カルロス・ゴーンがやったこととは?
経営者の努力とは「利は元にあり」で、流通のクッションをいくつも抜いて下に行く努力をすることです。
製造会社の場合、たとえば、日産のカルロス・ゴーンは何をやっているのか。製造原価を下げる努力をしているわけです。
工場が系列だけだったら競争がないので、系列のその会社が儲からなければいけない分だけ、また、その値段に乗せて仕入れる分だけ、製造原価が上がるわけです。
製造原価が上がれば利益がなくなってしまうし、実勢売価で売れなくなってしまいます。これだけ原価がかかりました、利益を乗せました、それから経費がかかりました、といって売ったとしても売れません。
だから、トヨタに勝ち、ゼネラル・モータースに勝ち、世界の自動車会社に勝つためには、安くて、便利で、デザインがいい、という三つが揃わなかったら、勝てないわけです。
ですから、「いかに製造原価を下げるか」ということが、とても重要なのです。これをいち早くやったのがトヨタです。
トヨタの「カンバン方式」、あるいは「ジャストインタイム生産システム」と言われるものです。
「極力在庫を持たず、必要なものを、必要なだけ、必要な時にジャストインタイムで生産部品を組み立てる」というものです。
つまり、製造する直前に必要な数の部品だけ持ってきて納入しなさい、と。そうすると在庫はゼロです。
この「カンバン方式」という名称は、使用した部品の補充を知らせる帳票を「カンバン」ということから、そう呼ばれているのです。一般には「ジャストインタイム生産システム」として知られています。
そしていまや、世界中がそれを真似てやっています。
名古屋の人ですから、やはり知恵が働くわけです。尻尾が五、六本なければ、そんな知恵は浮かんでこないですね(笑)。そこはやはり、世界に冠たるトヨ
タです。それに比べて、日産は武士団で人がよすぎる。これだけ原価がかかっているから利益を上乗せしよう、と。上乗せではないでしょうけれど、発想が上乗せ的です。
その日産でもいま、製造原価をいかに下げるかということで、ずっと努力しています。自分たちの系列の中でももっと下げていく。
もっと安く、そして、デザインもよく、技術もよく、というふうに努力しています。
それができない会社は潰れていくしかありません。実際、日産は倒産寸前の経営危機だったわけです。その日産を立て直しに来たカルロス・ゴーンは、いったい何をしているのか。
それは、製造原価を下げているのです。在庫が残らないように、社会的かつ総合的な値段をつけて、その値段で売れるデザイン、それから販売方法、機能性、こういったものを徹底的に研究しているのです。
これをやって、一気に利益が何千億も出たわけです。しかし、ずっと勝ち続けられるかどうかといえば、これからの課題は実に多いんです。
ですから、少なくとも製造原価を下げるためにリストラをし、工場を閉鎖し、系列会社ではない会社から仕入れるべく競争原理を入れて、一個ずつの部品を安くしていく。工場を閉鎖して、必要な固定費を下げていく。カルロス・ゴーンは、そういうリストラクチャリングをやったわけです。
流通のクッションを抜く努力を粘り強く継続せよ
そういうことで、製造原価、一般管理費、利益を乗せて、「はい、お値段はこれです」と言って、売れるわけがありません。たまに売れることはあるかもしれませんが、そういうモノの考え方では勝てるわけがありません。
これ、愚かなり、なんです。
実勢売価と見比べて、いったいどれくらいの値段だったら売れるのか。値段をどうつければいいのか。それを考えるのが経営者です。
高くても売れるようにするために、内装をどうしたらいいのか、サービスをどうしたらいいのか、立地条件はどうなのか、どういうふうに宣伝をしていけばいいのか、と。
逆に、廉価でいく場合でも、安くすればそれでいいというわけではありません。安くてデザインがよくて、感じがよくて使い勝手がいい、というものでなければ売れません。
もちろん、高くしたら利益は出ます。しかし、売れなければ元も子もありません。逆に、安くしたら売れるでしょう。しかし、それでは利益が出ません。では、どうしたらいいのか。
もう、値段を上げるだけ上げる。そして、上げても売れるように努力する。逆に、下げるなら下げたで、つねに売れるように努力する。
流通のクッションを抜いていく。ワンクッション、ツークッション抜いていく。それから、製造原価がいくらなのか、つねに目を配りながら、つねに原価を下げる努力を続けていく。
