。その結果、いいものを安く仕入れて直お客さんに提供できるから、粗利益もがっちり取れて、値段と品質で勝つわけです。
さらにサービスを徹底していったら、他の店に競争で負けることはないはずです。
そういうことで、誰もがやるような方法で仕入れて、誰もがやるような方法で売って、誰もがやるような方法で経費を削減して、「まあ利益が出たね」という普通の平凡なやり方をしていたら、平凡で普通で、「まあまあ良くもなく「悪くもなく」という利益しか出ないわけです。
それに対して、いま申し上げたあさくまさんでも中納言さんでも、それだけのことを飛び越えてやっているわけです。
>時計商社における流通の抜き方
そうやって苦労しながら、元へ元へと潜っていく努力を徹底してやってきましたし、いまなおそれは変わりません。
予備校のほうでも、印刷は板橋の印刷工場まで直接行きます。広告代理店でも、大きいところは下請けのデザイン事務所に頼み、下請けのデザイン事務所は自分のデザインしたものを印刷所に頼む。
印刷所は印刷所で、下請け工場に頼むわけです。
板橋に小さい印刷工場を発見してからは、広告代理店のクッションを乗り越えて、下のデザイン事務所も越えて、さらに印刷所を越えて、印刷工場まで自分で足を運んでやるようにしています。
そして、「Q数(文字の大きさ)はこれ、書体はこれ、色はこの色で」と、全部、自分で指示します。色校正は特に赤色と青色と緑色が難しいんですけれども、「こうでございまして」と、こと細かに何度も指示を出しています。
もちろん、大量で、しかも、素晴らしいデザインが必要なときは、デザイン事務所や広告代理店に頼んでやらなければなりませんが、ちょっとしたパンフレットや、ちょっとした予備校の合宿案内のチラシでいちいちそれをやりますと、大変なコストアップになってしまいます。
ですから、流通のクッションをいくつか抜くために、自分で板橋や群馬県の桐生まで持っていってやりますと、経費が三分の一ぐらいでできるわけです。
また、印刷物の納期についてですが、印刷所はゆとりを持って、「納期は一週間から十日ほどかかります」と言うんです。
しかし、直接頼めば、だいたい三日以内でできます。コンスタントにお客さんがこないとやっていけないから、一生懸命やるわけです。
予備校でもそうやって四つほどクッションを抜いています。
いま頼んでいる印刷所でできない場合は、たとえ料金が高くても、大きい印刷所へ頼みますが、何でも全部が全部任せきらないで、クッションを抜けるところではうんと抜く努力をし続けているわけです。
黒字体質の会社の共通項は「利は元にあり」
いまお話ししてきたことをまとめると、「これでいいや」と思っているよう安全化思考の会社では絶対に利益が出ない、ということです。
逆に、「利は「元にあり」ということで、原価を徹底的に下げる努力をし、さらに、流通のクッションをいくつも抜く努力をしていけば、確実に黒字になる。
どう転んでも黒字にしかならないわけです。それを周知徹底し、私が自ら実行し続けています。
だから、そういう会社は経営者が違うんです。経費の削減をちまちまやるのではなくて、粗利益をガッチリ取る。そのためには、「利は元にあり」です。
流通クッションをワンクッション、ツークッション、スリークッション、フォクッション抜いて、元へ元へ元へと帰っていく粘り強い努力。何としてでもそれをやっていこうという努力がないと、絶対に黒字体質の会社にはなりません。
私はそう信じて疑わないし、人にもそう言っています。何よりも、私自身が実行しています。
いまなおそういう努力をしていて、安直に仕事をやる習性にならないように、絶えず社員にアドバイスしています。
いつも元へ元へと帰っていく私の粘り強さは、学術的な面でも生かされています。
たとえば、「この説に対して、なんでこの理屈が成り立つのか」とか「この資料はどこから来ているのか、何がヒントで、なぜこんな原因になったのか」などなど、絶えず元へ元へと帰っていって、徹底して究明します。
アカデミックな勉強も結局は同じなのです。「深い見識は元にあり」です。古典に帰っていって、さらに、その古典はどこから出た古典なのか、という具合に、元へ元へと帰っていく。
そういうことで、「どうしても黒字になっていくという黒字体質の原則」というのは、私が申し上げたところにあるわけです。
学術的なものの考えとか、文化的なものの考え方にしましても、そこが一番大事であって、これはもうすべてに当てはまることです。経営の本質というものとまったく同じなのです。
(終)
価格競争に勝つ! ~平成13年4月21日 チサンホテル神戸~
価格破壊で勝った「ユニクロ」
今日は「価格競争に打ち勝つ」というテーマでお話ししてみたいと思います。
最近では「価格破壊」という言葉がありますけれども、「人格破壊」という言葉もありますよね(笑)。
ところで、価格破壊ということでは「ユニクロ」が有名ですが、皆さんのなかで、ユニクロを知らない人はいますか?知っている人?行ったことがある人?行ったことがない人?