経営者はそのためにいつも考え続けなければいけない。どうすれば原価が下がるのか、と。原価が下がれば利益が出るわけですから。
それと資金繰りです。お金のやり繰りをどうしていくのか。これもやり続けなければいけません。
ですから、経営者は頭が五つも六つも必要なんです。これが経営者のモノの考え方で、価格の決定とか価格の競争ということを考える前に、いったい価格とは何なのかと、頭で価格(科学)的に考えなければいけないわけです(笑)。
だから、すべて「利は元にあり」というところからモノを考えていく。
そして、資金繰りもできるし、利益も出せるし、在庫も残らないようにするには、どうしたらいいのかということをつねに考え続ける。それが経営努力というものです。
その経営努力をし、思考を集中し、考え続けて、つねに創意工夫している会社だったら、利益が出てうまくいくんですけれども、頭が単細胞で、粘り強い努力もしないで、「まあ、こんなもんでいいや」というような社長だったら、しばらくしたら利益が飛んでいきます。
そして、あっという間に会社は行き詰まっていきます。
西宮戎様が根気と粘りの神様なんですけれど、今日は皆さん、戎様にお参りして何を祈っていたのでしょうか。
戎さんは、「根気が足りんよ、お前たちは。根気が足りんよ、粘りが足りんよ」と言っていました。
戎様のことを、まるで友達みたいに言いますけれどね(笑)。まあ実際、私にとって戎様は友達なんですけれど、「お前たちは根気が足りんよ、粘りが足りんよ」とおっしゃっていました。
「一生涯、どこまでも努力を続けなければいけない。そうしたら、会社は生き残っていくことができる」
これが今日の結論です。
不況期の絶対的価格価値観とは?
それともう一つ、皆さんにお話ししておかなければならないことがあります。いまお話しした「今日の結論」さえできれば、それでいいんです。もう、会四千円分以上の話をしましたから(笑)、もうこれでいいんです。
しかし、何万円も会費を払っている人もおられますから、その人たちのためにお話ししたい、と。四千円の会費の方はおまけで聞いてください(笑)。
まあ、その方たちの徳分のおかげで聞くことができるわけですけれど、その分、会費四千円の人は徳が減りますね(笑)。
私は徳を積みます。何万円も会費をお出しになっている人も徳を積みます。この素晴らしい話をもう一つだけして終わりにいたしましょう。
日本経済は、もう十年も不況が続いていますけれども、経営者が価格を決定していく一つのヒントとして、景気がよかったときの人気商品というのがあります。
好景気のときの人気商品、あるいは人気サービスでもいいですけれど、人気のある商品とか人気のあるサービスというのは、人々に受け入れられている、マーケットのニーズに合っている、ユーザーのニーズに合っているわけで、人々が欲する物です。
もちろん、好景気のときに人気があった物の値段を下げて利益を出すためには、仕入原価、製造原価を下げる努力をしなければいけません。
さらに、在庫も残らないようにしなければいけないんですけれども、好況のときの人気商品や人気サービスを、不況のときにはどうするか。
それは、値段を下げて提供するということです。そうすると売れますし、これは一般法則です。
好景気のときに人気商品や人気サービスだった物であっても、そのままだったら高いから、不況になったら売れないんです。しかし、好景気のときに人気があった物は、消費者からのニーズがあったわけですから、安くしたら売れるんです。これが一つのヒントです。
ただし、好景気のときに人気があったといっても、戦前の好景気のときによかった、なんていうのではもちろんダメです(笑)。
ちょっと前に景気がよかったときに人気のあった物を、値段を下げて提供すると売れるんです。これはもう一般法則です。これを頭の中に入れておけば、価格を決定するときの一つのヒントになります。
価格の決定の原則のさらに原則なんですけれど、好景気のときは相対的な価格判断なんです。このサービスとこの商品だったらこの値段でもいいだろう、と。
ところが、不景気になってきますと、絶対的な価格判断になります。景気のいいときは相対的な価格。相対的価格とは何かというと、「この物に対して、このお値段だったら納得できるよね」といって価格が決まるわけです。
ところが不景気になってくると、絶対的な価格なんです。絶対的価格価値観。それはどういうことかというと、分かりやすくいえば、財布からいくらお金が出ていくか、ということが問題になってくるということです。
不景気だから、いつボーナスが出なくなるかも分からないし、いつ給料が下がるかも分からない。
もちろん、お金は皆さん持っているんです。お金はあるんですけれども、不況だという心理的な危機感がありますし、リストラされると困るし、ボーナスが出なかったら困るから、そのときのためにお金をとっておかなければならない、と。
だから、財布のひもが固くなるので、財布からいくらだったらお金が出ていくのか、ということが大事になるんです。
財布から出ていく絶対的な金額を安くすると、不況のときには売れる。居酒屋がうんと繁盛しているのも、そういう理由です。
居酒屋はだいたい、一人あたり千九百八十円とかというように、二千円以内に収まるようになっているんです。これを皆さんも、ぜひ考えてほしいわけです。
スーパーマーケットにイチキュッパが多い理由
スーパーマーケットで買い物をするとき、値段が、たとえば四千円以上になってくると、「ちょっと主人に相談します」と。
つまり、スーパーマーケットで衝動買いする値段は二千円以内、イチキュッパ(1980円)までなんです。
二千円までは衝動買いで出てくる金額なんです。だからユニクロは、イチキュッパをつくるわけです。
イチキュッパにするために、何が何でも製造原価を下げるわけです。もし、製造原価が下げきれないとすると、一般管理費も下げて、利益率ももちろん下げるんですけれども、その分、量で利益を出す、と。
それが薄利多売ですけれども、ユニクロは厚利多売ですから、すごい高収益性で、あれだけ売れているわけです。
スーパーマーケットでは二千円までは衝動でパッと買います。イチキュッパ。しかし、四千円あたりを超えるとご主人と相談する。ところが、同じ主婦がデパートに行きますと、衝動買いする金額が五千円なんです。
「あっ、安いじゃない、ヨンキュッパ!」と。デパートに行くときには、ちゃんと洋服も着替えるし、札束の枚数も種類も違うんです。
それに対して、スーパーマーケットに行く場合、何万円も持っていく人はいません。数千円くらいの人が多いはずです。
ですから、二千円までだったら財布からパッと出るんです。これ、スーパー価格です。
しかし、デパートに行くときには改まって、同じ人物が五千円以下だったら衝動で買います。
「まあ、安いわ」と。同じ四千円、五千円でも、スーパーマーケットではちょっと考えたり、主人と相談したりするんですが、そのようにスーパーとデパートとでは違うんです。
こんな話があります。三千円のベルトがスーパーで売れなかった、と。そこで、同じ商品を三万円にしてデパートで売ったら、「安いじゃない」といって飛ぶように売れた、と(笑)。
そのように価格というのは、売り場によって変動するんです。
不景気のときは居酒屋が流行る
そういうことで、居酒屋の話に戻しますと、不況のときには、財布から出ていく絶対的なお金をみんな考えますから、飲みに行くときでも、居酒屋へ行くんです。
そして、いろいろと食べて精算したら、だいたい千七百八十円とか千九百八十円とか、必ず一人二千円以内で収まるようになっているんです。
皆さん、今日ためしに、そのあたりの居酒屋に行ってみてください(笑)。一人あたり二千円あたりで収まるはずです。
「ああ、もういっぱい食った」と言っても、一人千八百九十円とか二千円を超えないように設定されているはずです。
もちろん、ビールを七万本も飲んだら知りませんよ(笑)。まあ七万本もビールを飲まないと思うんですけれど、ふつうの人だったら、一人二千円以内で収まるようになっているんです。
「満腹になったなあ」といっても二千円以内。だから、衝動買いと同じように、居酒屋も衝動行きができる、と(笑)。
いくら不景気といわれても、二千円ぐらいはふだんから持っているものです。一万円とか二万円はなくても、二千円くらいは持っています。
電車に乗るにしても定期券があるでしょうし、バスもあります。タクシーに乗ったら困りますけれども、どんな場合でも二千円以内ならパッと出せます。
だから、居酒屋があんなに繁盛しているのは、不況だからだといえるわけです。
つまり、絶対的価値判断なんです。現ナマが財布からいくら出ていくかということにつねに神経を張っていて、中身がどんなによくても買わないんです。