私は行ったことがないんですけれど、先日、Iさんが目をキラキラ輝かせて、「ユニクロってすごいですよねえ」と言うんです。
ちょうどそのとき、二月末か三月末の決算で、その数字が新聞に出ていました。年商が四千億円。
そして経常利益、すなわち、税引き前の利益が一千四百億です。
売上が四千億円で、税引き前の利益が一千四百億円。ということは、いったい粗利がいくらあるんだ、と。
計算すれば約五十パーセント、半分ぐらいは利益です。ですから、まさに価格競争に打ち勝っているわけで、「だから、ユニクロってすごいね」という話をしていましたら、Iさんが目をキラキラと輝かせて、「実は先生、このバッグ、ユニクロで買ったんです」と言うわけです。
この間、お母さんと行ったらしいんですが、色もおしゃれで、何かツルツルしていてふわふわしているんです。内側にも外側にもポケットがあって、何かパリパリパリとくっついたり離れたりするのがいくつもあって、「先生、この大きいバッグが何色もあったんですけど、これがいくらだったと思いますか?」「いくらかなあ」と。
まあ、ふつうだったら六千円とか七千円しそうなバッグなんですけれど、それが千四百円だ、と。
「えっ、千四百円!」。ふだんは千九百八十円で売られているものが、そのときはバーゲンで千四百円だった、と。それでお母さんも目を丸くして驚いて、結局、ベージュ色と赤色の二色のバッグを買ってきたというんです。
だからもう、多くの人がユニクロに行く。特に子どものいるお母さんなんかは、みんなユニクロです。
去年(二〇〇〇年)出した、ふつうの木綿のようなサラッとした生地の商品がヒットして、前年と比べて売上が二倍、二千億円から四千億円です。六千円はするだろうなあと思う商品が、三分の一ぐらいのイチキュッパ(1980円)の値段で売っているわけです。
それで粗利が半分あるというんですから、製造原価というか、卸価格はおそらく三百円か四百円ではないでしょうか。
それなのに、デザインがおしゃれで、本当にいい色を使っていて、しかも、使い勝手がいいように二重にも三重にも工夫してあるんです。
Iさんが買ったバッグにしても、持つだけではなくて、肩にかけられるようになっているんです。
だから、使い勝手がいい。さらにデザインもよくて、色もよくて、素材もまあまあいい、と。メチャクチャ安くて、メチャクチャ格好よくて、そして使いやすい、というように三拍子そろっているわけです。
ところで、関東のデパートの中で三越は、いま全くダメですね。コンピュータ化される以前、証券取引所の立会場という株式を売買する場所では、いろいろなジェスチャーで銘柄を示していましたが、三越を表すときには指を三本出して、どうのこうのとやっていました。
指を三本出してこうやるのは三越という意味なのです。
三つを越えるから。それだけでもう、手話みたいに通じるわけです。
キリスト教ではイエスが降りてくるのを「主は来ませり」というんですけれど(笑)、とにかく、その三越は、いま全然お客さんが来ないんです。
それで、三越のワンフロア全部にユニクロが入ったんです。私の会社も髙島屋に入っていますけれど、だいたい売上の十パーセントか十五パーセントを支払うんです。
二十五パーセントや三十五パーセントというところもありますけれども、三十五パーセントだったらもうやっていけません。
だいたい十五パーセントとか二十パーセントぐらいを売上から場所代として、デパートに支払うわけです。
まあ、そういうことで、三越が売上の十五パーセントとか二十パーセント、二十五パーセントを場所代として取っても、ユニクロは粗利が半分あるんですから、その値段で売っても大丈夫なんです。
だからユニクロはデパートなどから、「ユニクロさん来てください、来てください」と言われるわけです。
ユニクロが入れば、お客さんがドーッと来ますから、デパートとしては、ユニクロに入ってもらいたいわけです。
そういうことで、ユニクロは売上が昨年の二倍です。そんなに安いのにそれだけ儲かっている。
経済記事を読むと、「高利益率体質」と書いてあります。あれだけ安くて、あれだけデザインがよくて、あれだけ生地がよくて、あれだけ便利がいいのに、高収益の体質だというわけですから、どうなっちゃっているのかと思うではないですか。
まあ、中国で大量につくっているから安くできるんですけれども、それだけデザインと色と使い勝手を研究して、さらに消費者のニーズも考えて、そして大量に仕入をして、コストを落としているわけです。
それから、衣料の価格破壊だけではなく、お肉の価格破壊というのもあります。松阪牛のようなお肉は、百グラムあたり数千円はします。
ところが、百グラム八十円とか八十八円で、百円を切っているところがあるんです。
それなのにおいしい。そこのお店もまたメチャクチャ繁盛していて、お肉の価格破壊です。
もちろん、お肉は全部輸入物なんですけれど、その低価格だからお客さんが買っていく。
味はいいし、安いし、量も多い。もちろん価格が安いということは、その分だけ買えるわけです。いま経済はデフレ傾向ですから。
効率的な経済の勉強の仕方
デフレって何なんだ、と。もちろん、インフレの逆なんですけれど、値段が下がっていって、最初は消費者にとってはありがたいんですけれど、モノが溜まってしまって売れないんです。
デフレとかインフレとかというのは、もっともっと深い意味があります。それで、そういう意味を調べたりする場合は現代用語辞典で調べるんです。
菱研会員の皆さんは、少なくとも経営とか経済を勉強しようと思って入っているわけですから、「現代用語の基礎知識」とかの現代用語辞典で用語を調べなければなりません。
もう少し詳しいことを勉強する場合は、有斐閣から出ている経済用語辞典等を買って勉強することです。
日本経済新聞社からも出ていますし、日経新聞には「きょうのことば」という、新しく出てきた言葉の説明が掲載されています。
そういう経済用語の解説を読むことで、経済の理解が深まっていくのです。
経済学部を卒業した人でも、商学部を卒業した人でも、経営学部を卒業した人でも、日経新聞の内容が全部分かる人はまずいません。
そもそも、日経新聞の記者自身が経済のことをよく分かっていませんから、もしも分かっているくらいなら、自分がビジネスをやっているはずです。
しかし、「不況だ、不況「だ」と消費者を煽っているから、不況から脱却できないんだ、と。
「いまの不況の原因は日経新聞だ」と言っている人もいるくらいです。とにかく、日経新聞を全部理解できる人はほとんどいないのではないでしょうか。
ですから、一つずつ、「きょうのことば」を読んで勉強していく。あるいはまた、「経済記事の読み方」というような本もたくさん出ていますから、そういう本を読んで経済記事が読めるようになったら、相当経済に精通してきます。
ひと口に経済といいましても、実務的な部分は商学部で学びます。経営学部では、経営分析や経営とは何か、という理論を学ぶんです。
実際、中小企業の経営者でしたら、月次決算の見方が分からなければいけません。
年次決算では遅すぎます。
会社が潰れてから、今年はどうだったかなんて分析しても遅いわけです(笑)。
ディンギーヨットと同じです。
風向きが絶えず変わっているわけですから、毎月毎月締めて、毎月毎月棚卸しをしっかりやって、いくら在庫があるのかが分かっていないといけません。
そうしなければ、損益計算書が出てこないんです。だから、期首在庫、期末在庫、月初めと月の終わりの在庫数の違いを見て計算する。そうすると、いくら在庫が動いたかが分かります。
それから、平均粗利というのがあります。平均粗利率を掛けると、だいたい粗利計算ができるわけです。
モノがない場合はもちろんサービスですから、総売上の中から売上原価を引くと粗利益です。
そういうことで、粗利益とは何なのか。荒々しい利益なのか、それとも、お肌が荒れる利益なのか、と(笑)。
経常利益とは何なんだ。みんな「けいつね、けいつね」と言いますけれど、けいつねって何なんだ、経常利益って何なんだ、営業利益と営業外利益って何なんだ、損益計算書って何なんだ、と。
ビジネスマンがごく当たり前に使っている言葉でも、たとえば、文学部や社会学部とかを卒業した人は、知らない人が多いですね。OLの方なんかも知らないことが多いんです。