だから、不況のときはユニクロのように二千円以内の値付けがいっぱいあるわけです。
たとえば、上下セットで四千円の服を売るとして、セットで売れば四千円になってしまうから売れないんです。
ところが、バラして上がイチキュッパ、下がイチキュッパとして売ると、一個イチキュッパだと思うから買ってくれる、と。
同じように、全部足すと六千円とか七千円になるんだけれども、バラだとイチキュッパの商品があります。それも一個あたり二千円以内なんです。
そういうふうに、値段を付ける人はいくらにするかを、ずーっと考え続けています。
不用意に、製造原価プラス経費プラス利益何パーセントだからと、値段をピョンとつけません。実に神経細やかに値付けをしています。
景気のいいときは相対的価値判断。内容と値段に納得してお金を出します。しかし、不況になったら絶対的価値です。だから、絶対的価格を下げなければいけないんです。
そうしたら売れます。それをヒントとして、景気のよかったときの人気商品を何とか努力して、安く出すことができたら売れます。かえってたくさん売れて利益が出るでしょう。
不況には不況のやり方があるわけです。これでもう十分すぎるほど話しましたね(笑)。
「メーカー希望価格」とは何か
最近よく「メーカー希望価格」というのを見かけます。現金正価とか正価というのはあまりありません。正しい値段とかは昔はありました。
それから売価。これは分かると思うのですが、最近の品物を見たら、「メーカー希望価格」というのがあります。
「希望価格って何じゃ、これは?」と。メーカーが何を希望しているというのか。
結局、「メーカー希望価格」というのは、売値の決定が店の経営者に委ねられているということです。製造原価がいくらであろうと関係ないんです。
極端な話、粗利九割でもいいわけです。粗利益は何パーセントでなければいけないというようなことは、どこにも書いていません。
だから、経営者がいくら値段をつけてもいい、と。製造原価に関係なく、利益に関係なく、一般管理費に関係なく、安くしても高くしてもいいんです。
もちろん、利益が出なければいけないんですけれど、いくらに値段をつけようと自由だということです。
そもそも、「五千円で売ってください」と、松下電器や東芝が言ってきたとしたら、小売店は五千円でしか売ってはいけないのか、と。
それぞれライバル店があるわけですし、隣のお店では松下電器の同じ商品をサンキュッパで売っていたら、ウチは「五千円でしか売ってはいけない」とメーカーが言うからという理由で、五千円の値をつけて、誰が買うかというんです。
さらに言うなら、メーカーが、「この値段でなければ売ってはいけない」と売値を指定するというのは、カルテルと一緒です。それで、公正取引委員会で再販価格を指定してはいけないというふうになってきたわけです。
もし、メーカーの言うとおりに価格を決めなければいけないということになると、スーパーマーケットというのは生存できなくなります。
一割引きとか二割引きというのができなくなります。デパートでもバーゲンできなくなります。
ところで、バーゲンをするとどうなるかというと、ブランドの価値が落ちるんです。
だから、ブランドメーカーは再販価格を指定するわけです。「これは五千円で売ってください」と。
そのほうが、きっちり自分も利益が取れるし、小売店とか問屋さんもきっちりと利益が取れるので安泰です。
しかし、実勢売価から見たら、つねに価格は流動しているわけです。スーパーマーケットで売っているのを見ても絶えず流動しています。
だから、小売店がいくらで売るかということまでメーカーは締めつけしてはいけない。しかし、メーカーが、「これぐらいで売ってください」という希望を出すのはいいですよ、と。
これを「メーカー希望価格」というわけです。
だから経営者は、いくらで売ろうと勝手じゃないか、と。「ひと山いくら」というように、安くして売ってもいいんだ、と。
電気掃除機がひと山二十万円とか(笑)、「冷蔵庫、ひと山二十万!」「会社の寮にいるから、冷蔵庫をひと山売っていただけますか」「ああ、いいですよ」と、古い冷蔵庫や新しい冷蔵庫、でっかいのとか、ちっちゃいのとか、いろいろ七つぐらいいっぺんにまとめて売る、と。
ひと山七個入りだけど、これはちっちゃい冷蔵庫が多いから八個でどうだ、と(笑)。別にそれでもいいわけです。
そのように、小売店を守るために、メーカーが締めつけしてはいけない、ということで正価がないんです。最近、正価という言葉を使わないでしょう。
値付けというのは経営者が勝手にやっていい、というより、そうしなければいけないものなんです。
しかし、それしかない物だったら要するに、寡占状態ですからカルテルと同じなんです。
たとえば、電話料金が最近ずいぶんと安くなってきましたが、それはなぜなのか。
いままではNTTの独占状態で、「電話料金はいくらでございます」と決めていました。
つまり、一社独占だったわけです。ところが、それでは公正な自由競争の原則に悖るからということで、京セラの稲盛和夫さんをはじめとして、多くの方で第二電電(現・KDDI)をつくりました。
その結果、現在の値下げ競争に結びつくわけです。どこそこが一通話いくらにした云々と、激しく競争しています。
そういうふうに、電話料金にしてみても一社独占ではなくて、自由競争でなければいけない、値段はいくらでなければいけないと締めつけるのはよくない、と。
だから、それぞれが値段の付け合いをして、消費者が選べるようになっているわけです。電話料金もそういうふうになってきました。
それで、NHKの受信料はおかしいじゃないかと言う人がいます。たしかに、受信料を取っているのはNHKだけです。
第二NHK、あるいは第三NHKというのがあって、受信料の値下げ競争が行なわれてもいいはずです。まあそれは別として、そういうふうになってきたので「メーカー希望価格」というのが出てきたわけです。
直営ショップを展開するのはブランド価値を守るため
このメーカー希望価格の話を聞いて、「ああ、そうかいな」と思ったかもしれませんが、そうではなくて、皆さんには、もっと流通のことを理解してほしいわけです。
たとえば、カルティエとかアニエス・ベーとかは、メーカーが指定したところでなければ売らせてくれない、と。
DCブランド、つまり、デザイナーズ&キャラクター・ブランドです。そういう商品は若干の値引きをしますけれど、スーパーマーケットなんかで何割も安く売られるとブランド価値が下がりますし、どこに行っても売っていると、これまた、ブランド価値が下がります。
そこでメーカーは考えるわけです。さっきも言ったように、再販価格の指定はできない。希望価格を提示しても何割引きとか、ひと山いくらで売られたら、ブランド価値が下がります。
「ルイ・ヴィトンひと山いくら」などとやられたら、ルイ・ヴィトンの値打ちが下がってしまうわけです。
では、どうするか。自分で直営ショップを出すわけです。ですから、ルイ・ヴィトンはみんな直営ショップです。
卸したり、小売店に流通させたりすると正価で売れなくなってしまいます。
もちろん、公正取引委員会がチェックするからですが、では、ブランド価値を下げないためにはどうしたらいいのか、と。
皆さんがメーカーだったらどうしますか。それは、直営ショップをつくって、どこにも卸さずに、そこで売るわけです。
実際、ルイ・ヴィトンはどこへ行っても値引かないし、値引きを要求しても、「うちはこのお値段です」と相手にされません。
それは直営ショップだからこそできるわけです。第三者にはいっさい卸さず、直営ショップでしか売らない。
だから、ルイ・ヴィトンの値段はどこへ行っても同じで、「ルイ・ヴィトンは高くて、安く買えない」と言う人がたくさんいるのです。
しかし、それをまた上手に買う人も、実はいるんです。
イギリスに行くと、七十五パーセント引きで買える店があるんです。ルイ・ヴィトンを輸入している店ですが、一回、菱研でルイ・ヴィトン・ツアーを組んで行きましょうか(拍手)。
輸入しているところで、七十五パーセント引き。二十五パーセントで買えるんです。もちろん全部が買えるわけではなくて、最新の商品は買えません。
しかし、おなじみの物は買えます。それをやっている輸入元です。メーカーの知恵をさらに出し抜いていく知恵もあるわけです。「負けるもんか!ルイ・ヴィトンに」と(笑)。
最近では、ピエール・カルダンなんかは、ありふれているでしょう。ピエール・カルダンと契約しているところは自分で勝手につくるんです。
一応、「これでどうですか」とお伺いを立てますが、 OKだったら、ピエール・カルダンの名前がつけられるんです。
だからいまは、イヴ・サンローランにしましてもグッチにしましても、どこにしましても、契約してライセンスして使わせる、ということをしなくなってきました。