ところでそのOLというのは、もちろん、オフィス・レディのことなんですけれども、OLって「オレはラージ」のことなのかなあ、それとも、「オンナのラージ」のことかなあ、と(笑)。
皆さんのなかで、「ところで、先生はさっきから何を言っているんだろう?経常利益って何?損益計算書って何?」と首をひねっている人はいないでしょうね。
皆さんのなかで、決算ということが分からない人はいないと思うんですけれど、もしいたら、その人は、「人生の決算が来た」と(笑)。
百科事典はこうやって活用する
とにかく、経済用語の意味が分かってきたら、経済の全容が分かります。たとえば、論文を書くにしても、レポートを書くにしましても、いったいどこか書き始めていくのか。
「この課題について答えなさい。レポートを出しなさい」、あるいはまた、「松下幸之助について報告しなさい」とか「当座預金について来月、報告しなさい」という課題が出たとします。
そのとき、当座預金についてどう調べるか、なんです。
たとえば、何かモノを調べたいときにはどうするかというと、それは百科事典がいいんです。
百科事典が一番よくまとまっています。もちろん、人名辞典などもありますが、百科事典や人名辞典は、要するに一般のふつうの人や、経済の専門家ではない人のために書かれています。
ですから、たとえば当座預金について調べると、「これは経済用語の一つで」とか、「銀行には当座預金口座と普通預金口座があって、普通預金には金利がつくけれども、当座預金には金利がつかない」とか、「しかし、当座預金口座がないと、手形とか約束手形は当座から落とすので、当座の金があったらここに預金しましょう。これが当座預金の言葉の発祥である」と……。これはギャグですよ、真剣に考えないでくださいね(笑)。
とにかく、そう書いてあったら、「ああ、そういうことか」ということで理解できます。ですから、ビジネスのことでも経営のことでも経理のことでも財務のことでも、「分からない、分からない」と言っているだけではなく、きちんと言葉を覚えておいて、そして家に帰ってから百科事典を引くんです。
そうすると、「ああ、当座預金ってこういう字を書いて、こういう意味だったんだな」というように分かっていくわけです。
当座っていったい何なのか。会社を立ち上げ、手形取引を始めようとする場合、当座預金口座をつくらなければなりません。
しかし、銀行もすぐには開設してくれません。一般の会社員が、「当座を開きたいんですけど」と言っても、「当座ですか?」と言われます。
そんなに難しくはありません。もちろん、すぐに開けるんですけれども、小切手とか手形の場合はもう当座でなければいけない。普通預金ではダメなんです。その代わり、当座預金は利子がつかないです。
そういうふうに、「そもそも当座とは何なのか」というところから分かりやすく書いてあるのが百科事典です。
それから人名辞典も、人物については分かりやすく書いてあります。たとえば、明治二年に株式会社を初めてつくった関東の人が渋沢栄一で、関西では五代友厚である、というように分かりやすく、
かつ相当詳しく載っています。だから、百科事典や人名辞典が、大きな枠組みを理解するのには一番いいんです。
次に、経済学部とか商学部とか経営学部とか、あるいはビジネスの専門学校とかで、もうちょっと詳しく、たとえば、「今後、当座預金はこうなっていくだろう。オンラインシステムでこうなっていくだろう。
コンピュータシステムでこうなっていくだろう。世界の当座預金がこのようにコンピュータで管理されて、このようになっていくだろう。
インターネットの発達によって当座預金がコンビニエンスストアで開設されるとこうなるだろう。そこでこういう問題が起きてくるだろう」なんていうような、もうちょっと突っ込んだ内容になってきたら、経済用語辞典で調べるんです。私が大学に入ったときには有斐閣の本が比較的よく使われていましたが、いまはいろいろな出版社から経済用語に関する辞典がたくさん出ています。一番オーソドックスなのは、日経新聞から出ている辞典でしょうか。
百科事典を引いて大枠を理解し、次にもう少し専門的になってきたときには、経済用語辞典で調べたら、とても役に立ちます。