銀座に「MOONBAT (ムーンバット)」という会社があります。そこは傘で有名で、ブランド傘の四割をそこで売っていたのが、「もうライセンス、いっさいしません」と。
「全部、直営でやります」と。ライセンス契約をしますと、希望価格しか言えず、スーパーとかいろいろな店で価格が破壊されるわけです。
そうするとブランド価値が下がってしまうわけです。
最近、ライセンス契約をやめて、直営店を出すところがどんどん増えているという情報をご存じでしょう。
考えなければならないのは、なぜなのかなんです。その理由は、いま言ったように、再販価格を指定できなくなったからです。
そこから守るためにはどうしたらいいのか。ライセンス契約をしても、結局、ブランド価値が落ちるわけですから、直営ショップで正価で売る、と。
そうすると、どこへ行ってもこれは値引かないのでブランド寿命が長くなり、ブランド価値が下がらなくなります。そのために直営化しているわけです。
それから「キティちゃん」。「ハローキティ」です。私も一度使ったことがあります。値付けは、キティキティにつけているんですけれども(笑)、キティちゃん、売上の七パーセントか、何千万円か、ライセンス契約するわけなんです。一業種一つですけれど、
それでだいたい五百種類ぐらいあります。いま、「ハローキティ人形焼」とか、「お好み焼きキティ」とかがありますが、さすがに「キティちゃんのおまる」はまだないですね(笑)、キティちゃんの自動車はダイハツでやっています。そのキティちゃんを扱うサンリオショップがダイエーにあったんです。年間、何億も売上げていました。
流通業界の売上のナンバーワンは、ずっとダイエーでしたが(平成十三年当時)、最近、セブンイレブンに抜かれました。一兆何千億円だったでしょうか。
流通業界の売上ナンバーワンはダイエーだったのが、今はセブンイレブンです。今年からセブンイレブンがトップに立ちました。
それで、ダイエーのことですから、よい物をどんどん安くしていこうと考えたのですが、ダイエーの中のキティちゃんのショップがあったんです。
サンリオとしては、「ばつ丸くん」とか「けろけろけろっぴ」、あるいは、「マイメロディー」とかいろいろありますが、その中でもキティちゃんがダントツです。
そのキティちゃんのブランドイメージ、ブランド価値を落とさないために「値引かないでください」とダイエーに申し入れたわけです。
それに対して、「いや、いい物をどんどん安く売るのがダイエーなんだ。どんな物でも値引いて売るんだ」と。
そこでサンリオの社長が決断して、ダイエーの全店からサンリオのコーナーを撤退しました。もちろん、何億円も損をするんです。
しかし、年間何億円損をしても、ダイエーから撤退したわけです。ダイエーに何割引きでどんどん売られてしまうと、キティちゃんのブランド価値、版権価値が下がるからです。
何億円という売上を失うのは惜しいけれども決断して、そのことを考えてダイエーから全部、引き上げたんです。
露骨にどんどん値引かれると困るわけです。ですから、直営ショップだけで売るようにしました。そこでは正価で売って、ブランド価値を下げないようにしているんです。
こういうやり方もあります。私たちの会社はカシオの「G-SHOCK」をたくさん売りました。日本でも、 G-SHOCK をたくさん売った何本かの指に入る業者です。
最近、 G-SHOCKが、以前よりも売れなくなりましたけれども、 G-SHOCKが大変なブームだったときには、なかなか品物が入りませんでした。
そこで、どうしても欲しいということで、並行輸入で海外の物を輸入してきて売ろう、と。
それで、品物が欲しいからということで、私たちと同じような他の商社は、メーカーと契約書を書き、保証金を積んで代理店契約を結んだんです。
それで初めて、「これだけG-SHOCKを出しましょう」と。ところが、契約を結んでも品物が全然来ないんです。
保証金を積んで、契約書を書いて、「そうしたら、品物を卸しますから」となったはずなのに、全然卸さないんです。
私は、「おかしい、それは」と。「何で保証金を積まなきゃいけないんだ、契約なんかしなくても、いままでどおりでいいんだ」ということで、私たち一社だけがメーカーの言うことを聞かなかった。
ところが、それでよかったんです。なぜかというと、そうやって保証金を積んで契約をすると、要するに系列会社になって直営ショップと同じ立場に立つので、メーカー側にしてみれば、並行輸入をしているところを、「並行輸入をしてはいけません」ということで指導ができるんです。