経済用語辞典があれば、中身と理解が広がっていきますから、一年経ったら相当詳しくなっているはずです。
OLとか主婦で、なんでこんなに詳しいんだろう、という人がいたら、それは経済用語辞典を見ているからだ、と。
百科事典にしても、平凡社から出ている「世界大百科事典」とかがあります。もちろん、あれほどまで大げさなものを買わなくても、ふつうに売っている百科事典で十分です。
いまなら、パソコンでも百科事典のソフトがあって、単語を入力したら、その言葉の意味や解説が全部出てきますし、人名をもっと詳しく調べようと思ったら、人名辞典というソフトもいまはあります。
百科事典よりももっと簡単で短くて、時事問題についても解説しているのは現代用語事典です。
人名辞典は、その人はいったいどんな人物で何をした人なのか、ということを詳しく調べるときに役立ちますが、三省堂の「コンサイス人名辞典」あたりがいいでしょう。
もちろん、人名辞典も日本編と外国編と両方があります。
英語も、イディオムとかセンテンスが分からないといけないなんて言われていますが、単語が分かったらだいたい話せます。
「cat, kill, yesterday, die. heaven」という単語を並べただけでも、「ああ、猫がどこかで殺されて、死んで天国へ行ったんだなあ」と伝わります。
連想ゲームみたいなものです。いくつか単語を並べただけで通じます。ですから、とにかく単語を覚えないと話になりません。
だからもう、百科事典が一つあれば十分です。もちろん、「現代用語の基礎知識」などがあればさらにいいでしょう。その現代用語事典はいま、複数の出版社から出されています。
ということは、よく売れているということです。現代用語事典には百科事典に出ていないような流行り言葉も載っています。
「うざい」とか「うざったい」という言葉が最近よく使われているようです。
それから「タメ口」というのもあります。
「タメ口って何?為五郎は知っているけど」と(笑)。タメ口とは、「対等」とか「同じ」を意味する俗語である「夕メ」に、「口ぶり」をつけたもので、対等な言葉遣い、つまり友達口調を意味します。
ですから、同僚に対するようなタメ口を上司にきけば、もちろん目上に叱られる、と。そんな言葉も載っているのが現代用語事典です。
経営とかビジネスとか会計用語とか、そういう用語もみんな百科事典で調べたほうが分かりやすく、一般の人でも理解しやすいように大枠が書いてあるので分かりやすいわけです。
こういうように、モノを学んでいく手法が分かったら自分で調べられるのです。
もちろん、経済学部でも商学部でも、経済を学ぶときには経済用語辞典から入っていって、それから、さらに専門の事典を見たほうがいいでしょう。初めから専門的な事典を見たら、複雑すぎて分からなくなります。
仏教のことを勉強する場合も同じです。まず百科事典から入っていって、もっと詳しく知りたい場合には、仏教事典で調べていけばいいのです。
神道でもっともスゴイのは「神道大系」です。全巻で二百何十万円するんですけれど、すべての神道用語と意味が載っています。
松下幸之助さんが寄付をして、肝煎りでつくったんです。それで、私たちは神道国際学会を結成し、「神道大系」をいろいろな大学に寄付しています。
もう「神道大系』の在庫はないようです。「神道大系」をわれわれは購入して、コロンビア大学やオスロ大学、浙江大学などに寄付しているんですけれど、この「神道大系」があれば、何でも分かります。それ以外に神道事典とか神社事典とかもあります。
そういうふうに大きな枠組みを理解して、それから深く理解していくという勉強方法が一番理解しやすいわけで、最初から細かいことや専門的なものを学ぼうとすると、かえって分からなくなってしまいます。
だから、初めのうちは大枠をあっさりと理解して、それからだんだんと専門的なことや突っ込んだ内容のことを勉強していく。そうすると、頭の中で整理できます。
皆さん、今まで百科事典をどう使っていいのか、分からなかったのではないですか。百科事典をフルに活用している人は意外に少ないものです。