あの当時、あっちからもこっちからもG―SHOCKKが欲しいと言われました。そこで私たちは、並行輸入業者から仕入れてよく売りました。それが可能だったのも契約を結ばなかったからです。
しかし、契約を結んだ他の業者が同じことをやると、「困りますから」と内容証明が送られてきたり、法律的に禁止されたりするわけです。
実はそれを狙ってやったわけですけれど、私は、「おかしいじゃないか、それは」と言って、契約を結びませんでした。
人の言うことは一応、素直に聞くけれども、聞いたあと却下します。「おかしいじゃないか、今までどおりでいいじゃないか、たくさん売っているんだから」と。
相手の腹はそこだったんです。
直営ショップ系列にすると、並行輸入するのをメーカーがディフェンドできる。
そうでなかったら、希望価格を提示しても、いくらで売ろうと、あるいはどこからか仕入れて売ろうと勝手です。自由に流通しているわけですから。
海外から輸入する分、利益は薄くなるけれど、品物は入るわけです。品薄の場合はそういうふうにするんですけれども、メーカーは、保証金を積んで系列にしていこうという腹だったんです。
私だけは見破った。というか、知らなかったんですけれど(笑)、「どうもおかしい」と。
「おかしいね、こんなに言ってくるということは、何かあるよ。何かあるということは、やめておこう」と。
あとで分かったんですが、やはりそうだったんです。そうやって、みんなを締めつけていたみたいです。
それでも結局、品物はなかったんです。
あまりにも傲慢です。だから、 G―SHOCKが売れなくなったら、もうこりごりだ、と。本田技研と同じです。
技術のホンダか何か知りませんけれど、私のところに来たホンダの営業マンが本当に生意気なヤツで、あんな生意気で傲慢な営業マンはほかには見たことがありません。
それくらい、生意気で傲慢だったんです。
だから、そのホンダの営業マンに、「キミね、いまはいいかもしれないけど、売れなくなったときには、必ずキミの会社、行き詰まるからね」と言ってやりました(笑)。
一番健気で可愛かったのはマツダの営業マンです(笑)。
「ロータリーエンジですから初速が速いんです。青信号になったとき、真っ先に行けますから」「でも、軸は磨耗するだろう」「えっ、軸は少しは磨耗しますけれども、いま、その問題も解決しまして」「エンジンの比較をしてみたまえ。
トヨタのレーザエンジンとマツダのロータリーエンジンの違いと消費者側へのメリットを、三分間のスピーチでまとめて言ってみろ。
それに、燃費はどうなんだ、燃費は?」「ええー……」。本当に可愛かったですね(笑)、マツダの営業マン。無骨なのは日産で、一番よかったのは、やはりトヨタです。
一番許せないのはホンダです(笑)。「蹴り上げるぞ、○○を」と、思わず言いましたけどね(笑)。それがホンダです。
「技術のホンダと言うけれど、生意気のホンダじゃないのか」と。
私の本名は半田というんですけれど、本田と半田、「あ」と「お」が違うだけで、なぜこんなに違うんだ、と(笑)。
「不況になったときに誰も買わなくなるよ」と。結局、ホンダは危なくなってきて、何百人という製造の人たちを営業のほうに回しました。
そうなってきたら謙虚になるんです。だから、本当にビジネスのことを考えたら、感じよく、値段もよく、サービスもよく、そしてフォローもよく、製品もよく、もう何拍子も揃っていて、なおかつ謙虚にやらなかったらダメなんです。調子のいいときばかりではないわけですから。
それは置いておいて、そういうことで、直営ショップの系列にすることによって値段が守られる、メーカー側は。
それで、今度はわれわれが、「保証金を積んだら品物を卸してあげますよ」というカシオのやり方を応用してもいいわけです。
並行輸入であっちからもこっちからも品物が入ってきたら、値段が崩れます。 G―SHOCKのときは、われわれは節を貫いたのでかえって、「あの会社は立派だ」と評価されました。
そういうことで、カシオさんとも仲良くやっていますけれども、こういうやり方がある、ということです。
ですから、「価格競争に打ち勝つ」という今日のテーマなんですけれど、原則を考えて、いま申し上げたことをヒントにして、ぜひ価格競争に勝って、会社の利益を上げていただきたい。
ということで、今日の講義はこれで終わります。(拍手)
